
高知と岡山を結ぶ路線には「アン◯ンマン」のキャラ電車が走る。それも定時運行される特急だ。いつも高知駅ホームで西行きの特急待ちをする間、この赤い電車が止まっている。お江戸の私鉄でたまに走るコラボ系ラッピング電車とは異なり、こちらはいつでも走っている大定番の人気者だ。
そもそもアン◯ンマンは、エヴァン〇〇オンなどのキャラ界における新参者とは歴史が違う。JR東日本が好んでコラボする歴代人気キャラを見比べても、アンパ◯マンはウルト◯マンに匹敵する古兵で、これに対抗できるのは、青い直立歩行型猫ロボットくらいしかない。
個人的な見解だが(念の為に断っておく)今のアンパ◯マンファンは幼児ではなく、幼児を育てている親世代ではないかと思うほどだ。要は自分が子供だった時の思い出にどっぷりと浸り込む親世代が、自分の子供に対して共感を求めるという、なんとも微妙な構図だ。テレビアニメが開始されてほぼ60年が経ち、アニメ育ちの親世代はすでに三世代目に入っている。
冷静に考えれば、幼児向けキャラビジネスとは親と子の無限ループが続く、超安定ビジネスモデルではないか。もっと早く気がつけば、きっと違う仕事をしていただろうになあ。今更気づいても遅すぎる。(反省だ)
ちなみにこの列車を見て興奮している子供は見かけたことがないが、興奮している親はたくさん見た(笑)
とりあえずキャラ列車を探して旅をするのは、なかなかに楽しい。

最近月に一度のペースで仕事に行く漁師町の駅は、相当に写真写りが良い美人駅だ。赤い自動販売機がちょっと邪魔だが、この自動販売機は日本中のありとあらゆるところで風景写真に映り込んでくる悪者で、例の黒い嫌われ者「G」に匹敵する写真世界の無法ものだ。すでに現代日本の原風景化していると諦めるべきなのかもしれないのだが。
日本各地に伸びるローカル線では、こうした味のある駅がまだまだたくさん残っているが、その歴史的建造物に対してJR各社はリスペクトが足りない。文化遺産として、あるいは観光資源として利用しようという意識も薄い。すでにJR各社は鉄道事業から「旅客囲い込み周辺ビジネス」に軸足を移しているので、本気を出すのは駅構内の商業施設と駅周辺のホテルビジネスくらいだろう。この駅も無人化とともに譲渡対象?らしい。もったいないなと思う。

駅舎からホームに行くには緩い坂道を登るだけで、階段を上り下りする必要もない。ホームの上から単線が伸びるのがよく見える。JRグループが春、夏、冬の時期に限定発売する青春18きっぷのポスターにはこんな風景が使われる。
日本国中にじわじわと蔓延していく「新幹線駅」では、旅情を誘う風情はならないだろう。東北北海道、上越、長野北陸、東海道、山陽、九州、各新幹線の駅を思い出して見ても、美しい駅と言えるのは金沢駅くらいだ。
それ以外の駅は1号東京駅型(大きすぎてよくわからん)、2号 仙台駅型(箱型駅ビル)の2形態しかない。新大阪、京都、名古屋、博多などは1号型で、広島、熊本、静岡、長野などが2号型といったところだ。今度できる(某退任知事のおかげでいつ出来るか今だにわからん………)新・新幹線はそもそも駅が地上にできるのだろうか。名古屋駅は深・深度地下駅になるはずだし。

ただ、ローカル線の旅をやってみるとわかるのだが、実際に車窓から見える光景の大半は山の中で、線路脇に見えるものは、木・木・木、たまに民家。そして、木・木・木・木・木。たまに一瞬だけ海、みたいなものだ。例外的なのは東海道周辺だけで、首都圏でも東京駅から30kmほど離れると(時間にして普通列車で1時間程度)、畑と木と山に囲まれる田園風景になる。
だから、こんな写真の光景を見たいと思えば、意外と簡単に辿り着けるので、わざわざ飛行機に乗って鉄道に揺られて2時間かけてきました………みたいな難航苦行をする必要もない。
ただ、この町には日本一美味しいカツオを食べられるという、おいしいおまけがある。崇高なミッションを持って旅をしたいという鉄旅上級者向けの場所なのだ。いわば美味追求の巡礼地であり、カツオ食いの聖地でもある。乗るだけではない鉄道旅の楽しみ方としてローカル線巡礼旅おすすめであります。