埼玉県は某ヒット映画で散々に茶化された通り、「海なし県」なので海産物に名物はない。(当たり前だが)
だから有名な鮨屋も存在しない。(と断言して良いかちょっと自信がないが)鮨を食べに行くなら当たり前のようにお江戸に行く。それとも、手近の回転寿司で簡単に済ませるかだ。
蕎麦も秩父の山間部では有名だが、全県的に見ると圧倒的な「うどん県」だろう。讃岐うどんには勝てないかもしれないが、武蔵野うどんは関東が産んだ最高峰の麺料理だと思う。(ここだけは評価してもらいたいものだ)
にも関わらず有名なうどん屋といえば、山田うどんになってしまうのがちょっと悲しい。一部の地域、加須あたりではうどん懐石の店もあるようだが。行列ができる店といえば大宮の藤店くらいだろうか。
それにも増して、中華料理の店は圧倒的に少ない。なぜか町中華ですら少ない。当然、美味い中華を食べるのであれば、お江戸まで行くことになる。そんな非グルメ的環境の中、所沢の駅ビルが第二期拡張を完了してレストラン街が広がった。そこに新しく出てきたのが、京都のお好み焼き屋・仙台の牛タン屋・そして神奈川県大和の中華料理屋だった。埼玉発のレストランは、川越のラーメン屋元々あったが、拡張部分は全て「外地」からの侵攻だった。ほかにはオムライス屋・ビヤホール・焼肉屋もできたが、これはどれも全国チェーンだった。埼玉グルメ界の発展を祈りたい。
しかし、素朴な疑問だが、なぜ大和の中華料理屋?と思う。どうせ神奈川から持ってくるなら、横浜の中華街で元気のある店を連れてこれなかったのかと聞きたくなる。

そんなことを考えながら、新規開店からずいぶん時間が経ってしまったが、ようやくその中華料理店に行ってみた。時間がかかった理由は簡単で、開店以来ずっと行列ができる人気店だったからだ。待たされるのを嫌っていただけで、そのうち人気が落ち着いてきて行列がなくなったら入ってみようと思っていた。ところが、コロナの間は多少空いていたようだが、それでも行列はできていた。客の数は減っているはずだが、席を間引いているから収容人数も減っていたためだと思う。
そして、馬鹿馬鹿しいことに、ようやく気がついたのだが、開店時間早々に行けば入れるだろうということだ。開店当初は、営業時間前から客が並んでいたので、早めにいってもなあ・・・思い込んでいただけだ。
当たり前だが、昼のピークに行けば1時間待ちになる。が、今であれば、開店と同時に入れば問題ないはずだ。朝飯を食べずに腹を減らして、11時に行ってブランチにすれば良い。いやいや、頭悪すぎというものだと反省した。結局、11時5分過ぎくらいに行って、全く待たずに楽勝で入店した。それでも席は半分くらい埋まっていたが。
とりあえず、午前11時のブランチ、最初の注文は多少軽めにしたいので水餃子にした。一人前3個とありがたい量だった。普通に美味い。皮が厚めなので小籠包的な感覚はないが、もっちりとした伝統的な日本式中華料理(?)の味だった。黒酢のソースがオシャレ感を出している。何やら埼玉的ではない香りがする。

そして、中華料理における我が絶対定番「酢豚」を頼んだ。単品注文なので量はそれなりにある。というか、一人で食べるには多すぎる。おまけに、この大和スタイルの酢豚は肉だらけだった。総固体量の7割が「豚」で、お肉のお供というかおまけ程度に野菜が顔を出す。超がつくストロングスタイルだ。これに匹敵するのは紅虎餃子房の黒酢酢豚くらいしかない。(あれは酢豚というよりゴロっとした塊肉だ)
できれば、キクラゲとか歯応えのある野菜などを入れて欲しい。玉ねぎとか筍なども増量して欲しい・・・などなど、肉好きのための食べ物「酢豚」を注文する割には、ひ弱な希望が溢れてくる。
どうやら神奈川県大和式中華は肉モリモリのストロングスタイルなのだ。もう一度来店して、麺料理とチャーハンを試してみなければ解決できない仮説だが、多分正しいと思う。西武鉄道の商業施設開発部門の方々は、きっと大の肉好きなのだろう。そして、彼らの思惑と野望は、自分たちの本拠地を「肉肉しいレストラン街」にすることなのだと思い知った。
ちなみに、この中華料理屋の隣は仙台の牛タンや、川越のコッテリ系ラーメン屋、居酒屋系蕎麦屋、札幌のイタリアン、そしてお江戸のトンカツ屋だ。フロアーの反対側には焼肉屋がある。逆隣はお好み焼き屋、ビール洋食、オムライスと並んでいる。こうして見渡しててみると、このレストラン街は相当にヘビー系に偏っているのがわかる。
これが西武鉄道グループの陰謀なのか、埼玉県西部に住む人民の嗜好なのか。微妙ななところだなあ。どちらにしても、神奈川県大和からきた中華料理屋には今日も行列ができている。