食べ物レポート, 旅をする

いかの墨 居酒屋ではない居酒屋

新潟のナイトライフで外してはいけない名店がある。(らしい) 新潟に住む家族によれば、なかなか予約の取れない名店とのこと。居酒屋というにはレベルが高い、お手軽な割烹といった感じの店で美味しい晩御飯を食べることになった。
調べてみると新潟では複数店を展開している外食企業だった。店の名前に魚の一文字が入っているが、店名は別々なのでちょっとチェーン店とは異なる。去年の夏に行ったのは駅の反対側だった。今回は、新潟駅北側の一角にあるビルの中の店だった。

ファサードと入り口の作り込みが上手い。これから出てくる料理に期待が高まるというものだ。一般的に、居酒屋はファサードの作りに手を抜きすぎる。意固地な経営者がレストランや居酒屋は味が勝負、味で勝負などとと思い込んでいるせいだ。
客の目線に立ってみれば簡単に理解できることだが、味だけで店を選ぶのはごく限られた変人だけだ。一般的には味と雰囲気と接客のバランスで、また来る店にするかどうかを決める。今風に言えば、トーラルバランスと映える料理とコスパによる統合された判断だ。「味」は、必要条件であるが、十分条件ではない。
故に、入口の見かけはもっとも重要な顧客との接点、First Impresion の勝負点だ。この店は、入り口に入る前ですでに合格している。

料理も同じで、見栄え8割くらいに思っていてちょうど良い。とくに、料理の質を感じさせる「器」が重要だ。この店では席に案内されると卓上に大きな土鍋が置いてある。
これはお通しの魚を蒸すもので、最初にザルに盛った魚のあれこれを従業員が持ってきて見せられる。その中から一人一品を選び、土鍋の中で蒸しあげる。10分ほど待つと蒸し上がるようだ。
この日選んだのは、こぶりなふぐの干物で塩加減がちょうど良い塩梅だった。この蒸したフグを肴に、ちびちびと新潟の地酒を飲んでいた。店内は冷房がよく効いて爽やかなので、ぬる燗にしてもらう。
隣のおっさんたちの蛮声さえなければ完璧になるくらい良い店なのになあ。コロナの後、あれほど静かだった居酒屋が、また元の大音量絶叫空間に戻ったのは残念で仕方がない。ただ、どこの居酒屋でも店内の光景を見ている限り、若い方たちはそれなりに静かなのだ。絶叫系オヤジ、オバンはだいたい四十代後半から五十代に多い。学習効果が足りないのか、学ぶ気がないのか。「羞恥心」とか「たしなみ」という言葉を学ばないまま、歳をとってしまったのだな。きっと。
おそらく現代日本では、その人生で一番恥を知らない年代なのだろう。

キジハタ(たしか中央)という魚は初見だった

刺身の盛り合わせにのどぐろを追加したものがこれで、新潟の地魚を組み立てたもののようだ。面白いなと思ったのが、佐渡島沖の魚が珍重されているらしい。佐渡島沖と言っても南側の海は新潟との間の海だから、どこまでが新潟沖でどこからが佐渡沖か、クイズみたいなものだろう。おそらく珍重されるのは、佐渡島北方海域、つまり大陸との中間点あたりが、佐渡島沖扱いになるのだろうと思った。ただ、付きせぬ疑問だが、そこで獲れる魚はどんな種類なのだろうか。
皿の上を見る限り少なくとも太平洋で採れた魚は並んでいないようなので、ちょっと嬉しい。ただ、日本海に紛れ込むマグロを一本釣りした、みたいな伝説的マグロであれば歓迎するが。

今ではすっかり漁獲高が減ったらしいイカだが、日本海側の各所ではまだそこそこ採れているようで、この日は地元イカの天ぷらを注文した。イカはいつ食べてもうまいなと(個人的な嗜好が入るが)、バリバリと頬張る。天つゆではなく塩で食べるとうまいとも言われた。確かに、天ぷらは塩で食べるとうまいネタは多い。
その塩についても何やら蘊蓄を聞かされたのだが、隣のおっさんの蛮声に遮られよく聞き取れなかった。残念。ただ、塩て食べた天ぷらはあっさりとして、大変美味いものだった。(特にゲソ)

