食べ物レポート, 旅をする

高知の至宝 葉牡丹

高知市内にある繁華街からちょっと外れた場所に、高知の誇るべき至宝と言いたい居酒屋がある。この店が高知に来る目的になっても良さそうなくらい、愛してやまない老舗居酒屋だ。
この店に初めて連れてきてもらったのは、15年くらい前のことだった。ビジネスの打ち合わせが終わった後で、取引先の社長が連れてきてくれた。何でも、高校生の頃から通っているという。いまではコンプラを含めあり得ない「悪さ」を許してくれていた時代だ。ただ、高校生でも酒を飲んだくれていたわけではなく、二十四時間営業の便利な食堂として使っていたらしい。
だから、初回に行った時の注文はカツオのたたきなどの高知名物料理はそっちのけで、野菜炒めにオムライス、ナポリタンという、まさに高校生爆食メニューだった。(よくそれで酒を飲んだものだと後になって我ながら感心した)

高知県内でこの店の名は轟いているらしい。高知県で成人するものの通過儀礼として、誰もがこの店での体験をしているようだ。いや、それに異議など全くない。良い店は世代を超えて継承されるべき文化遺産だ。ただ、この店が某ケンミンショーにだけは登場して欲しくないとは思う。今でも十分混雑している店だから、これ以上旅行者(自分を例外として)が押し寄せると店の前に行列ができそうだ。ましてや、インバウンド客が押し寄せる光景など想像もしたくない。
まあ、この店のおばちゃんパワーがあれば、インバウンドのさばきなどお茶のこさいさいみたいな気もするが。

分厚いメニュー本?の中に、和洋中、酒の肴に飯、そばなどなどが混在している。昔のデパート大食堂と、大衆居酒屋のメニューを混ぜ合わせたらこんなメニューになると思う。大人にとってはパラダイス的メニューだ。
今回はこれまで注文したことのないものを頼んでみた。

まずは串揚げ盛り合わせだ。5本セットでソース味。大阪の串揚げに似た気配はある。高知は、というか四国全体が京都・大阪から地理的に近いためか、料理を含めて広い意味で関西文化圏に入っているようだ。
この店には焼き鳥、串焼きも種類豊富なので、焼き鳥盛り合わせと串揚げ盛り合わせを頼んでおけば、とりあえず注文は一旦完了できる。とりあえずビールととりあえず焼き鳥、あるいは串揚げで……………というのは、酒飲みには優しい対応だろう。

今までに頼んだことのない二つ目、温かい豆腐も注文してみた。これは、思いのほか薄味で出汁も控えめ。何となく意外な味付けだ。ネギの緑が西国に来たことを知らせてくれる。関東の黒い蕎麦つゆに驚く関西人みたいな東西食文化あるあるネタの反対側が、この緑のネギだろう。関東の人間からすると、豆腐には白ネギが定番で緑のネギは余った端っこみたいな気がしてくる。まあ最近では彩として「万能ネギ」が使われることも多いので、その手の違和感がほとんどなくなってはいるが、

忘れていけないのが「親鳥」の焼き物。これは、おそらく香川名物「骨付鳥」のインスパイア品(コピー品)だろう。ただ、味付けは原型の濃い塩胡椒・ニンニク味ではなく、何と焼き鳥のタレを注文できる。塩味もあるが、それは何度か食べているので、今回はタレにしてみた。焼き鳥のタレだから、当然のように甘ジョッパイのだが、それが不思議と親鳥に合う。今度は「ひな」にしてみようかなと思ったが、それではジャンボ焼き鳥ではないかと気がついた。まあ、でも試してみようか。

ああ、きっとまた次に来た時もこの店に寄るのだろうな、という確信がある。ひろめ市場が高知のカオス代表であるならば、葉牡丹は高知の煌めき、とでも言いたい。葉牡丹、お江戸支店を作ってもらえないだろうか。どうです、高知県庁(旧)おもてなし課の皆様。最低でも週一で通いますから。

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