
鰻屋で鰻を食べない一軒目の後、高田馬場で2軒目の店ということになり、大衆居酒屋の原点のような店を選んだ。埼玉県にある日本酒の蔵元直営店なのだが、都内に何店か支店がある。ただ、支店の存在する街によって微妙に客層が違うような気がする。それがちょっと楽しいのだが。高田馬場の店は客の平均年齢50代という感じで昭和の尻尾がぶら下がっている客が集まるかのような店だ。
特に目を惹く変わったメニューがあるわけではない。旬の魚も日替わりで出るが、基本的には火を通す料理が中心で、気取ったところのない平均的な味というのが売り物だ。なんでもあるが、特別なものは何もない。それが良い意味で実現されている。

飲み物は東京での大衆居酒屋の絶対定番であるホッピーにした。最近人気があるレモンサワーはやはりちょっと甘いのが気になる。ホッピーはライトビール的な甘さなしテイストがよろしいと思う。二軒目なので日本酒は避けることにした。年相応のセーフチョイスというやつだ。

同行していた友人達が、二軒目だというのに何やらすごいものを注文し始めた。揚げ物盛り合わせがドーンと出てきた時には目が点になった。こんな食べ物を注文する人たちだったかとこれまでの記憶を辿ってみるが……………
その後に出てきたのが、ソース焼きそば。そしてカツとじ煮だから、もはや錯乱したかと思ってしまう恐怖のハイカロリーメニュー連投だった。一体何が起きたのだろう。うなぎの祟りだろうか。
そして、これまで締めなど頼んだことがない人たちだったはずなのに、何故か明太子のおにぎりが一人一つずつ……………
最近、居酒屋に行ってこれほど満腹したのはめずらしい、というかこれは何年振りの飽食経験だっただろう。満腹を通り過ぎると天国にいる気分になってくる。

それでも翌朝は実にすっきり目覚めた。かなり大量に酒を飲んだので、多少の不調は覚悟していたが、普通の日と変わらぬ元気さで自分でも驚いてしまった。ひょっとして、酒を飲む時には大量に食物を摂取した方が良いのではと、あらぬ想像をしてしまった。締めのおにぎりがよかったのか? などと考えてもみたが、それを確認するために、満腹になる程食いまくる飲み会はやらない方が良いと思うのだが。
ローカーボとかいうダイエット法がずいぶん流行っていたのを思い出した。雑食性類人猿の子孫であるヒト族は、ローカーボは種としての体質に反しているのではないかと思う。ローカーボに挑戦するくらいなら、そもそも酒など飲んではいけないだろう。ローカーボ不要論が飲み会で実証されるわけでもないしな。締めのおにぎりであれこれ考えてしまった不思議な飲み会だった。