
高知空港にはほぼ毎月通っている。高知でのお仕事が定期的にあり、月初には高知にいることが多い。その高知空港で手荷物引き取りのため出口に向かうと、なんだか新作ポスターが貼ってあった。ド派手なポスターだなと思いながら、つらつら眺めてみると、そこにはなんと長いおつきあいになる先輩の姿があるではないか。ああ、びっくりした。この方とは、今回も楽しい夜を過ごさせていただくはずだが、確かに写真の通りに「飲むには良い店」「宴会向きの店」の典型なのだ。
そういえば、高知で飲んで深刻な気分になったことはない。いつでも大口を開けて笑い転げている記憶しかない。ともかく明るいところなのだ、高知は。

その店がある漁師町の有志がクラウドファンディングでカツオ叩き巨大サンプルを作り、手荷物を引き取るターンテーブルに乗せて、カツオの本場高知をアピールすると言い始めた。それは面白いなあと思っていたら、ついに実現していた。
クラファンが目標額に足りなければ、それなりにお手伝いしようかと締め切り一週間前に確認してみたら、なんとすでに目標達成していた。すごいものだ。若さの熱量……みたいな言葉が思い浮かんだ。結局、達成したお祝いにと、気持ち程度の支援をさせてもらったが、あちこちでクラファンによりイベントやらオブジェやらが出来上がるのは現代風の慈善事業?と言うか、「推し活」と言うことなのだろう。ちょっと前の公営放送番組、日曜夜の歴史ドラマで幕末の野心満々なおっちゃん(お札になった人)がやっていたことは、これの大規模版だったのだろう。
かたや税金を湯水のように垂れ流し不評を買った東京オリンピックや、現在進行形で税金の無駄遣いと言われる不人気万博などをみると、官製プロジェクトのダメっぷりが余計に目立つ。そんなにやりたければ、自治体がクラファン募集してクズな博覧会でも国際運動会でもやればいい。ただ、絶対に目標額は集まらないと思うが。

そのクラファンの流れで、空港にある食堂に「カツオの漬け丼」と言う旨いものが導入されたそうで見学に行った。高知で食べるカツオはお江戸で食べるものと、明らかにものが違う。航空券を買って旅をして食べる価値があると、熱を持って友人に話したりするが、いつも鼻で笑われる。「食べてみなければわからない体験」なので押し付けるつもりはないがついつい熱く語ってしまう。高知のかつおLOVEなのだ。
個人的な職業経験から判断するに、高知人のカツオ愛には高知人独特のかなり厳格な指標があり、高知人以外には理解し難いハイレベルな選別が行われているようだ。まあ、だから日本国太平洋岸のどこでも取れる「カツオ」が、高知では特別視されている意味がわかる。まさに当然ながら「食べたらわかる」と言うことだ。高知人以外には、聞いただけではよくわからない難解な愛情表現であることに間違いはない。

高知人のカツオに対する宗教的なものに近い愛情はさておき、基本的に高知人の気質は日本人には珍しいラテンなものらしい。高知の友人に言わせると、どうも大軍を率いる大将になっても、ドンキホーテ的な大将一騎駆けが好きだといことだ。後ろに陣を構えて全体指揮を取ると言うのは、高知人的なスタイルではなく美学には合わないらしい。そして、困ったことに、そうした先頭を走りたがる大将を補佐する二番手も、大将の後に続いて一緒に先頭集団で走りまくるらしい。
ビジネス的にいえば(笑)危機管理が全くできていない。No.1とNo.2が連続して討ち死にしたら、もはや軍の体裁を成さないだろうに。まあ、愛すべき高知人気質というべきなのだろうな。
そんなラテン系の血が騒ぐのが夏の真っ盛りに行われるよさこい祭りだ。ただ、この時期の高知は殺人的な暑さなので、実はこれほど有名なイベントをいまだ見に行ったことはない。
応援する踊り子集団が演ずる群舞を見て興奮してしまい、熱中症になるのは間違いない。だから月例の高知出張も、8月はお休みにしたくらいだ。

そのお祭りの主役ともいうべき鳴子(巨大バージョン)も飾ってあった。その横には空飛ぶリョーマらしき人物のパネルがある。よくみると、なんだか不思議な漢字が書いてあるので、どうもインバウンド対応らしい。ついに高知よさこいがグローバルになる日が来たかと思うと感慨深いが、それでもリアルに見に行く気にはならないのが…………