食べ物レポート

学生食堂のような昼飯

豚天のデミグラソースがけというのは、他店で見たことも食べたこともない

自宅近くの洋食屋に行くと、ほぼ9割の確率でオムライスを食べる。残り1割がカツカレーだ。ただ、ごくごくたまに、本当にたまに浮気をして、ランチ定食を頼むことがある。ランチメニューは固定されているようで、ほぼ変わりはない。日替わりというメニューもほぼ同一メニューがローテーションしている。
その定番定食の一番目が、ハンバーグと豚天のセットだ。お値段もリーズナブルというより、とても安いというべきだろう。少なくとも近隣のラーメン屋で注文するラーメンより安い。
この定食を注文すると、キッチンから引き肉を手で叩くパンパンという音が聞こえてくる。注文が入ってから肉の準備をして焼き始めることがわかる。だから、ランチ定食なのに出てくるまでに意外と時間がかかる。(そこがまた良いのだが)
白い楕円形の皿にハンバーグと豚天が乗っているのを見ると、学生食堂で食べていたランチセットを思いだす。学生食堂のランチはランクが3段階あり、一番下のサービスランチは低価格だが、おかずが貧相だった。大盛りキャベツにコロッケ一つ、マカロニサラダみたいな感じだ。コロッケの代わりがちくわ天とか魚肉ソーセージの天ぷらだった。
真ん中のクラスは、豚肉の野菜炒めみたいなものが中心で、時々ハンバーグになることもあった。付け合わせはやはりマカロニサラダだった。一番お高いセットは、豚肉生姜焼きとかポークソテーのような肉主体のおかずに、いわゆるガロニ、色付き野菜が付け合わせでカップスープがついていた。ハンバーグと白身フライみたいな2品付きという豪華版の日もあった。
この馴染みの洋食屋のランチ定食は、まさに学生食堂ランチ最上級セットに似ている。思い返せば、最上級のランチを食べられたのは月に一度くらいだった。学生食堂なので、値段は安い。一般の飲食店と比べても半額程度だったから、毎回最上級ランチを食べていてもおかしくなかったはずなのだが。なぜか安いランチばかり食べていた。
ちなみに、当時の時給を思い出すと、1時間働けばラーメンが食べられた。ファミレスやファストフードでの食事代は、時給換算で2時間分くらいの金額だったはずだ。学生食堂は並ランチで半時間分程度だから、どう考えても上級ランチを食べられなかったはずはない。昼食をけちって、酒でも飲みに行っていたのかとも思うが、そのあたりの記憶は定かではない。
それと比べると、このランチ定食はあまりに安い気がする。品質的には最上級ランチ以上で、現在の物価を勘案した価格比で考えても、今の値付けは学生食堂で最低ランクのランチ程度だろう。あのころから随分と時間が経っているが、いまだに飲食業は厳しい世界にいるのだなと、改めて考えさせられた。

ランチセットについてくる、ちょっと小ぶりなハンバーグが今の体にはちょうど良い量だ。塩味控えめな味付けも実に好ましい。こんな料理が学生食堂で出ていたはずもないので、コスパという点では圧倒的に現在の方が優れている。そのおかげで、学生時代よりはるかにうまい料理を、財布の中身は気にせず(どちらかといえば、とてもリーズナブルに)楽しめるのは、人生長く生きてきたご褒美みたいなものかな。などと、ちょっとほろ苦い気分にな理ながら美味しくいただきました。

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