旅をする

空港の話

日本にある空港のほとんどは利用したつもりだったが、まだいくつか未利用の空港がある。北海道であれば女満別や稚内など道北の空港で、これはその辺りでの仕事がなかったせいだ。1日の発着便数を考えると旭川空港から車移動したほうが便利がよかった。
島根県の石見空港や秋田県大館空港も利用したことはない。離島となればそもそも行ったことがないので、まだ未利用の空港は20ヶ所以上あるはずだ。
そんな未利用空港の一つを制覇する機会があった。山口宇部空港だ。ただ、この空港が山口市と近接しているかというとかなり怪しい。空港のネーミングはリアルな地名というより、一種の商標みたいなもので冠された名前は地名とは限らない。

そしてこの空港は、我が新税の経験に照らし合わせても最貧弱なアクセス寛容にある。公的交通機関を使った場合、全く不便だ。羽田空港の利便さは例外として、大多数の地方空港では発着便に合わせてシャトルバスなどが整備されている。
この空港はそれがない。近隣の大都市下関からは、予約制の乗合タクシーがあるが、当日利用はできない。空港に隣接する宇部市の繁華街からはシャトルバスがあるが、そもそもその繁華街にアクセスする交通機関がJR西日本のローカル線で山陽本線(これも1時間に一本という低頻度路線だが)での乗り換えが必要だ。おまけに接続が悪い。
シャトルバスに乗り換えるくらいであれば、そのまま列車に乗って数駅先で降りると空港ビル入り口まで徒歩10分くらいだ。せめて駅名を宇部空港前にでもしてくれれば良いのだが、そのような斟酌は全くなく「地名」駅だ。
では、旅行者はどうするのだろうかというと、空港前に自家用車で乗り付けるのが前提となっている。確かに多くの地方空港は広大な駐車場を備えている。同県在住者にとってはそれが最大の利便性確保だろう。し・か・し・だ。観光客の足を全く無視している。レンタカーを使えば良いというのは、随分と傲慢な考え方だ。
単純に観光客を締め出そうとしている、無視しているとしか思えない。観光客誘致をインバウンドに頼るしかないほど、地元の観光振興策が貧弱、脆弱で整備がされていない。知恵もなければ努力もしないと酷評したいところだ。なぜ、こんな場所がNYTに上位で選ばれたのだろうか。不思議だ。
そんなことを考えながら、空港最寄りの駅から歩いてみた。良い天気で歩くのには気持ちが良い。空港脇の公園からは大勢の地元民があれこれと楽しんでいる歓声も聞こえてくる。せめて駅からタクシーにでも乗れれば良いのだが、そもそもタクシー乗り場すらない。やはり観光施策が変な県だと思う。

飛行機の搭乗時間と鉄道の運行時間が全くマッチしていないので、ギリギリの時間だと駅から走らなければならず、そうならないように余裕を持てば空港内で3時間待ちになる。
のんびりと食事でもしようと早めの時間に出かけたら、なんと空港での手荷物受けつけ開始が搭乗時間の1時間前という、これまた変則的に遅い対応で、空港内を荷物を抱えたまま歩き回る羽目になった。
それでも、食堂を見つけ何を食べようかとメニューをみていたら、サンプルケースの中にアニメキャラのフィギュアが置かれている。店長の趣味かと思ったが、それにしてもやたら体数が多い。このアニメの登場地(出撃地)に山口県があったか?と思い返しても記憶にない。そもそも、こいつらは富士山の麓に陣地を構えていて攻めてくる敵をギリギリ防衛する力しかなかったではないか。

不思議に思い空港内を彷徨して発見した。やはり宇部市がの街コラボみたいなことをやっていたのだ。饅頭や煎餅になっていたようだ。関係者の誰かがこの地域の出身者だったのかもしれない。

空港限定グッズも販売されているのだから、相当に力が入ったキャンペーンだっただろう。ただ、その努力は認めるが、空港で大騒ぎをする前に考えることがあるでしょうと言いたい。短期間滞在型の日本人国内旅行客に対しては交通機関の整備対応が第一で、移動の利便性を整えなければ旅行の目的地として最初に「不便」と決めつけられ落とされてしまう。
少なくとも山口県に隣接する各県では空港アクセスや都市間移動にはそれなりの利便性を確保している愛媛県、広島県、福岡県、このどこでも空港に行く足で困ったことはない。もっと高域に広げて岡山県、鳥取県、香川県、高知県全て同じように発着便と連動した都市間交通はできている。

商品が売れないのには売れないわけがある。観光地が流行らないのは、やはりそれなりのわけがあると、観光行政、業界の人は考えないものなのだろうか。

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