食べ物レポート, 旅をする

厚切りの刺身がハードすぎる

鳥取島根を根城に展開している居酒屋チェーンがあり、その鳥取駅前にある支店にふらりと立ち寄ってみた。なんともにぎにぎしい店頭だが、元気な居酒屋はこんなかんじなのだ。
入り口前に教室で授業に使うようなホワイトボードが置いてある。そこには本日のおすすめがびっしりと書いてある。なぜにホワイトボード?と思ったが、夜になれば黒板は見ずらい。よく考えられている。

店内は相当賑やかだった。居酒屋で特有な従業員の掛け声、これが結構すごい。おまけに客の中には子供連れのグループもあり、子どもの声、親の声、おまけについてきた爺さん婆さんの声が入り乱れている。これを賑やかだというか、喧騒と捉えるか。
まあ、お通夜のように静かな居酒屋も気持ちが悪いので、これはこれでよしとしよう。
カウンター席であれば一人で静かに酒が飲める。と思っていたら、さすがに人気店であっという間にカウンターも満席になってしまった。カウンター席で大声を出す客はいないのが救いだ。
メニューを眺めていると、やはり見たことのないものが並んでいる。遠くに来たのだなという感じがする。サワラのたたきは珍しい。サワラは関西以西の食べ物だと思うのだが、瀬戸内海一帯から日本海北部まで食されている。昔はサワラが獲れるのは新潟あたりまでだったのが、今では秋田の北部まで広がっているようだし、この前に聞いたニュースでは函館沖でも釣れるらしい。
サワラが北上すればするほど、西国の食文化が広がる。人の移動だけではなく気候変動も食の進化を促す時代だ、やれやれ。ちなみにここ数年、北海道でもえりも岬沖で酒が取れなくなり、その代わりのようにブリが大漁らしい。北海道の人はあまり鰤を食べる習慣がないので、下魚扱いのようだ。

名物の刺し盛りを一人前にして頼んだ。普通は三人前くらいのギョッとするほど盛りの良い刺身盛り合わせが人気の店だそうだ。一人前の一皿を見て、その身の厚さに驚いた。お江戸のペラペラ系刺身を見慣れている身からすると、この厚みはぶつ切り級に見える。すごいぞと喜んで食べ始めた。すぐに、厚切りの欠点がわかってしまった。歯応えのある新鮮な刺身を分厚く切ったものは味が強く感じる。一切れ目はすごく良い、が二切れ、三切れと食べ進めると急速に満腹感が押し寄せてくる。
身の量というより、魚の味の濃さに圧倒される。生の魚はもうご馳走様という感覚になる。よく考えれば、この刺し盛り一皿(一人前)は、ステーキに匹敵するくらいの肉量なのだ。自分の体力(食の限界量)も減っているから、食べ始めの早い時期に体が正直に反応するらしい。普段はイカだのタコだのという軽量級で低カロリーの刺身を好んで食べているせいで、この豪速球なカンパチやらサワラやらというサカナサカナしたラインアップに、強烈な一撃をくらったということになる。

もう少しあれこれ頼んでみようと思っていたが、この日は刺身だけで早々とギブアップになってしまった。鳥取の刺し盛り、破壊力抜群でした。
それよりなにより、箸袋の一言が……………好きだなあ。また行きたくなる名店でありました。

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