
高速バスで長時間移動すると、2時間おきくらいに休憩がある。運転手の疲労問題対策だと思うが、それ以上に乗っている乗客が旅に飽きてしまうからではないかと勘繰っている。
高速バスの旅は本当に景色が変わらず単調だ。当たり前のことだが、高速道路は人が通りもしない(できない)不便の山の中を走っている。用地買収を考えると山の中にしか作れなかったというのが本当の理由だろう。それでも初期に作られた名神や東名はまだマシなほうだ。多少共平地を走ることもあり、景観の変化がゼロということはない。ところが建設年度が新しくなるにつれ、山とトンネルばかりの道になる。だから休憩で止まるSA/PAの大半は車線の反対側に聳え立つ山を見るくらいのものだ。例外的にビューポイントはあり、当然人気スポットになっているところもある。お江戸の近くであれば中央道諏訪SAがその筆頭だ。海沿いで言えば東名の由比PAが良い景観官承知だし、浜名湖SAのなかなかのビューポイントだろう。
四国の高松から松山にかけて走ると、ぽつりぽつりと良い景色の場所があるが、瀬戸内ナンバーワンスポットはやはり瀬戸大橋からみる瀬戸内海の広がりだろう。しまなみ海道は、その道の名とはちょっと異なり意外と山の中をはしる。通過していく島内では山道ばかりだからだ。トンネルと抜けるとちらりと海が見えてまたトンネルに入るみたいなイメージがある。
そんな山とトンネルの連続を見飽きると休憩時間が実に楽しみになる。休憩の原則「出すと入れる」だ。つまりトイレに行き出すものを出し、売店で入れるもの、食べ物や飲み物を補給する。その時に、できればご当地限定のような珍しいものを手に入れたいと見て回る。それが実にたのしい。
ただご当地ものは現地人は誰でもわかるが、余所者には全くわからないという特性があり、商品の前で「これは一体どういうものなのか」と悩むことも多い。この「とりかわ」は、その典型例だった。レジ前に名物とかかれたPOPがあり、商品が山積みにされていた。とりあえず買ってみるかと思える安価なものだったから、中身を吟味もせず一つ手に入れた。
そのままカバンの中に入れて二、三日忘れていた。気が付いたのは帰りの飛行機の中、本を読もうとカバンの中を探っていた時だ。結局、ガーリック風味というのが気になり機内で食べるのはやめておいた。自宅に戻り食べてみると、これは確かに密閉空間で食べるのは傍迷惑になりそうな強いニンニク味だった。我が常識を褒めてあげたい。
味は、軽い塩味で鶏皮のチップスとでもいうべきだろう。カリカリ揚げた鶏皮だと思う。なんとも捻りのない名前だが、その名前の通りの商品なので文句のつけようはない。ただ、自分の人生でもう一度食べる機会があるかというと微妙だ。
高速バスの旅は、こんな非日常的な一期一会もあるので、なかなか楽しいのだが尻は痛くなるのが難点だな。