後になって気がついたが、ビル全部が一軒のお店?みたいだ

新潟駅北側にある飲屋街は、新幹線駅によくある新興繁華街のはずだが、新潟の伝統的繁華街である古町界隈を超えた賑わいのようだ。新潟市は政令都市とはいえ、いささか小ぶりな町だが、駅前とバスセンターと古町という三つの繁華街が併存している。
この町で住む人たちには当たり前なのだろうが、あちこちの地方中核都市を見てきた経験からすると、街におへそがないちょっと不思議な都市だ。
この暑い時期をずらして、もう少しのんびりと街歩きをしてみたいとは思う街だ。ちなみに、新潟は「あぶさん」の出身地だということを思い出した。新潟市内のどこかにあぶさんの銅像でもないのだろうか。個人的にはあぶさんの話が水島野球漫画の最高作品だと思っているのだけれど。

追記:気になって調べてみたら、なんと古町のアーケードに銅像があるらしい。古町には夜に行ったので気が付かないまま帰ってしまったようだ。実に、また残念。

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新潟の謎 イタリアン

新潟ローカルのファストフードチェーンで、新潟県民だけが食べている食べ物がある(多分だが)。ずいぶん昔にその話を聞きつけて、わざわざ食べに行ったこともある。不思議な食べ物だと思ったが、あえて新潟人には感想を尋ねなかった。ローカルフードの批判は、喧騒の種にしかならないからだ。それくらい微妙な食べ物だった。

おそらく、新潟県以外では見つけられないと思う「ローカル焼きそば」の専門店だ。バーガーでもサンドイッチでもない。丼でも寿司でもない。焼きそばだ。そして、そのバリエーションは焼きそばの上にかかったソースにより作られている。店内のメニューポスターを見ても、焼きそばで全面が占められている。

そして、そのオリジナルというか元祖というものが、こちらの「イタリアン」だ。焼きそばの上に、スパゲッティに乗るようなミートソースが載っている。食べてみるとわかるが、間違いなくミートソースだ。そして、その下にあるのはソース味の焼きそばなのだ。麺は平麺で中太だから、パスタで言えばフィットチーネ的な雰囲気が(多少ながら)醸し出されている。が、味も食感も明らかに焼きそばだ。
このミートソースと薄味の焼きそばのバランスが、これまた微妙すぎて、なぜミートソースなのかという疑問が湧いてくる。
ソースのラインナップを見ると、カレー味もあればカルボナーラ風もあるので、やはりパスタの横展開考えても良いのだろうか。店内の雰囲気だが焼きそば屋感は全くない。焼きそばの代わりにバーガーとポテトが出てきて全く違和感がない。店内では女子高生が複数グループくつろいでいるので、やはりファストフードな雰囲気なのだ。

とりあえず久しぶりの試食体験の感想はかなりアレな感じだた。レア物を食べた時の、表現の難しさというべきか。その一切を飲み込みつつ、表に出てみたら驚くべきポスターを発見してしまった。
ソフトクリームのテイクアウトではないか。テイクアウトしたソフトクリームの生存時間は一体どれくらいあるのだろう。5分は持たない気がする。そうすると事前に製造したものを冷凍しておくのだろうか。おまけに、イチオシと思しき商品は何と8段もある背高ではないか。これはどこかでみたことがあるような気がして、撮り溜めた写真をひっくり返してみたら、岩手県花巻のマルカンビル大食堂で食べた「箸で食べるソフトクリーム」に似ている。新潟と花巻、どちらも老舗の店なので、並行進化というものだろう。
今さら店内に戻って注文するわけにもいかないと諦めたが、ますます新潟のファストフードに対する謎と疑惑は深まってしまったのだ。新潟、恐るべし。そして、新潟市民がちょっと羨ましい。

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会津で和菓子を楽しむ 

会津若松市七日町通りにある和菓子の店で、手土産にしようとあれこれ探してみた。なんとも美しいフォルムの和菓子が並んでいたのだが、福島といえばゆべしだと思い(郡山の名産に有名なくるみゆべしがあるので)、2種詰め合わせのセットを買った。

