食べ物レポート, 小売外食業の理論

回転寿司 値上げ対策考察

回転寿司の対策あれこれを考えてみた。まず最初は、寿司の皿が回っていないので、回転レーンの回っていくベルトしか目に入らない。これは食欲をそそるものではない。目の前をマグロやエビやウニが回っているから、あれこれ食欲が湧いてくる。追加でもう一皿食べようかなどと思う。黒いプラスチックの板を見ていると、実は相当に食べる気が失せる。
そこで、一生懸命考えました的な「ボード」が回っていた。題して「背徳の三重奏」なのだそうだが……… 広告をあれこれ表現する時に、駅前マンションの広告のようなポエムと形容することがある。中身の感じられない、具体性のない、形容詞がずらずらと並んでいるのが特徴だ。最近では新聞を購入する人も減っているので、もはや廃れた芸だと思っていたが、媒体が折込チラシからネット広告に変わっただけで、「ポエムなコピー(広告表現)」は健在だった。
そして、そのポエムがついに寿司業界まで進出してきたかと、感心した。というより、苦笑してしまった。なるほど、それほど困っているのだね、という感覚がする。食べ物の表現で具体性のない形容詞、あるいは食べ物に使われない形容詞を使って、一世を風靡した「食べ物レポーター」は確かに存在する。ただ、その表現は、言ってみれば「芸風」なのであり、広告には向いていない。
うまさを感じさせ食欲をそそらなければ、広告コピーとしては失格だし、ポエムというしかない。もし自分が広告の発注者だったら、このコピーには相当難しい判断をすることになるだろう。それが苦笑の理由だ。
ちなみに三重奏とはサーモン、チーズ、炙り(これは素材ではなく技法だが)のことらしい。この複雑な内容を。回転レーンに乗ってまわっていく広告で読み取るのは、かなり高度なテクニックが必要だ。少なくとも動体視力が優れていなければ無理だな。

その次に気がついたのが、一皿二貫ではあるがネタは2種類、つまり一貫付けになっているメニューが激増したことだ。この皿は赤貝とつぶ貝の二種盛りで、これ以外に相当な種類の二種盛りがメニュー上にはある。さて、こうした理由はなんだろうかと考えてみると、ネタの数を減らしてしまいメニューが寂しくなった。その対策として二種盛り皿を作ると、数学的にネタの順列組み合わせになるので、メニュー数は爆発的に増える。ただし、客の立場からするとお気に入りの組み合わせを見つける作業はとてつもなく面倒だ。タッチパネルの注文法を変えて、好きなネタを好きな数だけ、ただし注文は2個単位になるというようなロジックを組み入れるべきだろう。
単純に言えば、たくさんメニューがあるように見せかけたい「なんちゃってメニュー改変」だと思う。システム改造にかける予算がないのか、やる気がないのか、どちらとも言えないが………

三つ目に気がついたこと。イカの耳をメニューとして提供するのは、なかなか珍しい。ゲソはたまに見かける。ただ、食材ロスを減らすという意味で、これはグッドジョブだろう。魚は歩留まりが悪い原料なので(通常仕入れ重量の半分くらいが生ゴミ化する)、これまで捨てていた部分を加工して食べ物化するのは大賛成だ。

四つ目として気になったのが海鮮ユッケというか魚の切り身をミックスしてネタにしたものだ。これも食材ロスを減らす意味がある。また、いろいろな魚がミックスされることで生まれるうまさというか「新しい味覚」というメリットが生まれる(かもしれない)。
すでに軍艦巻きの世界は、ウニやイクラという大物ネタではなく、カニカマを使ったマヨサラダ、ツナサラダ、炙りベーコンやチャーシュー、牛カルビなどなんでもありな「食の無法地帯」だし、そのチャレンジが楽しいという面もある。寿司ネタは魚でなければいけないという固定観念を捨て去り、「スシ」とは一口サイズのコメの上に、なんらかの具材を載せたものという設定で考え直せば、新しい世界は生まれる。(ちょっと大袈裟だが)
ラーメンの世界でも醤油が主体の時代に、客の冗談から生まれた味噌ラーメンが今では大定番に変わっている。ハンバーガーの世界でも、照り焼き味はレギュラーバーガーより人気がある。回転寿司の次の突破口は、寿司の常識を超えた新しい味の発見にあるのではないかと思っているのだが。
ただ、そのためには真面目にうまい寿司の再定義をしなければならないはずで、それができるかどうかだなあ。

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