
新潟駅に、その名も素敵な「ぽんしゅ舘」という日本酒の販売施設がある。新潟にある蔵元の酒を集めている。酒の肴になりそうな食べ物もたくさん置いてあるので、日本酒ファンにとっては、目移りしまくりのワンダーランドだ。
その館の中に、これまたご機嫌な施設がある。

利酒をする場所と言えば良いのだが、利酒をしているうちにほろりと酔いが回る。なんとも、酒好き泣かせな設備だ。仕掛けは簡単で、五百円払うとコインが5枚もらえる。それと小ぶりなぐい呑みを一つ渡される。利酒をするには、お酒を注いでくれるマシンの所定の場所にぐい呑みをおく。マシンにはぐい呑みを差し込む窪みがあり、そこにぐい呑みをセットした後でコインを一枚投入すると、25mlのお酒が出てくる。つまり、五百円でぐい呑み五杯、計125mlの日本酒が堪能できる。

酒マシンには番号が振ってあり、それぞれの番号には新潟の酒蔵の酒が割り当てられている。同じメーカーでも純米酒や吟醸酒など複数の異なる酒が楽しめるものもある。5枚のコインを握り締め、ぐい呑みを抱えてマシンの前をうろちょろしながら、最初の一杯はどれにしようと悩む。まるで十円玉を何枚か握りしめて駄菓子屋に行った時の気分だ。
今風だなと思うのは、お酒チョイスアプリがタブレットにセットされていることだ。いくつかの質問に答えると、3種類ほどの日本酒が「おすすめ」される。このリコメンド機能は遊び心をくすぐる。





今回試した5種類で、一番のお気に入りは「055 越の寒中梅」だった。001天領杯は、かなりクセの強い酒で、久しぶりに個性的な酒に出会った感じがする。049 加賀の井は、マッチングアプリ推薦の酒だった。どの酒もユニークで、実に楽しんだ。
日本酒好きでも、お気に入りの酒は個人で大きく差があるものだ。甘めが良い、米の香りが……、スッキリと辛口が、などなど酒飲みとは実にわがままなものだといつも思う。
だから、自分の好みを人に押し付けることはしない。また、おすすめの酒を教えてくれと言われても、自分で飲んで決めろと突っぱねることにしている。最近はそんな会話すら面倒になり、一人で飲みにくのが一番良いと思っている。
誰かと飲むのであれば、誰が飲んでも答えは同じな炭酸系にする。ハイボールや酎ハイのたぐいだ。あれにはうまいもまずいもない。炭酸系でもビールになると、また蘊蓄を語り始める奴がいるので、最近は「とりあえずビールを」ということもしない。
そういうコミュニケーションが面倒くさいと感じるダメ人間なので、こういう素晴らしい施設には一人で来て、一人納得して楽しむことにしている。楽しみをシェアするのは、まだフェロモンたっぷりな若い方達にお任せしよう。(不思議と、店内にはカップルが多い)
昔、東銀座にあった日本酒センター?にも似たような仕組みがあったが、こちらの方がはるかに重宝する。1日五杯ずつのお試し・利酒をして、全種類制覇するには20日以上かかる。コンプリートに20日もかかれば、最初に飲んだものの味などすっかり忘れてしまうので、21日目からはまたフレッシュな気分で利酒サイクルが開始できる。
まさにエンドレスで楽しめるではないか。おまけに定期的に、試飲の酒は入れ替わるらしい。なんと夢のような………
やはり、新潟に住んでいる人が羨ましい。雪さえ降らなければ移住しても良いと思うほどだ。次はいつ新潟に行こうかな。