旅をする

日曜市 in 高知

高知空港に降りて荷物を取りにターンテーブルの前に立っていたら、あれれと思うものが目の前を通り過ぎていった。丸のままの鰹が入った箱だが、いったい誰がこんなものを羽田空港で預けたのだ?
気になって、もう一周してくるのをまち注視してしまった。よくよく見るとフェイク鰹だった。なんとジョークな荷物サンプルということらしい。朝からちょっと和ませてもらった。

その後、高知市内に入り荷物をホテルに預けて日曜市を見にいった。午前中の日曜市は実に活気があって楽しい。狭い通りを挟んで両側に出店があるのだが、その商品のバラエティーがなんともにぎやかなのだ。
いつもの朝市で買う絶対定番、田舎寿司をまずは手に入れた後、地元産の柑橘類、それもハネものを物色して歩いた。朝市のあちこちでスーパーなどでは出回らない小ぶりな完熟ものが手に入る。店によって並んでいるものも値段もバラバラだから、一回りしてから買おうとすると、お目当てのものが売り切れていたりする。一期一会のことばをかみしめ、欲しいと思ったらすかさず買うのが日曜市の正しい楽しみ方だ。

その日曜市のはずれに骨董品店がある。市の日は路上にも商品を並べている。骨董品店によく立ち寄るには理由がある。骨董品好きということではなく、たまにとてつもなく珍しいものが売られているからだ。新品であれば数万円する皿鉢料理用の大皿が1000円で売られていたりする。以前は業務用に大皿をありったけ買い占めたりしたことがある。はすがに皿鉢の大皿は自宅で自分使いするには大きすぎるが、眺めるだけでも楽しい。
その骨董品店で、売り物ではなく「買い物」の広告が目が入った。「刀買います」と書いてあるではないか。足が止まってしまった。口が半開きになりそうだった。今の日本で刀を持っていれば、警察に登録しなければいけないのではなかったか。刀はすでに美術品扱いされているが、実際には実戦使用可能な携帯武器だ。たとえばご先祖さまの刀が蔵の奥に秘蔵されていたとして、それを売ろうとすると何やらとてつもなく面倒な手続きがいるのではないかと思う。

こんなの蔵から出てきましたけど、買ってもらえます?という具合にはいかないだろう。しかしだ、こうして刀買いますと書いてあるということは、実際に刀を売りにくる人がたまにいるのだろう。それを思えば、高知県はすごいところだと改めて感心した。ちなみに横に並んでいる鎧もレプリカではなく実品で、おそらく江戸期のものだろう。土佐は戦国時代終了後、掛川から来た占領軍、山内氏による支配を受けた。その家臣団のものではないか。戦国武具に詳しい方が見れば、そのあたりも楽しめるのだろうが、こちらは博物館のガラスケース内にある鎧兜しか見たことがないのでさっぱりだ。

日曜市を冷やかした後は、これまた定番のひろめ市場に出向いて何か食べようと思ったが、やはり日曜は朝から満員だった。無念に思いながら退散した。
この日、高知市内は春のイベント「土佐のおきゃく」で大賑わいだった。午前中から全開で酒を飲む高知県人で溢れるひろめ市場でも、入り口前に会場が設えられていた。やはり高知県人は基本的にハイテンションな民族なのだ。「おきゃく」の話はまた別稿で。

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