
晩飯にはB級なグルメが良いと思いネットであれこれ定食屋を検索して発見した一軒がこの店だった。表に立つと、実に味があるルックスで、おお、これはタリを引いたと思った。暖簾にかかる「おでん」が、実に期待を持たせてくれる。

引き戸を開けて店内に入ると、すかさず「お帰りなさい」と言われた。これはちょっと嬉しい。長く通っていた恵比寿にある居酒屋でも、入店の一声が「お帰りなさい」だったが、それを遠く離れた西国の街で聞くとは。

カウンターに座ると、目の前にはおでんの鍋が見えている。壁の品書きを見回すが、おでんの具材は何も書かれていないので、現物を見て注文するようだ。豆腐とちくわ、そして巾着を注文した。ただ、おかみさんによると巾着とは言わないらしいが、よく聞き取れない。餅入りなんとかと言っていた。
構わずに、食べてからの楽しみとそれを頼んだ。おでんの上には甘い味噌がたっぷりとかけられて出てきた。味噌おでんは東北、青森でも定番だが、この赤味噌系のルックスは初めて見た。味噌田楽はこんな見栄えだったか。
出汁が染み込んだおでんは美味いものだが、濃いめの甘味噌もそれを引き立てる。巾着だと思っていた油揚げの中身は餅だった。ああ、これも美味いなあと感激した。酒の肴として餅はどうよという気もするが、出汁が染みた油揚げと合わされば、すっかり気分は天国だろう。

壁に貼られたメニュー(品書き)にシャコ酢があった。ひょっとすると、ジャコ酢、つまりちりめんじゃこの酢の物かという疑念も頭を掠めたが、注文してみれば大好物のシャコだった。確か、ここから岡山寄りにある町はシャコの名産地だから、そこから届いているのかもしれない。
なんだか、とてつもなく贅沢をした気分になったのは、最近めっきりシャコが食べられなくなったからだ。確か江戸湾でもシャコはよく取れるはずなのに、食べる機会がない。お江戸のシャコはどこに行ったのだろう。
これは思わずおかわりがしたくなるほどの美味さで、旅先で拾った儲け物で美味しい肴だった。瀬戸内の海に感謝だ。

そして、締めのメインに選んだのがオムライスだ。最後の最後まで「やきめし」とどちらを注文するかで迷った。が、やはりオムライスがあれば、頼まないわけにはいかない。ひょっとすると飲み屋的に小ぶりなサイズであれば、ちょっと無理をして「やきめし」をおかわりしても良いかと思っていたが、出てきたモノをみてすぐに諦めた。どう見ても普通サイズの1.5倍、いや厚みを入れたら2倍くらいのボリュームがある。これでは一皿完食するのも難しそうだ。
味付けは昔ながらのケチャップ味チキンライスで、予想通り、期待以上で満足度120%のオムライスだった。おまけに、添え物の福神漬けがサイドアイテムといいたいくらいの盛りの良さ。これにも感謝だ。
感服しました「自由軒」さま、ありがとうございます。全てが美味しい・嬉しい・楽しい定食屋であり居心地の良い居酒屋でありました。

帰り際に覗いてみたら、お城がライトアップされていた。良い町だな、福山。