サンプルを見ていたら自分でも食べたくなり、2種類のゆべしを買ってしまった。一つずつバラ売りしているのがありがたい。くるみゆべしは、表面に雪が降ったようにみえる。甘さは控えめで、実に心地よい。このグニュッとした歯応えが、幸福感を呼ぶのだなあ。

もうひとつのゆべしは、ごまがまぶしたものだった。ゆべしとしては珍しいと思う。そもそも、ゆべし自体は全国であれこれバリエーションというか、拡散した広がりがあるようで、また菓子店により様々な中身、外見の変化もあるようだ。あくまで記憶モードだが。

ごまが表面にまぶしてあるので、食べると食感がなかなか変わっている。ゴマを噛むプチプチした感じと、ゆべしの持つ弾力と歯応えが合わさると、なんとも絶妙な「かみ心地を楽しむ」菓子になっている。こちらも甘さは控えめだが、今の時代はそれが良いのだと思う。

シアトルコーヒーのチェーン店で出される、強烈な甘さの飲み物が一般的になって以来、その反動なのかはよくわからないが、甘さ控えめの菓子、特に和菓子が増えているような気がする。「甘味」にも時代による流行りがあるのだろう。
伝統的な和菓子も、もともと甘さは控えめなものが多いとは思うが、最近の創作系和菓子は特に甘さと香りと食感のバランスに気を配っているものが多い感じを受ける。食の世界は、流行り物に影響を受け玉突きのような変化と進化が連続して起こっていくものだ。日本人の甘味感覚が変容する引き金になったと思う米国発のドリンクと、和菓子の関係は誰か研究してくれないだろうか。面白いテーマだと思うのだがなあ。

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青島食堂の生姜ラーメン

10年以上前にテレビの旅番組で知った長岡の有名ラーメン屋にようやく行くことができた。新潟にはたびたび行っていたが、長岡に立ち寄ることは極めて稀で、たまたま長岡に行っても所要を済ませると新幹線に乗って戻ってしまう旅程ばかりだった。JR長岡駅から一駅の場所にあるこのラーメン屋は、長い間の憧れの地だった。
小出から長岡に移動する途中で下車して、ついに憧れのラーメン店に出会った。昼前に着いたが、すでに行列ができていた。
ちなみに、この日の長岡は日本一暑い場所だった。行列に並ぶのも命懸けの気温なので…………

カウンターだけの店内は、熱気がこもっていた。おまけにたまたま座った場所がカウンターの端で、なんとエアコンの冷気が当たらないという運の悪さだった。とりあえず注文した生ビールで一気に体を冷やす作戦だったが、これはあまり効果がなかった。残念。
お通しはチャーシューの切れ端で、これはなかなか有難い。これだけで何杯かビールが楽しめる気がする。実にうまいものだったが、ビールを飲んで涼んでいるうちにラーメンが到着した。

今回は珍しくチャーシューメンを注文した。丼の上に薄切りの自家製チャーシューがたっぷり乗っている。普段は最後に食べることにしているチャーシューを最初に食べてしまった。お通しに出てきた端切チャーシューのせいだ。あらためて、うましだった。
長岡の名物ラーメンは、魚介だしの生姜醤油ラーメンだった。思っていたより生姜は控えめな感じだった。スープもおとなしめなので、さらっといける。バランスの良いラーメンだ。海苔とめんまが良いアクセントになっている。
コンビニも見当たらないローカル駅前で、このラーメン店を目指してきた人の行列ができるというのも納得の味だった。次回訪れる機会があるかどうかは無妙なところだが、できればもう少し涼しい時期の方が、このうまさを楽しめそうな気がする。
その時は好物のめんまと海苔を追加しよう。

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会津名物を啖う

口福 とはこういう体験なのだなあ

会津の郷土料理は色々と有名なものがあるが、これまで会津に何度か来ているが、一度も予約が取れなかった店で馬刺しを食べた。ようやく念願が叶って一安心した。なんと、会津で馬刺しを食べようと思ってから、10年以上が経ってしまった。
馬刺しが有名な場所は日本のあちこちにある。熊本の馬刺しはニンニク醤油で食べた。九州醤油の甘さと相まって、実に濃厚な味わいがした。長野も馬刺しが名物だが、長野市の有名な和食店で食べたものは、生姜を薬味にして比較的あっさりとした味がした。熊本の馬刺しが中トロだとしたら、長野はあっさり系の赤身という感じだ。
そして、今回の会津の馬刺しだが、これは濃厚な赤身という感じがする。それを辛子みそで食べるのが会津流だそうだ。
お値段は当然ながらそれなりのものだが、ファミレスでステーキを食べるよりはよほどうまいものを食べた感がある。

