食べ物レポート

高級パン屋でクイニーアマン

渋谷の北西側に東急百貨店本店がある。その真向かいに、高級パン屋がある。都内には有名なパン屋、ベーカリー、ブーランジェリーなどパンの製造販売の店は多い。その中でも、おそらくいちばんの高級店(自己評価です)は、この店だと思っている。たまに、ハード系のパンを買いに来るのだが、その味と価格にはいつも唸らされる。高いから上手いのではなく、上手いから高いのだと納得させる「パン」だ。
ただ、たまに浮気をしてデザート系パンというかケーキっぽいものを買うこともある。今回は、流行り物のカヌレを買おうとしてきたのだが、結局はカヌレではなくクイニーアマンを買ってしまった。

食べ終わった時の満足感がすごい

自分のイメージにあるクイニーアマンは小ぶりな砂糖菓子というものだが、こちらは随分と大型で直径は10cm程度あり、手に持てばずっしりとした重量感がある。表面が砂糖でコーティングされているのでカリカリとした食感があるが、中身の生地はやはり重量級の密度の高いものだ。
甘い物好きであれば、これを朝食がわりに食べるかもしれないなと思う。朝食といえば………しばらく住んでいたアメリカでの朝食は、ドーナツだったりワッフル(メープルシロップを溺れるほどかけるのでほぼ甘味しかしないもの)など、朝から1日分の糖分補給が完了するものが多いことを思い出した。朝食=超甘いというイメージしかない。だから、それと比べるとこのクイニーアマンなど甘さレベルで言えば初級でしかないのだが。
個人的には日本の朝食は塩分食、アメリカの朝食は砂糖食、そして西ヨーロッパの朝食は簡素食だと思っている。簡素食とはクロワッサンとミルクコーヒーで朝食というパターンになる。目玉焼きにベーコンとトーストでは、簡素食にならない。この大ぶりのクイニーアマンを朝食にするとすれば、アメリカと西ヨーロッパの中間食くらいになるのかと思った。
表面の砂糖がキャラメル状になりパリパリしている食べ物が好みなので、このクイニーアマンはとても満足したが、やはり朝食にはちょっと甘すぎる。結局は、3時のおやつ的に食べてしまった。ただ、おやつとしてはやはりちょっと高額かと思うしボリュームも多い。だが、ケーキよりはお安い。自分へのご褒美的なおやつとして考えれば良さそうだ。ただし、これを一つ食べると夕食は軽めになる。というか、夕食を食べる気にならない。おやつで腹が膨れるというのも考えものだ。

テクニックを感じるハード系のパン

朝食には、ライ麦を使ったハード系のパン、それも中にクルミや干し葡萄の入ったものを買ってきた。このハード系パンとコーヒーの様な朝食を食べたのは、デンマークだったかドイツだったか記憶は曖昧だが、ライ麦のパンはやはりヨーロッパ北部に行くと出会うことが多い。もともと、小麦は地中海沿岸の様な気温の高い地域で栽培されている。北部になり気温が下がっていくと、小麦の代わりにライ麦が栽培されている。日本でいえば、米とヒエやアワなどの雑穀の関係に近い。
昨今の健康志向による雑穀礼賛は、やはり美味しいものを腹一杯食べられる時代の贅沢なのではと思っている。米が食えないからヒエアワを食うという生活では、やはり上手い米を食べたくなるものだろう。パンの世界も同じで、やはり小麦100%のパンはうまいし高いというのが西欧社会では常識の様だ。わざわざライ麦パンを特別視することもないらしい。
この店のライ麦パンは、ライ麦特有の香りが強い。スーパーで売っている普通の食パンと比べれば、その違いは歴然だ。おまけにずっしと重いし、買ったばかりでもそれなりに固い。手でちぎろうとしても難しい。ナイフを使って半分に切り、あとは食べやすい厚さで何枚かに切り分ける。
味が濃いので何もつけずに食べるが、歯応えが強く何度も噛み締める。パンの味というのはこういうものかなと感じる。口の中の水分を全部持っていかれるというか、吸い込まれてしまう。クルミや干し葡萄の味が良いアクセントになるのだが、食べ物を噛み締めるという「本能的な楽しさ」がある。
一つ食べ終わるととてつもない満腹感を感じるが、これは何も考えずに延々と固いパンを噛むという作業を続けたせいだろう。ものを噛むと満足感が湧くのは、人類が持つ最古の本能ではないだろうか。
日本の伝統的な食べ物であれば「するめ」、それも丸のまま一枚を噛み続けるみたいなイメージだ。

紙袋はオシャレ感というより品質維持のために重要だと思うのだが

自分なりの高級なパン屋のイメージなのだが、パンの個包装に紙袋を使う店というのがある。スーパーのレジ周りに置いてある水物を包むペラペラのビニール袋を包装に使う店は、残念ながらパンに対する愛情が足りないと思ってしまう。ビニールの匂いがパンに移るからで、それが嫌いなのだ。コストを考えるとビニール袋も仕方がないということになるのだろうが、5円10円高くても良いから、匂いがうつらない袋にしてほしい。
ブーランジェリーと名乗る高級店でも、ペラペラビニール包装の店がある。そういう店には、また行く気が起きないのも確かだ。パンを焼く技術だけが高級パン屋の売り物ではないだろう。美味しいパンを家に持って帰り、それを食べるまでが、パン屋のお仕事になるのではないかと思う。

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