
6月下旬の北国は季節外れの暑さらしい。記憶の中で冷やしラーメンの販売開始時期は7月だったように思えるのだが、どうやら馴染みのラーメン伝では、6月の早い時期から売るようになったらしい。
ちなみに、北国では冷やし中華とは言わない。冷やしラーメンだ。スーパーの麺売り場に行っても、商品名は冷やしラーメンと書かれている。まあ、冷やし中華と冷やしラーメンに味の差があるわけではなく、ローカルフード的な変化もない。お高いバージョンであれば細切りチャーシューが、普及品ではハムの細切りに変わる程度の変化しかない。味もベースは酸味のある醤油味だ。ゴマだれの冷やしラーメンは存在するのかもしれないが、実食した記憶がない。
冷やしラーメンの居酒屋進化系である「ラーメンサラダ」では、胡麻味が主流らしいから、ゴマだれはラーメンサラダから伝播した、冷やしラーメン界での平行進化みたいなものだろう。

いそいそと冷やしラーメンを食べに来たはずなのだが、その日に限って気温が若干低めになり、カウンターに座った瞬間目に入った「旭川ラーメン」に、よろよろと吸引されてしまった。
結局、注文したのは定番の塩ラーメンでもなく、意気込んで食べに来たはずの冷やしラーメンでもなく、醤油ラーメンになってしまった。旭川ラーメンの特徴である、ちょっともちっとした硬めの麺の記憶が、脳内でイメージ爆発してしまったせいだ。
ラーメンを食べに行ったはずがチャーハンを注文してしまったりすることはたまにある。ただ、今回は気温と連動した冷やしラーメン食べたいぞ衝動で、注文を決めて暖簾をくぐったはずなのに、それが瞬殺されてしまった。その理由は、自席の後ろでラーメンを注文する小学生四人の気迫に負けたからだなあと思う。
彼らの注文の仕方は、大人顔負けというか、一緒にきた引率のおじさん(推定30代)の顔色を失わせるほどのキッパリとした明快で、立派なものだった。
「塩ラーメン四つ、チャーシュー追加は一つ、めんま追加が一つ、あとは追加無し、それとコーラ2本」と一気呵成に注文を片付けてしまう。気合が入っている。聞いていて気持ちがよい。ところが、引率の大人は注文が決められずもじもじしている。
完全に、小学生の気合に大人が負けている。それに煽られて、こちらも「醤油ラーメン一つ、追加はないです」などと言い切ってしまった。まあ、旭川醤油ラーメンも美味しいからよいのだけれど。
仕方がないので、冷やしラーメンは気温が上がった日に食べ直しにいくことにした。個人的には、トロ肉というボリュームタップリのっトッピングはいらないので、肉無しプレーンな冷やしラーメンみたいなのがよいのだけれどなあ。ただ、その特別注文品を頼む勇気はない。かの小学生四人組には、軟弱な大人と笑われそうだ。
ラーメンは気合だ……