この店のお通しが、漆の器に入った五品だった。野菜料理の一口サイズは、注文した料理が届くまでのつなぎとして実に良い加減だった。お通しは、あくまでメイン料理への繋ぎなので、味付けは薄い方が良いと思う。これを肴に、会津の酒を冷やで飲んでいた。

一合の日本酒を頼むと、卓上に漆の片口が置かれて、そこに一升瓶から冷たい日本酒が注がれる。いつもであればぬる燗を注文するのだが、この日は流石に気温が高すぎて、冷たい酒が欲しくなった。
大きめなガラスのぐい呑みにたっぷりを酒を入れ、一息に飲み干した。冷たい酒がカラッぽな胃袋に衝撃をもたらす。舌から喉にかけて冷たい酒が流れていくのがわかる。ビールは喉ゴシ、みたいなことを言う人もいるが、冷酒も喉ゴシに幸せを感じる。

鰊のうまさに開眼した

馬刺しを平らげつつ、追加で身欠き鰊の山椒漬けを注文した。他の店でも何度か同じものを注文したことはある。お店によって多少味の違いがあるのだろうとは思っていた。が、この店の鰊は浸かり具合が絶妙だった。思わずテイクアウトの注文をしたくなった。
馬刺しもうまかったが、このニシンの漬物があれば、日本酒を飲みに鰊をかじる、追加で日本酒を飲み、また鰊をかじるという、無限の連鎖ができそうだ。身欠きニシンは甘く煮付けたもの(炊いたもの)を蕎麦に乗せて食べるくらいかと思っていたが、この山椒漬けは別世界の食べ物だった。発酵食品は旨味を作り出すと言う意味で、やはり絶品が多い。その中でも、これはマイベストランキングでトップクラスと認定しよう。

馬刺しもニシン山椒漬けも、一人前というには量が多いもので、それを独り占めして食べきったから満足度は極めて高い。ただ、これ以上料理を頼めるほどの余裕は無くなってしまった。
美味しいものをたっぷり楽しみ、さっさと引き上げる。これが人気店での客の嗜みだろう。この日は、1時間ほどの滞在だったが、その間にも5組以上の客が満席のため断られていた。
やはり旅先で旨いものを堪能するには、予約しておいた方が良いのだ。予約なしで飛び込みで店に入り、感性任せにあれこれ注文してみると言うのは、やはり若い時だからできることだ。満席で断られても、また来る機会はあるさと諦めがつく。だが、歳をとれば胃袋の許容度も下がるし、ハズレを引いた時のダメージも大きい。そもそも次回があるかどうかも疑わしくなってくる。
そんなことを思いながら、次回は冬に来て桜鍋というのもよさそうだ、などと考えていた。当然、熱燗でいただく。その時も予約必須だな。

