
埼玉タンメンの話を続ける。
山田うどんの新業態、埼玉タンメン山田太郎はなかなかの盛況ぶりで、駐車場に止まっている車も所沢ナンバー以外に、東京都多摩、埼玉県北部のナンバーもあった。山田うどんといえば埼玉県だけかと思っていたが、東京都下や千葉・群馬などの埼玉県隣接地区にはかなり店舗がある。根強いファンは埼玉県人だけではないらしい。

濃厚スープ(鳥と豚骨)の中太麺という組み合わせは、東京周辺のタンメンとは一線を画しているというか、全く別ものというべきものだ。だからあえて、「埼玉タンメン」という名称にしたのかもしれない。単純にいえば、トッピングが野菜に特化した長崎ちゃんぽんという感じがする。ただし、これはちゃんぽんをマネしたものではあるが、ちゃんぽんとは別の美味い食べ物だとも思う。丼を覆うほどのチャーシューを乗せたりする肉系ラーメンの有名店は多いが、「野菜推し」ラーメン店も今ではすっかり定番だ。
同じ埼玉発「日高屋」の野菜たっぷりタンメンは、そのヤサイマシマシ系ラーメンの典型だろう。他にも東京タンメンという専門店があり、大規模チェーンではリンガーハットの野菜たっぷりチャンポンがヒット作で、野菜人気の麺商品は多い。
埼玉の野菜をたっぷり使った「埼玉タンメン」というコンセプトはありだと思う。そして、野菜たっぷりということは肉が乏しいので、そこをサイドアイテムで対応するというのも良い作戦だ。当然、麺屋のサイドアイテムとして餃子が思い浮かぶが、そこをちょっと変化球で鳥唐揚げ単品追加売り売りというのが、この店の良い提案だと思った。
唐揚げは餃子と違い調理時間が短い、単品で個数調理が可能、作り置きをしなくても麺と同時提供出来るなどメリットが多い。おまけに単品で「とり唐揚げ定食」も作れる。意外と瓢箪からコマ的な伸び代のある発想だろう。そういえば岩手県盛岡市の有名な中華定食屋も同じ手法を使っていた。

そして何よりユニークなのが、注文の仕方だった。渡されたQRコードをスマホで読み取り、そこから注文する。おまけに会計はセルフレジだ。第一感は「高齢者、とくにじじいはどうするよ」だった。ただ、これも割り切りの問題で、高齢者は最初から相手にしないと決めてしまえば、スマホなしの高齢者を例外的に従業員が面倒を見てやる、少数特殊客として対応する。それで良いのではないだろうか。
特にコロナ禍の後遺症で、今後は高齢者が有力顧客になる可能性は低い、いや、はっきりと低下すると見切れば良い。DXの進捗は客の選別も対応策になるということだろう。
ごく個人的にはスマホ注文もセルフレジも問題なく利用できたので文句はない。ただ、自分の先輩世代では怒り出す客も多くいそうだ。店頭でのクレーマー的存在になりそうだとは思った。そこも含めての実験ということではないか。スマホ注文、セルフレジ、キャッシュレスは店舗の管理業務を決定的に削減する。店側にはメリットが多い。また、アフターコロナでは過剰な対人接触は害悪と認識すべきなのだろう。

それでも微妙な高齢者対策は残っていた。スマホ注文には不要な従来型の紙メニューブックもしっかりと席に備え付けられている。近くに座った、高齢者男性(個人的には適応除外な対象に見えた)が、予想通りスマホがないのでと文句を言い、口頭で注文していた。その後も、二組ほど高齢者男性が従業員を呼びつけ注文していたのだが、共通しているのは高飛車な喋り方だった。客の注文をスマホで取るとはとんでもないとぶつぶつ言っていた。
あーあ、だからダメなんだよなあ、とつい思ってしまう。今、現在は人と話をすることは罪悪なのだよ。ワクチン接種が終わったからと浮かれて街に出てきて、時代遅れなセリフで従業員に文句をつける高齢者という構図だ。
因縁をつける。絡む。見ていてうんざりする。1000円もしない手軽な食べ物を注文するくらいで、偉そうにするなと言いたい。こうして世代分断は高齢者側から着実に進んでいく。若い世代から嫌われ、自分たちで壁を作る。Old man must go home, and stay there というのはアメリカ文学で読んだ一文だが、その著者はこういう世界を想像していたのだろうか。
新業態のラーメン店から何やら世界の変化を学んでしまった。