
松山城を見るときのベストアングルはここかなと思った場所がお茶屋になっていた。朝早い時間だったのでちょっと肌寒い感じはあるが、せっかくのお茶屋から観光しているので、ここは一念発起して食べるべきものがある。

ご当地ソフトクリームを、これまではバカにしてきた。失礼極まりないとは思うが、観光地の味変ソフトではないか。中身はどれも一緒だ、みたいな気分だった。ソフトクリームは気温が高くても、低くてもうまさに影響するせいもある。暑すぎる時はソフトクリームではなくかき氷が良いし、寒くなるとお汁粉とかホットココアが飲みたくなる。
ソフトクリームをおいしく楽しもうとすると実に温度帯が難しい、などと言う手前勝手な屁理屈を捏ねていたのだが……………

突然、改心した。回心した。そして、イヨカンソフトを食べて見て会心した。なんとお城の上で「かいしん」三部作を成し遂げた。
それを引き出したのが、販売窓口に貼ってあった一枚のポスターだ。ソフトクリームミックスを味付けして味を変えるのではなく、トッピングとソースで味変をしている。これなら味のバランスがとりやすい。ソフトミックスを上級なものにすれば、味も良くなるはずだ。
昔、どこかのご当地アイスで薔薇の香りをつけたものがあった。その人工的な着香がどうにも鼻について、以来、ご当地ソフトクリームを苦手とするようになった。こんなヘンテコな味のものを売り物にするとは、観光地とはいえ食い物屋としての矜持はないのかなどと、勝手なことを考えていた。
ただ、この伊予柑ソフトを見て考えが変わった。これからは、機会があればご当地ソフトを食べても良いなと思う。歳を食って少しだけ寛容になったのかもしれない。
ちなみに伊予柑ソースをつけて食べると、とてもうまい。ソフトクリームではなくフローズンヨーグルトにすると夏向き商品になりそうだ。抹茶あずきも美味そうだが、これを松山で食べる理由が難しい。静岡とか京都であればお茶の産地として成立しそうだが。ソフト道の奥は深いぞ、と気を引き締めることにした。

この松山城を築いたのは、戦国武将では成り上がり最終組の一員だった加藤嘉明だ。ただ、このような立派な城を築いた豊臣政権の成り上がり武将だが、その後彼らは皆、徳川との抗争の中で没落していく。武士の哀れということだろうか。それでも城は残る。

伊予柑ソフトは松山城で食べるから美味いと思うのだ、という気もするが、松山市内のどこかでも売っていそうだ。お城見学のついでに食すということであれば、春か秋の気温の穏やかな時にロープウェイで山上に行くことをお勧めする。
松山市民の中には、毎朝お城に歩いて登る人もいるそうだから、軽い登山のつもりで行くのも良いと思うが、自分であれば山上に着くと疲労困憊して、ソフトクリームを食べる気力などかけらもなさそうな気がする。(うん、間違いないな)