
テレビのニュースで見たことのある「すなば珈琲」に初めて行くことができた。スタバと語感が似ていることでニュースネタになっていたのだが、いざ鳥取に来てみるとすでに何箇所も支店が出ている。地域の有名店ではないか。
お江戸ではもはやすっかり消滅業手認定されている喫茶店だが、それに置き換わる形で拡大しているのが、スタバやドトールといったセルフサービス式の新型カフェだ。いまや代替し他業態の方が栄えている。盛者必滅という平家物語みたいな世界なのだ。
ところが、地方都市ではまだしっかり喫茶店が文化拠点として残っているところが多い。青森県弘前市は喫茶店の街だと自己アピールしている。尾張名古屋でも喫茶店は前全開バリバリだ。人口が少ない高知でも市内にはかなりの密度で喫茶店が健在だ。高知の味噌汁付きモーニングというのはなかなか楽しい。(残念ながらお値段は牛丼より高かったりするが)

さて、鳥取のすなば珈琲だが、これは非常に水準の高い喫茶店だ。喫茶店とカフェの違いは何かと言われると、ちょっと説明が微妙になる。個人的な定義を言うと、パフェがメニューにあれば喫茶店、ラテとかフラペチーノしかないのはカフェだ。なんちゃらマキアートのような限界突破した甘いドリンクもカフェの特徴で、ミックスジュースやミルクセーキのような懐かし系甘いドリンクは喫茶店のものだ。

そう言う意味で言えば、すなば珈琲は喫茶店というよりカフェだ。ただし、本格的な食事が食べられるという意味では、カフェではなく古典的喫茶店なので、どうも喫茶店とカフェの中間形態らしい。名古屋圏発祥のコメ◯珈琲や元ファミレス経営者が展開する首都圏郊外の高◯町珈琲にコンセプトは近い。アッパーな珈琲店は、サンダルばきで行ってはいけないような気がするのが特徴だ。すなばコーヒーはお気楽に入れるが、Tシャツ・短パン・サンダル(男性バージョンです、女性バージョンは分かりません、ジェンダーを意識しない場合は……………各自のご想像にお任せします)はちょっと恥ずかしいという感じだろうか。
店内は明るく落ち着いた雰囲気だが、QRコードでの注文もできるしデジタル対応もしっかりと進んでいた。(ここが喫茶店らしくない……………)

何よりコーヒの味が濃いめというのが良い。シアトル系コーヒーも味は濃いが、あれはどうも日本人向けのブレンドとは違う(単にノスタルジーだけで判断している)気がする。酸味が薄く苦味濃厚な、フレンチロースト系深煎り豆をたっぷりと使った珈琲が好みなので、極めて個人的見解であります。
好きな本を読みながら、グビリと飲むコーヒーは大きめのカップにたっぷりと入っているのが良い。マグカップではなくコーヒーカップだとなお良い。おかわりサービス(有料でも可)はぜひお願いしたい。できればお茶請けのように小さめのクッキーが一枚ついているともっと良い。
コーヒーに柿の種は合わないと思うが、なぜか名古屋圏ではおまけに豆菓子がついてくる。あれはあれでありがたいが、できればクッキーにしてほしい。
などなど、我が理想の喫茶店については細々としたお願い事項がたくさんあるので、この全条件を満たす店は存在しない。いや、かつては存在したが今では消滅してしまった。

美味しいコーヒーを飲み終わったら、カップの底からラクダが出てきた。ソーサーにあったラクダと同じ紋様だった。こんなところがちょっと気になるオシャレポイントだろう。すなばコーヒーが首都圏進出することを切に願っております。
鳥取県知事が、もし鳥取県立コーヒー文化供給公社を作ってくれたら、喜んで奉職いたします。