旅をする

熱田神宮で食らう

熱田神宮は、名古屋市でいえば南部というか元は海の近くというか。名古屋へは仕事で何度も行っているが、なかなか参拝に行く機会がなかった。織田信長とか豊臣秀吉とかいう戦国期の有名人が参詣したのだし、一度は入ってみたいと思いながらなかなか行けなかったのだが、この数年で何度かたて続けて行ったのだから、単純に怠け者の言い訳だったということか。

熱田神宮の周りはすっかり住宅で囲まれているが、境内は相当に広い。東京で広い神社といえば、明治神宮に靖国神社ということになる。ただ、ここは明治新政府が作った新型神社だから、伝統ということでいえば江戸幕府開府以前からの日枝神社がややひろめ。でも都会型神社の典型でもあり今は随分と狭い感じがある。伊勢神宮は別格としても、熱田神宮に匹敵する広さといえば、体感的に春日大社、大神神社くらいだろう。そして不思議なことに大きな寺社には必ず存在する門前町というか、参拝客目当ての店が見当たらない。同じ名古屋の中でも大須観音あたりの賑わいとは随分違うものだ。

とりあえずお参りを済ませたら、神宮から程近いうなぎの名店に行く。ただし、ここはとてつもなく時間待ちになるので、順番としては、まず鰻屋の順番取りをして、それからお参りをして、戻って来て呼ばれる順番を待つという格好になる。
この当時(2年ほど前)はインバウンド観光客全盛期で、順番待ちの半分以上がチャイナな人たちだった。今では見当たらない人たちというか、コロナが収束しても当分この国にインバウンド客は来ないだろうから、順番待ちの行列は減るのかもしれない。

さて、2時間待った名古屋名物のうなぎだが・・・。なんというか、うなぎひとつで三度楽しむという名古屋人的合理性は、実に好ましいと思う。蒲焼で食し、グチャまぜにして食し、お茶漬けにして食す。間違いなくうまいやつだ。いいなあ、名古屋の人。うなぎのタレはお江戸と比べても濃いめの味付けのような気がするが、最後のお茶漬けにするとこれがまたぴったりくる。
うなぎの蒲焼で酒を飲むのは、実に贅沢で大好物なのだが(普段は、スーパーで売っている冷凍ものだ)、ここのひつまぶしは酒なしで、ムシャムシャと白飯の旨さを味わうべきだと思う。
これに匹敵する白飯うまさ満喫おかずといえば、塩がきつ目のベニ鮭の焼いた物か、新鮮なイカで作った塩辛か。米文化圏の東アジアのあちこちで食べたもの、うまいものがあるが、「白飯」に合うおかずというのは意外と記憶にない。台湾には日本のホカホカ弁当屋みたいなものがあり、そこは米を主体にして米にあったおかずを食わせる設計だったような気もするが。

まあ、どちらにしても「名古屋ひつまぶし」は行列しても食べる価値がある。
個人的には、名古屋めしが好物なので、名古屋に行くのは楽しみなのだ。鉄板ナポリタン、味噌煮込みうどん、どて焼き、大アサリ、手羽先、台湾まぜそば、某喫茶店のサンドイッチ。

名古屋メシは偉大なりだ。

食べ物レポート, 旅をする

名古屋で一杯やる時は・・・

名古屋の繁華街といえば、栄になる。その飲み屋密集地帯に大きな居酒屋があり、その名を「だるま」という。名物は「名古屋飯」と言われる、名古屋ローカルフードが勢揃いなのだ。何年かぶりで来てみれば、なんだかずいぶん明るくきれいになっていた。ちょっと前に改装したそうだ。前は、薄暗くて微妙に哀愁がある親父の居酒屋っぽかったのだが、すっかりコンビニ的な明るさでヤングアダルトな店に変わっていた。
そんな新装のカウンターでまずは専用グラスに入った生ビールを飲む。

名古屋名物といえば味噌煮込みうどん、きしめん、味噌カツ、えびふりゃーといったところだが、高級路線ではひつまぶし、安直なとところではスガキヤラーメンも名古屋ローカルとして有名だろう。
しかし、なんと言っても、どて煮を忘れてはいけない。居酒屋の定番のもつ煮込み、牛すじ煮込みなどの煮込み系料理をドーンと乗り越えた味噌味の煮込みというか、味噌で煮たもの。甘辛味がよろしいようで、どて煮発祥の店にも行ったことがあるが、どうやらこの味の濃い料理は、お店による差が出にくいのではないか。どこの店で食べてもうまいようだが・・・。

何やら昔の日めくりカレンダーのような人生の教訓を学びながら酒が飲めるのもありがたい。帰りに子供のお土産に買って帰りたくなる。一体何種類くらいあるのだろう。

手羽先と味噌カツも忘れてはいけない。手羽先は元祖よりもそれを真似したチェーンがすっかり大手になってしまったが、手羽先唐揚げ自体は名古屋のあちこちで食べられる。これは確かに店が違うと味が違う。胡椒の加減が一番の差のようだ。味噌カツは、味噌の味で決まるので、どて煮と同じで店の差はないような。ただし、衣の暑さの具合で味は変わるような気もする。濃い味付けが酒を飲む時には良い塩梅となる。名古屋は酒飲みの場所だと聞いたことはないが、出てくる料理は酒向きばかりだなと感じることが多い。

そして、これを名古屋めしと言ってはいけないよという飛騨高山地方の漬物ステーキ。もともとは鉄板で少し発酵の進んだ古漬けを焼いて食べるということなのだが、冬に野菜がない時代は保存食の漬物を焼いて食べていた。それが現代では、嗜好品として一般的になったようだ。その飛騨料理を堂々とメニューに加えるのは、だいぶ強気だとは思うが、名古屋人からすると名古屋の(影響力・支配力)範囲は日本海まで及ぶということなのだろう。卵のかけっぷりは鉄板ナポリのアレンジだし、たっぷり鰹節というのもおそらく名古屋流(きしめん的食べ方)。おまけにソースが味噌、醤油など4種類もある。確かに名古屋的に発展し拡散した料理だから岐阜高山料理などと言わず、広域名古屋圏料理とでも言うべきだろう。

東海北陸道路で走るとわかるが、名古屋と北陸との境はおそらく白川郷あたりに敷かれているのだと思う。岐阜のケイちゃん焼きも、いつの間にか。この店では名古屋めし扱いだったし。おそらく名古屋人の思考回路では、名古屋→大名古屋→広域名古屋→名古屋以外の日本くらいの広がりで、西は京都、東は沼津あたりまでは名古屋圏なのだ。

そのうち福井のサバ料理、へしことか、焼津の黒はんぺんあたりまでは名古屋飯化するかもしれないが、それもまた楽しみだ。
そして、純名古屋飯としての新興勢力といえば、台湾ラーメンから生まれた台湾まぜそばが人気上昇中、次の名古屋飯とその進化はなかなか見逃せない。