食べ物レポート

蓬莱の食堂

大阪近郊で豚まんといえばホウライで間違いはなさそうだ。少なくとも、百貨店地下や駅構内にある販売店を見る限り、どこの店でも行列が絶えない。新幹線の駅にある店も、お土産にこの店の豚まんを買い求める客の長い列は当たり前の光景だ。
ただ、豚まんのテイクアウト専門店というわけではなく、何ヶ所かレストランを併設しているところもある。
難波にある本店には、一度だけ晩飯を食べに行ったことがある。食べた感じは普通に美味いだったが、やはり大阪系中華料理店の特徴なのか、味付けが甘い。ただ、大阪と東京でどちらの中華料理店が美味いかという話をするつもりはない。
大阪にしろ東京にしろ、日本の中華料理はインスパイアード・チャイニーズ・フード、中華料理に影響を受けた日本料理だからだ。本場の味の再現より、地域の嗜好の差が当然強い影響を持つ。特に、甘さ、酸っぱさ、塩辛さなどの好みが地域ごとに違う。だから、この国には中華料理の「標準」などあるわけもなく、たまに本場中国で学んだみたいなシェフがいたとしても、あくまで日本料理のカテゴリー内の止まってしまうのだと思っている。
そもそも中華料理で使う調味料、例えば醤油が日本のものであれば、それはやはり日本的な味付けになる。酢なども典型だろう。だから、中華料理はそれぞれの地元の味を楽しめば良いのだ。ハワイで食べた中華料理も、エビと合わせた野菜は青梗菜ではなくブロッコリーだった。地元で出に入る食材で仕上げるのが中華料理の本質なのかもしれない。

ちなみに、いつでもどこでも注文する酢豚だが、その甘さ、酢の加減で地域特有の味になっていることが多い。これが楽しみだ。おまけに具材が、これまた地域によって変わる。豚肉の唐揚げと玉ねぎは標準的食材のようだが(豚がなければ酢豚にはならないし)、これに「パイナップル」が入るのは東日本に多い。西日本で見つけたのは「きゅうり」の入った酢豚で、これはきゅうりの歯ごたえが面白かった。地元の街では、中国残留孤児引揚者が経営する中華料理店が多い。帰国後の研修施設があったせいだ。その店では味付けが、おそらく大陸のオリジナルに近いのだろう。また日本的変化を起こしていない、強烈なものが食べられる。チャーハンですら目を見開く味だったりする。そのみせのひとつではマンゴー入り酢豚を食べたことがある。マンゴーはなかなか美味い。シンガポールあたりでありそうなメニューだった。


筍、椎茸、キクラゲなどは日本全国あちこちで使用されていた。ギョウジャニンニクが入っていたこともある。ピーマンやにんじんが彩りとして使われることも多い。それと比べると、このホウライの酢豚がなんとビジュアル的にストロングスタイルであることか。
おまけにスプーンがついてきたということは、酢豚の餡もすっかりお召し上がりください、ということだろうか。食文化の地域差は、いつも面白いものだ。

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