今回の旅の学びでありました。

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回転寿司で考えてみた その2

小腹が空いたので、軽く何か食べようとしたら、回転寿司とハンバーガーどちらを選ぶか。選択肢としては面白いが、少なくともお江戸とその周辺に限ると、ハンバーガー店は今やファストフードとは言えない。スマホで事前オーダーでも済ませておけば状況は違うが、店頭で商品を注文しようとすると、実に時間のかかる業態になっている。以前の評判は、国産のMバーガーでは注文してから作るので時間がかかるが、出来立てなので美味しいと言うものだった。今では米国伝来のMバーガーも注文してから作るので時間がかかる。味は、比べてみれば違いはあるかもしれないが、そこは好き好きというものだろう。
本来の言葉通りのファストフードは、今や立ち食いそばか牛丼くらいではないかと思う。そういう点(早く商品が手に入る)で、回転寿司こそは最強のファストフードだと思っていた。ところが、どこかの目立ちたがり、承認欲求の間違った人たちが起こした一連のぺろぺろ事件のせいで、寿司が回らなくなってしまった。
一皿ずつ注文し出来たてが出てくるのがメリットかというと、そうでもない。実は素早くチャチャっと飯を食いたいというニーズには、全く対応できなくなっている。一皿注文して商品が出てくるまで5-10分かかることもある。やれやれだ。
と嘆いていたのだが、なんとついに皿が回り出していた。めでたしめでたし、と思ったがよくよく見るとお安いネタの皿だけが回っている。注意書きを見ると、いわゆる「旧100円皿」だけが回転レーンに乗っているようだ。300円とか400円のお高い皿は注文しなければいけないらしい。まあ、普通に考えてもお高い皿は需要が少なめだから、鮮度管理を考えれば回る対象にはならないはずだ。
それはそれで納得できる。個人的には好みの商品が安い皿に偏っているので、もっとじゃんじゃん回してほしいものだ。

と喜んでいたのだが、好物のサバをたのんで出てきたのが、尻尾が乗った寿司だった。左と右を比べるとわかるが、どちらもサバであることは間違いない。部位の差だけだ。ただ、尻尾を食べさせられるのかとちょっと悲しくなる。
こういう部分は、何か別のもの、例えば巻物の具材にするとか、サイドメニューの酢の物に使うとか、工夫してもらえないものだろうか。ロス削減できっちり使い切るというのは理解できるが、食べ物には見栄えが重要だろうと力説したい。
まあ、食べてみればふつうにおいしいのだが。

イカは不漁つづきのせいですっかり高級ネタになったはずだが、今でも低価格帯で頑張っていた。逆に低価格の典型ネタだったタコは、世界的にタコ不足らしく、すでにイカのレベルを超え中級ネタから高級ネタに迫る躍進ぶりだった。タコ好きとしてはかなり厳しい世界になっているのが悲しい。
今やタコは海で獲るものではなく、海で育てるものになりつつあるようだ。一山当てる気があれば、タコの養殖業は成長産業になるだろう。

海鮮ユッケという軍艦巻きがあり、これがまさに魚の端っこをミンチにしたような具材だったが、予想外にうまい。なんの魚が使われているかはわからないが、混ぜると美味いの典型例だろう。ユッケというだけあり、コチジャンなどの辛味に、なぜか長芋のとろろが混じって、ネバネバ系な感じも併せ持つ「不思議寿司」だった。が、これはすっかり気に入ってしまった。もう一度食べてみたい。ただ、中身は今回とは違うだろうなあ。
サバの尻尾の有効活用は、こんな仕立てにしてもらえるといいのだが。

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お盆の終わりに旨いもの

今年のお盆が15日で終了したと思ったが、どうやら16日もお盆モードが続いているらしく、新宿歌舞伎町の人出はなかなか壮観なものだった。そこをちょいと避けて西新宿で一杯やることにした。最近おきにいりの居酒屋で、冷たい日本酒を飲みながら何か美味いものを食べようと企んだ。

珍しく弘前の銘酒『豊盃』が入っていたので、迷わずこれを注文した。地元弘前でもなかなか手に入らない酒だが、たまに都内でも売っていることがある。酒らしい酒だと思っている。好みなのだ。岩手の『あさ開き』と合わせて、我がお気に入り日本酒のツー・トップだ。ちなみに、あさ開きは純米より大吟醸がうまいと思う。

なかなか珍しい大山鶏の串焼きをセットで頼んだ。普段は食べないぼんじり(しっぽ)が入っていたが、これがなかなか美味であった。食わず嫌いだったかなと反省した。

豚のステーキという、これまたストレートな食べ物だが、確かに塩焼きにした厚切り豚肉はうまい。火加減、塩加減で勝負するストロングスタイルな料理なので、調理人の腕前次第ということだろうか。

