
お盆になると外食は夏の最盛期を迎える。特に地方都市は帰省で膨れ上がった家族連れが、普段よりはちょっとお高めの買い物をしてくれる。盆と正月というのは、掻き入れ時に間違いない。だから、当然ちょっとお高い贅沢系メニューがお盆限定で設定されるのは、業界常識だと思っていたのだが、どうやらそれはすでに過去のものらしい。
「夏のメニュー」をみてみたが、お高いメニューで目立っていたのは鰻丼くらいだ。ただ、これはすでに丼系ファストフードでは10年来の夏定番メニューであり、ファミレスで食べたいメニューであるかどうかは大いに疑問がある。ファストフードでのちょっとぜいたくな「孤食」として、鰻丼は成立する余地がある。すでに定番化した、夏の客単価増大メニューだろう。
最近では、それに和牛焼肉丼みたいな更なるアップグレード丼も登場している。本来ファミレスが狙うのであれば、そちらの方ではないかと思うのだが。
逆に定番メニューで目立ったのが「半量」にして値段を下げたメニュー群だった。これも狙いは、あれこれ色々食べたいというニーズに対応して、注文点数を引き上げるため、あわよくば通常メニューに追加として注文してもらいたい。単価、点数ともに引き上げようという目論見だろうとわかる。
しかし、ハンバーグを鉄板ではなく、皿に盛って出すとは、何か勘違いをしているようだ。明らかにチープに見える。
値上げのせいで1000円を超えるハンバーグ鉄板プレートを、あまりに高いと注文をためらう層ができてしまった。その価格不整合を感じる層が、しぶしぶ安い単品メニューに移行していくでは………と勘繰ってしまう。追加注文を期待した挙句、低価格品へ下方スライドされてしまい、客単価の低下を招いたとしても不思議ではない。

「夏のメニュー」として堂々と正面突破しようとしたらしい、「冷麺」も値段とルックスのバランスが悪すぎる。もはやファミレスの王道とは何かを見失っているとしか言いようがない。
個人的に冷麺は好物だし、あちこちの焼肉屋では、勝手にランキングをつけるほど冷麺については一言持っているのだが、どうもコメントつける気にもならない。
もし、夏に冷たい麺を出して、おまけに高単価で販売したいのであれば、三輪そうめんや秋田稲庭うどんなど、高級麺を使用して豪華トッピングで食べさせるとか、冷やし中華発祥の地仙台の中華料理店のように、完全別トッピングで豪華版冷やし中華を作り出すとか、もっと違うやり方があるように思う。出雲そばや出石そばのような、少量多品種型蕎麦での展開もあるだろう。手間は増えるが、単価は上がるはずだ。
平成初期に、業界最大のファミレスチェーンであったスカイラークが、全面的にガストへの業態転換を図った。昭和のコンテンツであるスカイラークが、平成に合わせた新コンセプトであるガストに転換をしたという点で、当時の経営陣の危機感がよく理解できる。まさにガストの出現は、外食業界のパラダイムシフトだった。
そして、アフターコロナのこの時期、おそらく平成で疲弊したファミレスのコンセプトが、新しいパラダイムに移行するのだろう。今はその産みの苦しみの時期と言える。
コロナ後の混乱がおさまらないファミレス業界で、次の業界標準を生み出すのは誰になるのだろうか。少なくとも、ファミレス御三家と言われたビッグネームではないことは確かだ。
カテゴリーキラーとしてファミレスを追い落とす勢いだった回転寿司も失速しているし、洋物ファストフードは領域を広げるより自分の陣地を深掘りすることに決めたらしい。和風ファストフードは、まだまだ混乱したままだ。丼屋から定食屋への転換は、オペレーション負荷が高すぎると思うのだが。
じわじわと地方都市で勢力を広げる、郊外型喫茶店が、ファミレスに変わって次の時代の後継者になれるかもしれないと感じている。ただ、軽食に限定された商品提供とコスパの問題はある。車社会に特化して対応した立地は、逆に客層を選別する危険もある。
アフターコロナで再開するであろう、米国市場の研究とコンセプト移入もこの先の刺激材料になる。少なくとも、反面教師にすらならないファミレス群が、新しい時代のパラダイムに合わせて再構成できるとも思えない。となると、次代の主力を探す試みをサボってはいけないなあと自省している。
というのが、お盆の研究成果であります。