食べ物レポート

薮半 ファイナル

小樽の蕎麦屋詣も回を重ねて、ついに4回目になった。暑い夏の盛りも、雪で滑る寒い時期もこなしながら、ついに食べてみたいメニューを制覇した。良い店の困ったところは、食べたいメニューが多すぎで、完全制覇するまで何度も足を運ばなければいけないことだ(笑)
とりあえず今回でファイナルだと思ってはいるが、またあれこれ食べにきたくなるのは間違いない。

今回は、北海道産日本酒「国稀」を燗酒にしてもらった。特に何も言わなくても、ちょうど良いぬる燗だった。最近の燗酒は熱めなことが多い。レンジアップのせいだが、よくできている店ほどぬる燗で出してくれる。店のレベルを図る目安には燗酒が重宝する。
今までは冷やでばかり飲んでいたのだが、国稀はぬる燗の方が明らかに美味い。香りが違う。また一つ勉強させてもらった。そば味噌を舐めながらちびりとやるのが、蕎麦屋酒の良いところだ。

抜きシリーズは三品制覇したので、今回はいちばん気にいった「かしわ抜き」にした。汁物で酒を飲むというのは、居酒屋ではなかなかできない。出汁の効いた「ぬき」を酒の肴にするのは、やはり蕎麦屋独特の楽しみ方だろう。天抜きも注文したかったのだが、流石に二品は手強すぎる。

代わりに天ぷらを追加で頼むことにした。定番のエビではなく、小樽名物のイカにしたのだが、これが大正解だった。抹茶塩で食べてくれ、ということだったが、たしかに塩で食べるイカ天は美味い。
ただ、最後の二切れは、誘惑に勝てず「かしわ抜き」に放り込んで食べてしまった。やはり、天ぷらの衣がそばつゆに浸ってぐずぐずになっていくのを食べるのは、背徳的なうまさがある。こういった、セルフアレンジができるのも蕎麦屋酒の良いところだな。

そして、この日のメインイベントは、カレー丼に続く名品「カレーせいろ」だった。ああ、これは美味い。自分の好みぴったり合う。
蕎麦屋のメニューの中で、カレー味は変化球でゲテモノ的な意識があったが、この店に通ううちにその意識はすっかり変わってしまった。
「もり」で締めるのがそばの常道だとして、蕎麦屋の店主は「もり」の品質にこだわるのだろう。それに逆らうつもりもないし、普段食べるのも「もり」がほとんどだ。寒い時期に、ちょっと浮気をしておかめそばを頼むくらいで、蕎麦といえば「もり」そばだと思っている。
ただ、カレー味は超絶技巧な技の発現だと思い知らされた。何気なく食べたカレー丼もそうだが、このカレーせいろのカレーつゆが、蕎麦の食べ方を極限まで広げてくれた気がする。
しかし、カレー南蛮はよく見かけるが、カレーせいろはお江戸の蕎麦屋で見たことがない。気がついていないだけだろうか。埼玉名物の武蔵野うどんでは、ほぼ定番でカレー味があるが、蕎麦屋では見た記憶がない。
これは、お江戸の老舗の蕎麦屋巡りを再開して、カレーせいろ探索をする価値がありそうだ。お江戸で見つからなければ、またこの店に戻ってくれば良い。戻ってくる理由が一つ増えた。めでたし?

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