居酒屋のピザは美味い。主食の食べ物としての旨さというより、濃厚なチーズが生み出す、脂とアミノ酸たっぷりの、人類種にとってDNAに直接響き渡る旨さだからだろう。どこの居酒屋でも小ぶりなサイズで出てくるのは、やはり珍味、酒の肴としての立ち位置を守っているからだ。
これが、宅配ピザのような大きなものであると、あまりに味が強すぎる。アメリカンなピザは脂分の少ない?チーズをたっぷりかけ、チーズで腹を膨らませる食べ物(主食)なので、やはり日本酒には合わないと思う。日本的に改良された居酒屋ピザが冷たい日本酒によく合う。

という感じで、お盆の最後は魚抜きの肉食系ご馳走(居酒屋バージョン)を堪能したのであります。

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真っ当な食べ物

ひさしぶりに幸楽苑に行ってきた。これでも零細株主なので、毎年6月になると株主優待券が送られてくる。昔は紙の商品券みたいなものだったが、今ではデジタル対応でラインのクーポンに変わっている。ラインというアプリの特性上、ダウンロードしてから使わずに放置していると、画面のずっと下側に消えていって、いざ使おうとすると探すのが大変だ。という苦い経験を何度もして学んだのが、幸楽苑の電子優待券は、もらったらすぐに使ってしまうに限るということだ。

おまけに、今年の株主総会で、すでに引退したはずの先代社長が、社長兼会長で現役復帰した。おどろくべきことだ。ユニクロでも後継者に譲った経営を、結局は創業者が社長として復活した例もあるが、お家騒動ということでもないようだ。
要するに、二代目の社長は相当なキレものでなければ、後継者としては認められない。先代に足元を掬われるか、クビになるという運命が待っているということだ。これはヤマトの昔から政治の世界では当たり前で、戦国時代でも親子騒動は引も切らない日常茶飯事だった。お家が潰れれば自分の首も飛ぶ(物理的に)のだから、それは必死にならざるを得ない。それでも二代目が亡国の主人だった例は一山いくらの大安売りで存在する。
現代の経済社会でも、クビになる二代目の多いこと。最近では中古車販売の会社が、親子ともどもポイされたケースはちょっと珍しいが、創業者一族がクビになるのもよくあることだ。

さて、経営トップが変わって、店の運営は何か変わったのかと思ってランチの時間に行ってみた。席は満席だったので、なかなか繁盛しているみたいだ。ただ、家族連れは非常に少ない。高齢者カップルと単独男性が目立つ。オペレーションでは、水がセルフではなくなっていた。ただ、「二杯目からはご自分で」と言われた。これも珍しい対応だ。この一言を全員に言う手間を考えれば、昔のようにテーブルに水ポットを戻す方が合理的ではないか。
メニュー(タブレット)を見たら、随分とシンプルになっていた。色々あった「不思議系メニュ」がバッサリなくなっていた。価格ラインもシンプル化されている。この辺りが、新社長の最初のやり方、改善なのだろう。
冷やし坦々麺を注文した。見栄えはよい。立体感がある。味付けは濃厚というか、かなり濃い味に仕上がっている。同系統の冷たい麺である冷やし中華のさっぱりとした味と全く別方向で、胡麻の効いた濃厚スープが「濃い味」好きを取り込むだろうと思った。真っ当な商品という感じが強くする。この三年間の残念な新商品と比べると、その差は明らかではないか。

コロナの間は、やはり試行錯誤というか、迷走が続いていたラーメン業界だが、ようやく1000円越えに挑戦する「価格の天井」突破の取り組みが始まっている。その中で、低価格で高頻度客創出を狙っていた幸楽苑が、その昔の戦略に戻るのか、それとも高価格帯へ移行して新世界を目指すのか、ちょっと楽しみになってきた。
社長が変われば会社も変わるという典型例に見えるが、気になるのはその新社長の年齢くらいだろうか。生涯現役、の時代なのかもしれない。

