札幌大通り公園近くにある角打ち「たかの」は、以前も書いた通り、入っていくのに勇気が必要な場所だ。美容室への入り口から入り、そこから横にそれると地下に通じる階段がある。階段の壁は日本酒のラベルで埋め尽くされているので、どうにかここは飲み屋に続く階段だろうと想像できる。

その階段を下り切ったところにあるスチールドア。これが店舗入り口だというのか、と言いたいぐらいの素っ気なさだ。動物園の飼育室のドアがこんな感じではなかったかなどとぶつぶついってしまうレベルなのだが。

中に入れば天井も高く、おまけに禁煙で、なぜか洒落たジャズがBGMでかかっている。売っているものは大型冷蔵庫に入っている日本酒、それもほぼ一升瓶。注文すると半合くらいのグラスに注がれる。チェイサーというか追い水というかはウォーターサーバーから自分で持ってくる。

あとは酒の肴として、塩辛とか小鍋とか、具のない海苔巻きの上に刺身が乗った寿司は(これは鮨ではないと思う)、なかなか肴としては優れものだ。特に、このマグロの海苔巻き(もどき)は超絶的な優れもので、コメで作った酒で米を食うというなんとも微妙な飲み食いの仕方なのだが、じつにお気に入りになってしまった。

テーブルチャージというかセルフサービスのお通しも、自分で好きなものを取り放題で、ガリとか漬物とか、なかなか酒の肴として秀逸なアップだと思う。

店内はテーブルがゆったりと配置されているので広めの空間で、角打ち特有の混雑感や狭さはない。初めて入った時から思ったのだが、まるで仮面ラーダーに登場した悪役たちが夜な夜な集まって悪事を企む秘密基地みたいな感じがする。正義の味方の基地ではなく、ワルモノの基地だ。だからこそ酒が飲める。正義の味方の基地ではオレンジジュースとかコーラになってしまう。

早めの時間に行って、このワルモノの地下基地気分を味わうのは、大人の(オヤジの)醍醐味というものだ。間違っても正義の味方候補になりそうなイケメンの若者は来て欲しくないな。