今年の夏は四国と北海道の旅をした。北海道は長逗留したので、車で遠出もした。その時に立ち寄った、ちょっと変わった場所の話をしようと思う。

北海道には180近い市町村がある。その中には北海道生まれの自分ですら名前も思い出せない町もある。名前は覚えていても場所がわからないことも多い。道北、道東にはそんなうろ覚えの場所がたくさんある。
島根県と鳥取県の位置関係がよくわからないとか、北関東三県の東西関係がわからない人が多いという話をたまに聞く。小中学校の社会や地理の授業が役に立っていないぞ、反省しろよ文部科学省!! といつも思っているのだが、こと北海道の地理では、恥ずかしながら自分も同じような状態になる。
利尻・礼文島の島の形は思い出せる。稚内の西方海域に存在することも覚えている。ただ、どちらが北でどちらが南にある島なのかは、すっかり思い出せない。その度にグーグル先生のお世話になる。
この芦別という町も、他人様に説明するときはちょっと難しい。北海道人であれば、おおよそ地理的なことは理解しているから、滝川から富良野に行く途中といえばわかる。少し古い人であれば、でかい観音様が立っているところで話は通じる。
が、北海道外の人に説明するとなると難度が高い。よく使う説明は、旭川と富良野の間にある町という大雑把な言い方だ。ただ、このアバウトな説明でも困ったことはない。誰もが、ああそうなんだ、で納得してしまう。
正確にいうと、旭川も富良野も確実な場所は思い出せないが、その間にある町ということであれば、正確に記憶する必要もないという感じらしい。広島市の位置を説明する時に、大阪と福岡の間にある町という程度の乱暴さだ。同じ言い方で岩国、広島、福山、岡山、姫路、神戸あたりまで説明できてしまう。ひどい話だ。(笑)

その芦別という町に至る札幌からの幹線は国道12号線経由での国道38号線であり、滝川から道東方面に向かう老舗国道だ。昔は街中を通り抜けるため渋滞しやすい道路だったが、最近では市街部を避けたバイパスがあちこちに出来たため、国道38号線は予想外に流速が早い。北海道特有の「高速不要な一般道」に近くなった。
その国道38号線を使わずに、芦別から札幌方面にショートカットする道が、完全舗装されたのは平成の中期だった。実はこの道が、夏には渋滞知らずの抜け道になる。札幌方面からの移動では、途中に富良野への分岐があるため、観光バスにもよく使われる迂回観光ルートだ。
芦別ー札幌の移動をするとき、滝川から高速道路を使っても、この抜け道を使っても所要時間はほとんど変わらない。ただ、山間部を走るため、くねくねした道が続くのも確かだ。運転初心者には苦手な道になるかもしれない。
おまけに、かなりの距離がある区間だが、トイレの施設がほとんどない。ほぼ唯一の駐車場付き公衆トイレがあるのが、この場所「三段滝」になる。

トイレ休憩のついでに景観を楽しむという贅沢はできる。渓流の近くにまで遊歩道は整備されている。さすがにハンディキャップ対策までは出来ていないが、少なくとも小学生くらいであれば、滝の近くまで普通に歩いて行ける遊歩道が続いている。
首都圏近県であれば、峠の茶店的な場所にあたり、休憩するには絶好のポイントなのだが、なぜか商売の気配がしない。この近くが国定公園になっていて、環境保護などの課題が多いことも理由のようだが、最大の難点は冬に大雪が降ると除雪が間に合わないことだろう。
まあ、雪対策の進んだ北海道でも、冬の大雪は主要国道や高速道路ですら閉鎖されるのだから、バイパスに使われる支線では復旧が遅れるのも仕方がない。そんな場所にある「景観スポット」が、冬でも人気があるかという問題もありそうだ。

この景色も、雪に覆われたとしたら、雪舟の水墨画のような幽囚な風情になるだろうか。個人的には雪一色で濃淡はほとんどないような気もする。凸凹すら消える真冬には、何か違う楽しみ方が必要だろうか。おまけに、この川沿いにあるビューポイントに近づく遊歩道は閉鎖されそうだし。
北海道という地域では、こんな「夏だけ行ける」絶景ポイントがあちこちにある。ただ、冬の景色の楽しみ方や冬の活用法についてはもう少し研究が必要のようだ。
北海道と沖縄は、国防上の理由もあり、なぜこんな場所にというところに高規格の道路が整備されている。その道路設備をどう活用していくか、国土防衛問題から経済活性問題へ道路利用の視点をずらしてみる。そんな時期なのだと思うのだけれどね。
ちなみに北海道で山間地にある僻地であっても、舗装道路が出来上がっている。そして、戦車が移動できる幅がある。四国の山間地にある三桁国道と比べると、驚くほどの差だ。道路整備も防衛産業、北海道のリアルだ。