旅をする

天王寺の風景

自分の中にある大阪地図は、やたらと空白だらけで、おまけに鉄道路線図がほとんど欠落している。脳内マップはほぼ、いや、全く役に立たない。大阪駅(梅田)と難波駅(なんば)を結ぶ地下鉄路線くらいしか理解できていない。
だから、仕事で大阪に来る時も必要なのは地下鉄路線図のみで、それ以外の場所には現地スタッフの同行を頼りにする、全くのお上りさん状態で過ごしてきた。一度だけ、帰りの新幹線までの時間がなく、車移動を諦め電車に乗るために天王寺で降ろされたことがあるが、その時も地下鉄御堂筋線に乗り新大阪まで一直線だった。

先月までは日本一高いビルだったが、どこかの新築ビルに抜かされたらしい

天王寺と阿倍野の区別もつかないのだから、大阪地理の無能ぶりは明らかだが、あべのハルカスだけは一度だけ展望台に上りに来たことがある。ただ、タクシーで来たので正確な場所はわからないまま展望台の登り、タクシーで梅田まで戻った。
今回はJRを乗り次いでたどり着いたので、頭の中の白地図はだいぶ鉄道路線で埋め込まれた。まあ、グーグル先生抜きでは無理だろうけれど。
そのあべのハルカスが天王寺駅に隣接していることを理解したあとで、天王寺は近鉄線の始発駅であることもようやく理解した。が、その近鉄電車の行き先がよくわからないので、またGoogle先生にお世話になった。

しかし、なぜあべのハルカスとなったのだろう。天王寺ハルカスではいけなかったのだろうか、という疑問は解けない。そのまま近鉄駅を覗きに行って初めて(ようやく?)理解した。近鉄の駅は天王寺駅ではなく阿部野橋駅だった。
お江戸の感覚で言えば、いくつかの路線がつながるターミナル駅は基本的に駅名が同じだ。違いといえば「JR〇〇駅」とか「小田急〇〇駅」のように、頭に鉄道会社の名称が振られるくらいだろう。
複数路線が接続するターミナル駅であるのに駅名が違う例を考えると、JR有楽町駅と地下鉄銀座駅がこれに近いかもしれない。JR東京駅と地下鉄大手町駅もつながっている駅と言えばつながっているが駅名は違う。ただ、地下鉄大手町駅は丸の内線、千代田線、東西線、半蔵門線が乗り入れている巨大地下鉄ターミナル駅で、東京駅と比較的隣接しているのは丸の内線だけだ。地下鉄大手町駅という大ダンジョンの入り口がIR東京駅と考えても良い。そうすると、JR大阪駅と地下鉄梅田駅の関係がこれに近いかもしれないと気がついたが、ダンジョンとしては梅田の方が圧倒的に凶悪で、まさに迷路だ。
どちらにしてもJRと私鉄各社のターミナル駅については、一度お勉強し直さないと大阪の街歩きは著しい問題が起きる。それを天王寺で学んだ。

そのあべのハルカス前の歩道橋から、多分昔は大阪で一番高かったタワーがみえる。通天閣周辺を舞台にした「大阪コメディ」の最強作、じゃりン子チエを思い出させる勇姿だが、あのちえちゃんも現在年齢を推定すると、もはやおばあちゃんになっているはずだ。
さぞかし強烈な大阪のオカンから、大阪のおばんに成長していることだろう。きっと、子供時代と同じに猫を従え(おそらく十代目小鉄)酎ハイを飲みながらガハガハ笑っているような気がする。「オカンになったちえ」「じゃりばばあ、ちえ」みたいな話を読んでみたいなと思った。

夜になってふと思い出しホテルを出て歩道橋の上に行ってみた。昼とは全然違う通天閣が見えた。コロナの時のライトアップですっかり有名になった感はあるが、どうも夜のお姿の方がシュッとしているというやつだ。
そう言えば、通天閣はゴ◯ラにやられていないのではなかったか。お江戸の名所はできるたびに歴代ゴ◯ラに倒されていた。大阪で怪獣が暴れたのは、ウルトラマンシリーズのゴモラだけではなかったか。東宝映画では記憶にない。大映ではどうだっただろう。ガ◯ラでは福岡と香港と渋谷は壊滅したが、大阪は無傷だったはずだ。
やはり大阪は特撮映画世界において意外と平和な街だったのだな。通天閣を見ながら、そんなことも思っていた。
記憶にないのだがエヴァの世界では、大阪は壊滅していたのだったか。ハルカスの残骸に座り込む夕陽を浴びた初号機、みたいな絵柄はダイナックス社であればやりそうだな。

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