
京都と聞くと「雅」とか「伝統」とか、これまたステレオタイプな印象しかない。料理で言えば京懐石みたいなちまちまと美しいものを思い浮かべるか、湯豆腐のようなシンプルの極みを思い出すかだ。だが、実際に大衆的な食堂で食べることであれば、京都のラーメンは福岡を超える濃厚豚骨スープだし、京風おこのみ焼きも本場大阪を超える濃い味だと思う。いや、お好み焼きのギトギト感という点で言うと京都の方がすごい。
ただ、京都市内の街角にあるパン屋さん、ベーカリーというよりブーランジェリーという方が似合っている感じがある、おしゃれなパン屋ではまさに京都風と言いたくなるパンに出会うことがある。おしゃれ感の方向が他の大都市のパン屋とは良い意味で違っている感じがする。京都のパン屋巡りをしたことがあり、なかなか楽しい経験だった。

だから、京風メロンと書かれたパンを見つけた時は思わず手に取ってしまった。そのままカゴに入れた。あとで、袋を開けて取り出してから、なんとなく違和感があるぞと思った。袋をよく見ると「メロンパン」とは書いていない。実際のパンを見ても、あのメロンパン特有のザクザクした生地ではない。形も丸ではなくラグビーボール状だ。食べてみると生地はほんのり甘い、そして、真ん中に白あんが入っていた。なるほど、メロンパンではなく「メロン」風な味のパンだったのだ。
製造元の山一パンのサイトで確かめると、「さくさくメロン」と言う一般的なメロンパンは別に販売されている。京風メロンは、京都吟味百撰に選ばれている「折り紙つきの京都の食べ物」だった。やはりこれは畏ってありがたがるべき食べ物だったらしい。このメロンの他に、黒豆のパンやあんぱんも認定されている。うーん、京都はパンにすら格式をつけるのだなあ。なんか、すごい。