
家電初心者は、選択に困るとソニーを選ぶのだと聞いたのは随分昔のことだ。技術の高さと信頼性をブランドに仕立て上げたという意味で、極めて優れた戦略だったのだろう。白物家電ではパナソニック、東芝や日立など老舗家電メーカーが強かったのだろうが、こと映像、音響、デジタル家電ではソニーのブランドの強さは抜群だった。「だった」と過去形なのは、今やソニーの稼ぎはゲーム機に代わっているからだ。デジタル家電で言えば携帯電話からスマホの移行期に(日本では)、ソニーブランドがアップルブランドに変わってしまった感がある。
ソニーのブランドアイコンと言っても良いほどの知名度を持った「ウォークマン」がiPodに取って代わられ、普及機種では勝ち目がないから高級機種に方針転換してしまった。いまやWalkmanは、デジタル携帯オーディの代名詞とは言いがたい。それこそ化石ブランドになりつつあるようだ。
それでも初代ウォークマンからの愛好者として、愛着があるのでなかなか見限ることができない。カセットテープ時代のウォークマンを2世代、CDウォークマン、(MDウォークマンは諦めた)、デジタルウォークマン3世代を乗り継いできた。
初代デジタル版は今でも健在、二代目デジタルは音は出るが画面が見えなくなったので、三代目に買い替えた。デジタルなので中身はPCから移行できるから、二台目と三台目に搭載した楽曲は、ほぼほぼ一緒という便利な時代になった。
ところが、ここでまさかのソニータイマー発動という羽目になった。ソニータイマーとは、保証書が切れた直後くらいに、高額な修理が必要となる致命的故障が起きることを揶揄して言っている、いわば都市伝説的な言葉だ。
「ソニーあるある」と言っても良い。日立タイマーとか東芝タイマーとかパナタイマーとか、他の家電メーカーでは聞いたことはないから、やはりソニー製品に裏切られたと思う人が多いのだろう。おそらく統計的に言えば、わざわざ取り上げる必要もないくらいのレアケースなのだと思う。
それでも自分がその事象(事件?)に遭遇するとそれなりにショックを受けるし、「あーア……………ソニータイマー発動かよ」と言いたくなる。
3代目のデジタルウォークマンは、多分これが最後のウォークマンと思って買ったのだが、買ってから1年3ヶ月ほどで壊れた。状況をソニーサイトで確認すると基盤損傷らしく、修理するのと新品を買うのと、費用はほぼ同じになる。買い換えるかとも思ったが、いわゆる普及機種なので諦めることにした。これが最上級機種であれば1万円かけても修理するだろうが。
ネットで調べると、4−5千円くらいでデジタルポータブルオーディオ機器は手に入る。スマホの記憶容量が増えたのでWalkman程度の楽曲(最大8G程度なので)は余裕で登録可能だ、と諦めることにした。
ただ振り返って考えれば、ソニータイマーの発動はこれが初めてではない。今や誰も覚えていないだろう、デジタルエイジで言えば古代にあたる情報機器「パーム」もタイマーが発動した。次世代機が出ていたので、それに乗り換えたからあまりダメージ感がなかっただけだ。
ソニー製の初代電子ブックもタイマーが発動して、これは代替品が見当たらず修理した。当時はネットで修理代金を見積もるシステムもなかったので、ソニーのサポートセンターまでわざわざ出かけて修理したら、新品に近い費用がかかったのを覚えている。その後しばらくして他社の次世代機が出たので、泣く泣く乗り換えた。ソニーはデジタル出版からも撤退してしまったから、持っていても使わなくなっただろう。
すでに他社ブランドになっているバイオ(PC)もかなり短期間で画面がブラックアウトした。このときは他社PCに乗り換えた。ただ、筐体が金属製のモデルは少なく、斬新なデザインだったことは覚えている。その後しばらくたってから、またバイオを買い直したのだから、ソニー信者と言っても良さそうだ。(中身はウィンドウズマシンなので機能的には格別優れていたという記憶はない)
カセットウォークマンは一番長持ちした。何年か使って、回転軸にテープが巻き付いて故障し修理不能になったが、その時も次世代ウォークマンに乗り換えたので諦めがついた。
かくの如く、ソニー製品愛好者なのだが、今回をもってウォークマンは卒業することにした。幸いウォークマン連動のコンポはまだ健在なので(これは長生きでそろそろ10年ものだ)、初代デジタルウォークマン(現在は搭載全曲がクラシックという専用機に変身している)と合わせて、どちらかの機械がくたばるまで付き合っていこうと思っている。
まあ、こんな伝説が生まれるくらいソニーは愛されているブランドなのだろう。だから、最後に買うソニー製品はPS5と決めているのだが、発売から2年経っても一向に買えそうもない。PS5の欠品タイマーは早く解消してくれよ、と言いたいぞ。