
随分前に大分駅に来た時は駅全体が工事中だった。今回来てびっくりしたのは、実に大きな駅に生まれ変わっていたことだ。個人的に思うことだが、JR東日本は駅を作るのが下手くそだ。正確にいえば、見栄えの良い駅が作れない。駅の風格というかデザインがダサダサすぎる。
評価できるのは東京駅、それも丸の内駅舎くらいだろう。明治時代の雰囲気で再現したのは素晴らしい。その目の前にある中央郵便局も立て直しの時に、時の総務大臣が元の雰囲気を残せと息巻いたおかげで、シックなものに仕上がった。同じ丸の内サイドで丸ビルを筆頭に高層ビルが立ち並ぶ光景は、皇居の周辺にあるから席のたいせの空襲を生き延びた、明治以降のビルを踏み潰して作られたものだ。そこをかろうじて踏みとどまった東京駅も、天皇行幸の際の乗り込み駅であるから原型を保たれたにすぎない。(勝手な推測です)
八重洲側の東京駅を見れば、そのセンスの無さははっきりとしている。東北新幹線の各駅は、まるで同じ設計図で作ったような見栄えの悪さだし、首都圏大都市駅も実にセンスが悪い。大宮駅、宇都宮駅、福島駅、仙台駅と新幹線主要駅を並べてみるとはっきりわかる。中央線で言えば八王子駅と立川駅、おまけに吉祥寺駅。みんな同じ顔ではないか。横浜駅に至っては、日本のサグラダファミリアだ。美しい建築という意味ではなく、いつまで経っても工事が終わらないということが共通点だ。この先100年は工事が続きそうだ。
それと比べてみればJR九州はなかなかセンスが良い。これまでいったことのある駅で、ナンバーワンは金沢駅、ナンバー2は高知駅だが、大分駅はナンバー3と認定しておこう。現代建築でありながら、鹿児島中央駅や長崎駅の終端感はなかなか良い。


ただ残念なことに、大分駅の駅名が小さい。デザイン重視なのだろうと推測はできるが、このサイズは小さすぎだろう。

その大分駅前にある繁華街で面白い看板を見つけた。九州味噌ラーメンなる言葉は聞いたことがない。九州のどこかで味噌ラーメンが名物だった地域があったかなと、九州の北から南まで県別に記憶サーチしてみた。結果は、「ない」だ。
いや、どこかに存在しているのかもしれないが、自分の記憶にないだけの不勉強モードかもしれない。
ただ、この字体、看板を見るとなんとなく千葉発祥の味噌ラーメン集団のものに似ている。おそらく、千葉の味噌ラーメン集団で修行して地元大分に帰ってきたというようなことではないか。

そこで味噌ラーメン(野菜増量)を注文してみた。なんとなくみたようなルックスだ。食べてみると安心の味噌味だ。つまり食べたことがある味なのだ。どうやら推測は当たっているらしい………
九州ラーメンは豚骨ベースが多いはずだが、今では日本のラーメン屋のほとんどが豚骨ベースを使用しているし、千葉発祥だろうが長野発祥だろうが、所詮、美味い味噌ラーメンはある一定の味に収束していく。
すぐれた味の味噌ラーメンが全国で多発的に並行進化したとも思えないので、いわゆるインスパイアー系としてコピー商品が広がるか、あるいは暖簾分けで本店の味が全国の地方都市へ伝播していく。それは決して悪いことではないし、味の良し悪しは客が決めることだ。
なんとなく入った「九州味噌ラーメン」の店で、あまり九州らしさは感じ取れなかったが、普通に美味しく食べられたのでなんの問題もない。それよりも、味の均一化、ナショナル化、グローバル化みたいなことに考えが広がって、ちょっとワクワクしてしまった。ニューヨークで売られている一杯3000円のラーメンも、やはり同じような味なのだろうか。などと、考えてしまった。
大分は学びの街だな。