街を歩く

日本語能力を考えさせられた

このポスターを読むと、日本語能力について考えさせられた。ツッコミどころ満載で、病院の中であきれるやら、情けなくなるやら、笑い出したくなるやら、なかなか貴重な経験だった。

まずは、今まで通り保険証を持参してください。とは、どういう意図なのだろう。マイナンバーカード持参では医療が受けられないということなのか。何だか医療拒否を匂わせているようにもにも見える。
吹き出しに書かれている文章も「保険証がなくても(登録済みの)マイナンバーカードがあれば医療は受けられます」が正しい表現であるような気がする。実際、保険証を持っていくのを忘れた時に、マイナンバーカードで医療を受けた経験がある。その時は、便利だなと思ったものだ。

保険証がなければ資格認定ができないことがあります。これはおそらくそうなのだろう。これまでも使われていた保険証の確認機器は設置されているはずだから、マイナンバーカードで「健康保険未登録」扱いになった場合は救済される。これは政府、行政の手落ちを非難しているのだが、その論理に間違いはない。

二番目に、保険証を見せていただく方が、手早く、簡単に済みます。と書いてあるが、これは正しいことだろうか。つまり、健康保険証には顔写真もなく、身分証明書としては、パスポートや運転免許証より明らかにレベルが低い。本人の顔写真なしでの認証は、昔々の紙でつくられた保険証時代からの名残だとおもわれる。しかし現代では明らかに証明書としては、不整備で不適切なもので、なりすましが簡単にできる欠陥品と言っても良い代物だ。
ただ、なりすましで被害を受けるのは「保険を支払う」機関であり、医療機関ではない。(なりすましがバレると払ってもらえないのかもしれないが)
なりすました本人は健康保険なしで正規患者として保険医療を受けられる。事実上の詐欺行為であるが、その詐欺行為で得をする。なりすまされた方も、実際に支払いをすることはないから損害はない。医者も、なりすまし詐欺者も、まりすまされた被害者も、誰も被害を受けない。
だから、保険証が簡単よと言い切る。勘繰れば、「なりすまし詐欺」の助長とも受け取れる。ただ、社会全体では医療保健の膨大な赤字が問題になっているので、なりすまし詐欺問題は、もっと慎重に取り扱うべきだろう。
ちなみに医療機関で、健康保険証以外を用いた二重の身分確認は、要求されたことがない。初診であろうが再診であろうが、なりすましは簡単にできるなといつも思っていた。なりすましには保健機構が医療機関に対して支払わないとして、医療機関での本人確認作業を厳格化するように牽制すれば、またこの話は変わってしまうだろうが。

三番目の紛失による被害は、それこそ余計なお世話だろう。紛失して被害を被るのは銀行など金融機関のキャッシュカードやクレジットカードの方がよほどひどいハメになる。
マイナンバーカード紛失でおこる被害は、ネット上で本人確認の必要な手続きをなりすまされるようなケースだろうか。たかが医療機関の協業組織に心配してもらうことではない。警察が本腰を入れて警戒している「振込詐欺」の方が、よほど注意すべき国民全体の関心がたかい犯罪だろう。まだマイナンバーカードを使った重大詐欺事件が記憶にないだけだろうか。

そして一番笑ってしまったのが、四番目の一文だ。これは日本語として意味をなしていないのでは? とすら思う。マイナンバーカードの取得は任意です。これは事実を言っているだけなので問題はない。それに続く文章が、何の接続詞もなく、私たちは保険証の廃止に反対していますとある。
反対であることの意思表明に文句があるわけではない。ただ、マイナンバーカードの任意取得とどう文意がつながっているのだろう。
現代国語の試験問題であれば、おそらく不適格文章とされるだろうと思うほどだ。そこで、この文章の意言い換えを考えてみた。
「ゾウは哺乳類です。私はカメが嫌いです。」こんな感じだろうか。この例文であれば、二文の間に、「カメは爬虫類です。私は爬虫類が嫌いです。」というようなツナギ文が必要だ。
このポスターで言えば、「マイナンバーカードの取得が国民全員に義務付されなければ」がツナギ文として最低限は必要だろう。
あるいは、国民皆保険を保障するという意味を論点に加えたいのでアレば、「マイナンバーカード取得が国民全員に義務付されても、現在のマイナンバーカードシステムでは医療事務に不正や不備が発生するため、マイナンバーカードシステムの改善作業や不正防止措置が完全に出来上がるまで」と付け加えるべきだろう。


要するに、医者の団体として、マイナンバーカードを使えと言われて高い機械を買ってみたが、あれこれ間違いが起こると事務作業も増えて面倒臭いし、おまけに自分たちが医療費を取りっぱぐれる可能性もありそうなので(こちらが本音か)、昔のやり方に戻せということみたいだ。
医療を受ける立場である患者に対して、何らかの配慮があるようには読み取れない。少なくとも、現在の現役医師は昭和後期以降に医師免許をとった受験戦争の勝ち組であり、間違いなく「秀才」ばかりのはずだ。このようなロジック破綻した、はたまた文意が不備な文章のおかしさを理解できないはずがない。となると、このポスターを作った協会事務局の日本語能力不足なのだろうか。事務局のせいにするのは、権威主義的団体、政党や行政関連団体では常道手段だ。
こんな怪しい日本語のポスターを見ると、お医者さんたちは大丈なのか?と疑ってしまうので、ポスターを作り直してくれないものかと、コロナのワクチンを打った後の待ち時間でぼんやりと考えていた。
医師である友人の顔を思い出しながら、これもアフターコロナの落とし物かなあなどと思っていた。

コメントを残す