食べ物レポート

名店 金田で憩う

東京に数ある居酒屋の名店は、大部分がいわゆる下町エリアにある。大繁華街である池袋、新宿、渋谷などの都心西部には見当たらない。ましてや山手の住宅地となると、居酒屋よりイタリアンやフレンチの名店が多い感覚がある。その山手、自由が丘でとてつもなく評判の良い居酒屋、金田に行ってきた。知人のリクエストだったが、やはり遠征する意味のある「良いお店」だった。

自由が丘の駅を降りて、線路沿いにちょっと渋谷方向に歩くとたどり着く。自由が丘は、どこがメインストリートなのかわからない、駅の東西南北にある意味無秩序に広がっている不思議な街だ。ただ、渋谷方向に伸びる道の一角は居酒屋やラーメン屋などが立ち並ぶ「夜の繁華街」的な感じがする。

二階席に通されて、まずは酒を頼み、刺身盛り合わせでいっぱいとなった。本鮪の赤みがさりげなく入っている。白身と青魚がほどよく混じっていた。自然と、うまい肴という言葉が浮かんでくる。

肉豆腐は、豆腐多めで独り占めして食べるのがほどよい量だった。味付けは薄めなので、ご飯と一緒に食べるおかずというより、味の濃い日本酒を飲みながら、汁と豆腐で口の中を調整していく、そんな感じの酒飲み向きの一品だった。池波小説に江戸の居酒屋の描写があるが、大体は「鍋」「汁物」をつまみながら酒を飲んでいる。まさに、この肉豆腐はお江戸の味という感じがする。厳密に言えば、お江戸では豚肉は常食になっていないから、猪鍋か、鳥鍋だったのだろうけれど。

こういう居心地の良い居酒屋は、ついつい長く居座ってしまいがちだが、名店だけに席待ちの客もいるので、サクッと飲んでサクッと帰るのが「粋」というものだろうし、暗黙の大人の了解というものだ。大振りのお銚子を2本いただいて退散した。良い酒、うまい料理、良い友達、これに勝る人生の楽しみはないなあ。

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