食べ物レポート

お盆のファミレス その2

ファミレスの話の続きになる。最近、新メニューで登場したのが、居酒屋のつまみ的なハーフサイズの単品提供ものだ。通常のグランドメニュー商品が、価格を上げすぎて販売不振なのだろうと推測している。
対抗策として出現しているのが「鳥肉だけ」「つけあわせなし」「少量対応」の安く見えるメニュー導入だ。通常、この手の低価格メニューは追加の一品として、単価向上、売上点数増大を狙うものだが、明らかにその機能は果たしていない。
一番の売れ筋、値段がお手頃な商品であるはずの(あるべきな)、ハンバーグにあれこれサイドアイテムが盛りつけされたプレートが、1000円前後の高価格帯商品になり、販売数が減っているのだろう。
主力商品であるプレートの値段を下げるわけにはいかないので、苦肉の策で唐揚げ3個400円台にしてみたら、そこそこ売れてしまいました、的な結果になったようだ。おそらく想定外なことに、唐揚げ3個+ライスみたいな注文が大量に出てきたのではないか。
コロナの間に昼飲みを推進してみたら、ジジババの低価格居酒屋になり、結果的に平日ディナー帯の通常営業を邪魔することになってしまったようなものだろうか。低価格の追加品が値上げ効果を打ち消す、客単価を押し下げる存在となってしまったようだ。
これは典型的な自分勝手な読みで自滅するケースで、困ったマーチャンダイジングになりかかっているのではと疑っている。

ハニーマスタードは好物だが、日本市場ではウケ狙いとしても弱すぎる気がする

この日に注文したのは、鳥料理の単品を二皿だけだ。ドリンクバーなし、ライスorパンも頼まずに「鳥だけ」の注文だ。完全に業務上の試食モードになっている。当然ながら食事を楽しむというより、料理の品位確認、価格対比と批判的な視点になる。
タブレットで注文するから、「唐揚げ単品」のみを注文しても、「ごいっしょにライスはいかがですか?」 という呼びかけはない。
客の立場からすると面倒がなくて、それで良いとは思うが、店の立場からするとみすみす売り上げを引き上げる機会を喪失していることになる。
タブレット注文はオペレーション合理化の重要技術だ。ただ、販売技術としての推奨販売ができないという欠点を併せ持つ。合理化によるコスト削減と合理化による売り上げ低下は、大きな矛盾する課題であるが、現在進行形で拡大が続いている。
現時点で外食産業における機械化は、その両方に対応することはできない。合理化の最先端技術として一気に拡大している猫型配膳ロボットも、一台しか稼働していなかった。注文した料理は全て人の手で運ばれてきた。どうやら、ロボットもお盆休みを取るようだ。

これがサイゼ〇〇対策だとすれば評価できそうだが、単純に居酒屋の鉄板焼きメニューでは?

低価格帯ファミレスで圧倒的なオペレーション力を持つサイゼ〇〇と比べると、このスキレットタイプ鍋を使った鉄板料理は、明らかに見た目が貧弱だ。低価格居酒屋のつまみ料理としては成立するかもしれないが、ファミレスの客には受け入れがたいというか、無理な感じがする。鶏肉のグリルの脇には何もない空間があるだけ。彩り野菜もなければ、鶏肉自体も見た目の変化がない。
鉄板料理はビジュアルの変化をつけなければ、実に安っぽくなってしまう典型例だろう。これが許されるのは、低価格居酒屋の「一軒目〇〇」か「て◯ぐ」くらいだ。
インジェクションしたチキンは諦めるとして、鍋の底に溢れる油の多いのには閉口する。ソースも生煮え感が強すぎる。
何か料理としての設計が間違っているのではないかと思うほど完成度が低い。ただ1000店を超えるファミレスチェーンで、その手の失敗は考えにくい。となると、これは設計の間違いではなく、現場での加工や調理工程にミスがあるのだろうか。
あれこれ職業的な疑問は深まるばかりだが、所詮400円台の低価格メニューだし、目くじらを立ててクレームするほどのことでもない。普通の客であれば、次からはこの鉄板料理を注文しないか、あるいはもう少し感情的になっていれば、当分の間この店に来ないという静かな対応になるだろう。

アフターコロナの時代、客が戻り始めても現場の疲弊と混乱は一向におさまらないようで、経営者はこれを見逃しているのか、見放しているのか。それを聞いてみたいものだ。

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