食べ物レポート

えきそば in 鳥取

旅に出たら駅そばを試してみようと思うことが多い。特に最近は、地の美味いものを探す気力もすっかり薄れているので(笑)、駅に降りるとついキョロキョロと立ち食い蕎麦屋や駅前のラーメン店を探している。残念ながら、駅前では立ち食いそば、ラーメン店どちらも絶滅危惧種というくらい減っている。代わりに蔓延っているのは、おしゃれなシアトル系カフェかベーカリーショップだ。
食の洋式化というより無国籍化が進んでいるせいだと思う。ベーカリーだろうがカフェだろうが、一番人気な商品は和洋折衷型に変容したものだ。抹茶ラテとかアンバターサンドが老若男女関わりなく人気なのだから、伝統的な食である蕎麦やラーメンが駆逐されるのも無理はない。
そのような個人的感慨はさておき、BS番組でローカル鉄道に乗って、駅周辺の麺類を食べ歩くというちょっと変わった趣向の旅ものがある。ローカル線に乗って酒蔵を訪ねるというのは某公営放送の人気コンテンツらしいが、そこをパクった?としか思えない。が、見ていて楽しいから良いのだ。酒好きで麺好きにとってはどちらも嬉しい番組だ。酒は飲まなければ味が想像できないが、麺は自分の過去経験を総動員すると、脳内で味の再現ができる。(と思っている)
都内の立ち食い蕎麦屋であれば、ちょっと時間を作って食べに行ってみることもできるが、この麺食い鉄道旅に登場する駅は実に遠い。簡単には到達できない場所ばかりた。青森県の津軽半島の先の駅だとか、四国の街外れにある私鉄駅だとか、中国地方の秘境駅近くのドライブインなどと、たどり着くには凄まじく難度の高い駅ばかりを番組では選ぶ。
その中でかなり印象に残っていたのが鳥取駅の「砂丘そば」だ。麺の印象よりも「砂丘」という言葉に引っかかっていた。

久しぶりの鳥取駅は綺麗に改装されていて、以前に利用していた駅舎とは全然異なっていた。新しくなった駅舎の隅っこの方にひっそりとこの店はあるのだが、中は意外と広い。立ち食いではなく座席がしっかり用意されている。
注文したのは、店名通りの砂丘そばだ。蕎麦は柔らかめ、つゆは甘い薄口で、おそらくアゴだしだ。西日本では標準的な仕様だろう。唯一砂丘らしい?のは、ご当地名物であるアゴ(飛魚)のちくわが乗っていることだ。これは実に歯応えのある竹輪で、魚の旨みが濃厚なものだ。
結論。なるほど、砂丘とは全く関係ないということがよくわかった。お江戸の立ち食い蕎麦屋で言えば、小諸そばとか箱根そばという地名をつけた店があるが、その地名に「鳥取」ではなく「砂丘」を使った点が、おそらく鳥取人のプライドみたいなものだと理解した。出雲で出雲そばといわず大社そばというようなものだろうか。(実際には、出雲そばと言っているが)
おそらく、お江戸でいえばスカイツリーそばだったりするのだろうし、千葉であればディ◯ニーランドそば(ネーミングライツだけで法的問題が起きそうだが)みたいなものなのだ。

普通に美味しい熱々のそばだった。従業員の方たちも親切だった。優しい味のそばと優しい人たちが、砂丘そばの中身ということだろう。満足。

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