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お盆のファミレス その2

ファミレスの話の続きになる。最近、新メニューで登場したのが、居酒屋のつまみ的なハーフサイズの単品提供ものだ。通常のグランドメニュー商品が、価格を上げすぎて販売不振なのだろうと推測している。
対抗策として出現しているのが「鳥肉だけ」「つけあわせなし」「少量対応」の安く見えるメニュー導入だ。通常、この手の低価格メニューは追加の一品として、単価向上、売上点数増大を狙うものだが、明らかにその機能は果たしていない。
一番の売れ筋、値段がお手頃な商品であるはずの(あるべきな)、ハンバーグにあれこれサイドアイテムが盛りつけされたプレートが、1000円前後の高価格帯商品になり、販売数が減っているのだろう。
主力商品であるプレートの値段を下げるわけにはいかないので、苦肉の策で唐揚げ3個400円台にしてみたら、そこそこ売れてしまいました、的な結果になったようだ。おそらく想定外なことに、唐揚げ3個+ライスみたいな注文が大量に出てきたのではないか。
コロナの間に昼飲みを推進してみたら、ジジババの低価格居酒屋になり、結果的に平日ディナー帯の通常営業を邪魔することになってしまったようなものだろうか。低価格の追加品が値上げ効果を打ち消す、客単価を押し下げる存在となってしまったようだ。
これは典型的な自分勝手な読みで自滅するケースで、困ったマーチャンダイジングになりかかっているのではと疑っている。

ハニーマスタードは好物だが、日本市場ではウケ狙いとしても弱すぎる気がする

この日に注文したのは、鳥料理の単品を二皿だけだ。ドリンクバーなし、ライスorパンも頼まずに「鳥だけ」の注文だ。完全に業務上の試食モードになっている。当然ながら食事を楽しむというより、料理の品位確認、価格対比と批判的な視点になる。
タブレットで注文するから、「唐揚げ単品」のみを注文しても、「ごいっしょにライスはいかがですか?」 という呼びかけはない。
客の立場からすると面倒がなくて、それで良いとは思うが、店の立場からするとみすみす売り上げを引き上げる機会を喪失していることになる。
タブレット注文はオペレーション合理化の重要技術だ。ただ、販売技術としての推奨販売ができないという欠点を併せ持つ。合理化によるコスト削減と合理化による売り上げ低下は、大きな矛盾する課題であるが、現在進行形で拡大が続いている。
現時点で外食産業における機械化は、その両方に対応することはできない。合理化の最先端技術として一気に拡大している猫型配膳ロボットも、一台しか稼働していなかった。注文した料理は全て人の手で運ばれてきた。どうやら、ロボットもお盆休みを取るようだ。

これがサイゼ〇〇対策だとすれば評価できそうだが、単純に居酒屋の鉄板焼きメニューでは?

低価格帯ファミレスで圧倒的なオペレーション力を持つサイゼ〇〇と比べると、このスキレットタイプ鍋を使った鉄板料理は、明らかに見た目が貧弱だ。低価格居酒屋のつまみ料理としては成立するかもしれないが、ファミレスの客には受け入れがたいというか、無理な感じがする。鶏肉のグリルの脇には何もない空間があるだけ。彩り野菜もなければ、鶏肉自体も見た目の変化がない。
鉄板料理はビジュアルの変化をつけなければ、実に安っぽくなってしまう典型例だろう。これが許されるのは、低価格居酒屋の「一軒目〇〇」か「て◯ぐ」くらいだ。
インジェクションしたチキンは諦めるとして、鍋の底に溢れる油の多いのには閉口する。ソースも生煮え感が強すぎる。
何か料理としての設計が間違っているのではないかと思うほど完成度が低い。ただ1000店を超えるファミレスチェーンで、その手の失敗は考えにくい。となると、これは設計の間違いではなく、現場での加工や調理工程にミスがあるのだろうか。
あれこれ職業的な疑問は深まるばかりだが、所詮400円台の低価格メニューだし、目くじらを立ててクレームするほどのことでもない。普通の客であれば、次からはこの鉄板料理を注文しないか、あるいはもう少し感情的になっていれば、当分の間この店に来ないという静かな対応になるだろう。

アフターコロナの時代、客が戻り始めても現場の疲弊と混乱は一向におさまらないようで、経営者はこれを見逃しているのか、見放しているのか。それを聞いてみたいものだ。

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お盆のファミレスで学ぶこと

見た目が貧弱すぎて、安価でもコスパを感じさせない?

