
このところ、西新宿で飲む機会があればこの店に来ることが多い。そもそも、飲みにいく回数が減っていることもあり、西新宿比率、そしてこの店の利用頻度が上がっている。
昔は、西新宿で飲むよいえばヨドバシカメラの裏あたりにいくことが多かったのだが、そちらはすっかり足が遠のいてしまった。

夏ということであれば、やはり鱧が食べたい。西日本に行けば、この時期は居酒屋メニューが一斉に鱧に侵食されていたような記憶もあるが、お江戸界隈で「はも」はちょっとめずらしい系統のメニューのような気がする。夏といえば、同じような長い魚でもウナギの方が優勢であるようで、夏こそウナギと言われれば、なるほどそうだなあと感じる。
「はも」は、湯引き、おとしが好物で梅で食べるのは、この上ない喜びだ。(大袈裟だ……………) この時は「はも料理」三点セットでの限定提供メニューだったが、鱧の天ぷらもなかなかうまい。ちょっとだけ贅沢をした気分になる。

前に来た時から気になっていたのが、オムライス風の焼きそばだ。これを酒の肴にして飲むというのはどうかなあと思っていたが、締めのタイミングまで待ちきれずに注文して、冷たい日本酒に合わせてみた。が、これはなかなかのものだ。
中華料理屋でチャーハンをつまみに紹興酒を飲むようなものか。お好み焼きでビールを飲むのだから、焼きそばで日本酒も悪くはあるまい、などと思ってバリバリと食べた。
炭水化物は生魚(タンパク質)よりも胃袋に優しいかもしれない。ただ、炭水化物系は満腹感が出るまでノンストップに食べ続ける食べ物だから、やはり飲み屋では要注意メニューであることに違いはない。
うまいものは体に悪いというか、優しくない。まあ、だからうまいと感じるのだけれど。これは人類の祖先が、まだ雑食性霊長類だった時代から体に刻み込まれた習性なので仕方がない。米や麦は、ある意味で霊長類の一族にとって、麻薬に近い食物なのだと思う。

タコを入れたさつま揚げは珍しい。そもそも論でいえば、鹿児島では魚のすり身を揚げたものをさつま揚げとは呼ばない。そして、食べた限りにおいてだが、鹿児島のすり身の揚げ物は、かなり甘い味付けがしてある。現地で食べると、いかにも郷土料理という感じがする。
お江戸を含めた東日本圏内で売られているさつま揚げは、やはり「元の姿を失った」亡国の食べ物だろうと言う気がする。
現在、白身魚のすり身を混ぜて揚げるようになったのは、確か宮城県が発祥だったはずで、豊富に取れる白身魚(たら)を使った新しい「さつま揚げ」だった。
その魚のすり身の揚げ物をさつま揚げと呼ぶのは、西国出身者の郷愁みたいなものだろうか。確かに戊辰戦争後に定住した西国住民がお江戸の食文化に与えた影響は大きい。(はずだ)
その魚のすり身を揚げたもの(全国あちこちで郷土食として定着している)が、近年新しい具材を加え変形して進化している。今では当たり前のように売られているチーズ入りは歴史が古い。豆腐など植物性タンパク質を混ぜ込み、食感を変えるのも味変の常道だろう。
歯触りを変えるためイカやタコを加えるのも産地によって発生している。海とは全く関わりのないゴボウを巻き込んだ「ゴボウ巻」などというものも存在しているのだから、すり身揚げ物世界は許容度が大きいのだ。そのうちアボカド巻きとかベーコン揚げとかいう、日本と関わりのない食材の組み合わせも続々誕生しそうだ。
話が逸れたが、タコ入りのさつま揚げ?は実に好みの味で、できればスーパーで売って欲しいくらいのものだった。オムレツ焼きそば、新型さつま揚げなどをおかずに、居酒屋で酒抜きで飯を食うのは案外楽しいかもしれない。