食べ物レポート

疲れた夜に一息つける場所

コロナの直前に開店していた店だが、コロナの間はこちらも活動低下していたし、お店もお休みだったこともあり、初めて入るまで随分時間が経ってしまった。たまたま、夜の恵比寿に用事があり、待ち合わし時間まで間があいていたので、これ幸いと入ってみた。
スタンドといえば京都の繁華街、新京極にある老舗飲み屋を思い出す。昼から元気に酒盛りをする人で溢れていたが、観光客というより地元市民という感じがした。関西圏のあちこちで「スタンド〇〇」という看板は見かけるので、関西圏では馴染みの言葉なのだろう。立ち飲み、あるいはカウンターだけの飲み屋という意味合いらしい。お江戸界隈ではあまり見かけないし、スタンドといえば球場内の施設くらいしか思い浮かばない。

表の看板に並ぶラインナップがなんとも不思議だ、ビール・酒・一品くらいまではよくわかる。ところが、突然中華そばが顔を出してくる。あれれ、という感じがする。

店内に並ぶメニューはお江戸の居酒屋で当たり前のものばかりだが、左側にはしっかりと「めし」が並ぶ。おまけに中華そばとナポリタンが並列されている。この混在感がすごい。
昭和中期の大衆食堂はこんな感じだったなあ、と懐かしく想うのはおっさんの証明以外の何ものでもない。最近でいえば、日高屋の壁がメニュー札、品書きで似たような感じになっているか。
ただ、これはおっさんやジジイの郷愁を誘っているのではない。現代の三十代を中心とした世代には、こういう見せ方が極めて新しく目に映るらしい。

酒の肴には何が良いかとちょっと迷い、お腹に優しそうなニラたまにした。こちらは汁だく系ニラの卵とじだった。店によってはニラ玉が、ニラが中身に入った卵焼きなこともある。出てくるまでのお楽しみ感があって、よく注文するメニューだ。この店では薄い味付けで、これはなかなか好みのものだった。
周りに来る客は概ね二十代から三十代で、中には女性ソロ客もいた。ハイボールとポテトサラダを注文して1杯飲んだらすぐに帰った。なるほど、そういう使い方もあるのかという感じだった。

メニューを見ると微妙に定食屋っぽいのだが、昔の駅前食堂はこんなメニューだったような気もする。ファミレスでハンバーグを頼むのと同じ感覚で、チャーハンに唐揚げみたいな頼み方を楽しんでいるようにも見える。しかし、このテーマ性のないメニューが今では目新しいとは、長く外食に関わった身としてはなんだか複雑な心境だった。

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