お盆になると外食は夏の最盛期を迎える。特に地方都市は帰省で膨れ上がった家族連れが、普段よりはちょっとお高めの買い物をしてくれる。盆と正月というのは、掻き入れ時に間違いない。だから、当然ちょっとお高い贅沢系メニューがお盆限定で設定されるのは、業界常識だと思っていたのだが、どうやらそれはすでに過去のものらしい。
「夏のメニュー」をみてみたが、お高いメニューで目立っていたのは鰻丼くらいだ。ただ、これはすでに丼系ファストフードでは10年来の夏定番メニューであり、ファミレスで食べたいメニューであるかどうかは大いに疑問がある。ファストフードでのちょっとぜいたくな「孤食」として、鰻丼は成立する余地がある。すでに定番化した、夏の客単価増大メニューだろう。
最近では、それに和牛焼肉丼みたいな更なるアップグレード丼も登場している。本来ファミレスが狙うのであれば、そちらの方ではないかと思うのだが。
逆に定番メニューで目立ったのが「半量」にして値段を下げたメニュー群だった。これも狙いは、あれこれ色々食べたいというニーズに対応して、注文点数を引き上げるため、あわよくば通常メニューに追加として注文してもらいたい。単価、点数ともに引き上げようという目論見だろうとわかる。
しかし、ハンバーグを鉄板ではなく、皿に盛って出すとは、何か勘違いをしているようだ。明らかにチープに見える。
値上げのせいで1000円を超えるハンバーグ鉄板プレートを、あまりに高いと注文をためらう層ができてしまった。その価格不整合を感じる層が、しぶしぶ安い単品メニューに移行していくでは………と勘繰ってしまう。追加注文を期待した挙句、低価格品へ下方スライドされてしまい、客単価の低下を招いたとしても不思議ではない。

冷麺  彩り三元色は配置されているが……

「夏のメニュー」として堂々と正面突破しようとしたらしい、「冷麺」も値段とルックスのバランスが悪すぎる。もはやファミレスの王道とは何かを見失っているとしか言いようがない。
個人的に冷麺は好物だし、あちこちの焼肉屋では、勝手にランキングをつけるほど冷麺については一言持っているのだが、どうもコメントつける気にもならない。
もし、夏に冷たい麺を出して、おまけに高単価で販売したいのであれば、三輪そうめんや秋田稲庭うどんなど、高級麺を使用して豪華トッピングで食べさせるとか、冷やし中華発祥の地仙台の中華料理店のように、完全別トッピングで豪華版冷やし中華を作り出すとか、もっと違うやり方があるように思う。出雲そばや出石そばのような、少量多品種型蕎麦での展開もあるだろう。手間は増えるが、単価は上がるはずだ。

平成初期に、業界最大のファミレスチェーンであったスカイラークが、全面的にガストへの業態転換を図った。昭和のコンテンツであるスカイラークが、平成に合わせた新コンセプトであるガストに転換をしたという点で、当時の経営陣の危機感がよく理解できる。まさにガストの出現は、外食業界のパラダイムシフトだった。
そして、アフターコロナのこの時期、おそらく平成で疲弊したファミレスのコンセプトが、新しいパラダイムに移行するのだろう。今はその産みの苦しみの時期と言える。
コロナ後の混乱がおさまらないファミレス業界で、次の業界標準を生み出すのは誰になるのだろうか。少なくとも、ファミレス御三家と言われたビッグネームではないことは確かだ。
カテゴリーキラーとしてファミレスを追い落とす勢いだった回転寿司も失速しているし、洋物ファストフードは領域を広げるより自分の陣地を深掘りすることに決めたらしい。和風ファストフードは、まだまだ混乱したままだ。丼屋から定食屋への転換は、オペレーション負荷が高すぎると思うのだが。
じわじわと地方都市で勢力を広げる、郊外型喫茶店が、ファミレスに変わって次の時代の後継者になれるかもしれないと感じている。ただ、軽食に限定された商品提供とコスパの問題はある。車社会に特化して対応した立地は、逆に客層を選別する危険もある。
アフターコロナで再開するであろう、米国市場の研究とコンセプト移入もこの先の刺激材料になる。少なくとも、反面教師にすらならないファミレス群が、新しい時代のパラダイムに合わせて再構成できるとも思えない。となると、次代の主力を探す試みをサボってはいけないなあと自省している。
というのが、お盆の研究成果であります。