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ラノベの共振軸とは (表紙で判断してはいけないよ)

ラノベ、ライトノベルと言われる小説の一ジャンルだ。昔はジュブナイル(青少年向け)として描かれていた文庫形態の小説でシリーズ化されるものが多い。大体のお約束として、主人公は高校生から大学生くらいの年代で、異世界だったり超能力者のいる世界だったり、冒険と人間関係の軋轢の中、ちょっとだけ恋愛モードもありながら精神的に成長していく(大人の階段のぼる)SF的なお話だった。

それがここ数年で、web小説の一ジャンルとして急成長し、ウェブサイト経由で書籍として出版される、アニメ原作になるなど一躍現代的なメディアミックスの各商品となってきた。そして、その主たる構成が「転生もの」だ。ある日突然、なんらかの理由で主人公が現実の世界から訳のわからん、魔物がいたり、超能力者がいたりする世界に飛ばされる。主人公が死んで転生するパターンが多いが、タイムスリップしたり、魔界の誰かに拉致されたり、理由ははどうでも良い。そして、なぜかその異世界では日本語が通用し、なぜか善良な悪魔みたいな異生物が仲間になる。身もふたもない言い方を知れば、異世界を用意した上での願望充足小説といえば良いか。
そして、もう一つの共通項が表紙(あるいは本編内の挿絵)で、アニメ系美少年美少女、たまには成人美人が描かれている。この辺りは登場人物造形のお約束ごとでもあるようだ。

エルフと人が住む世界で、エルフに育てられ人的思考ができなくなった
適合不全な若者が再生?する物語

さて、芝村裕吏作「やがて僕は大軍師と呼ばれるらしい」は、このラノベの約束事をずいぶんはみ出している。人族と魔族が共存している異世界で、捨てられた人間の子が、自分を人間と思わないで育ったらという設定の主人公がいる。その主人公(ただし自分は人間ではないと信じたまま)人族側に立って悪戦苦闘する話だから人間と噛み合わない。おまけに超絶的な力(いわゆるチート)は持たず、誰に習ったわけでもない軍略を極めていくという話だ。唯一ラノベのお約束を守っているといえば、登場女性キャラに大モテなのだが、そのまとわりつく女性キャラの誰をも迷惑に思っている。ストイックぶりというか、自分は人間ではないぞ的意識が不思議な雰囲気を出している。そんな人間には同調しにくい性格をしているくせに、いつの間にか人族以外のはぐれた魔物はどんどん仲間にしている。このまま行くと人魔獣連合による世界統一目指してい口ことになるだろう。この女性キャラ取り巻き問題は、芝村裕吏のヒット作「マージナルオペレーション」シリーズとも共通している作者独自のスタイルだ。しかし、この「やがて僕は・・・」の原型は、佐藤大輔の「エルフと戦車と僕の毎日」にあり、そのオマージュというか対応作品であるような気がする。

エルフ世界でガチの戦車戦を展開した。佐藤ワールド全開。

さて、芝村裕吏作「やがて僕は大軍師と呼ばれるらしい」は、このラノベの約束事をずいぶんはみ出している。人族と魔族が共存している異世界で、捨てられた人間の子が、自分を人間と思わないで育ったらという設定の主人公がいる。その主人公(ただし自分は人間ではないと信じたまま)人族側に立って悪戦苦闘する話だから人間と噛み合わない。おまけに超絶的な力(いわゆるチート)は持たず、誰に習ったわけでもない軍略を極めていくという話だ。唯一ラノベのお約束を守っているといえば、登場女性キャラに大モテなのだが、そのまとわりつく女性キャラの誰をも迷惑に思っている。ストイックぶりというか、自分は人間ではないぞ的意識が不思議な雰囲気を出している。そんな人間には同調しにくい性格をしているくせに、いつの間にか人族以外のはぐれた魔物はどんどん仲間にしている。このまま行くと人魔獣連合による世界統一目指してい口ことになるだろう。この女性キャラ取り巻き問題は、芝村裕吏のヒット作「マージナルオペレーション」シリーズとも共通している作者独自のスタイルだ。しかし、この「やがて僕は・・・」の原型は、佐藤大輔の「エルフと戦車と僕の毎日」にあり、そのオマージュというか対応作品であるような気がする。

ファンタジー世界で落ちこぼれ高校生が転生し復活する物語

しかし、佐藤大輔の「エルフと戦車と・・・」には、もう一段、伏線が潜んでいたと思う。豪屋大輔作の「A君(17)の戦争」が下敷きにあると推測しているからだ。実は豪屋大輔は佐藤大輔の別のペンネームであるという噂が作品刊行時からずっと流れていて、どうやら本当らしい。作品の語り口や登場する兵器に対する描写、戦術や戦略論などはまさしくファンタジー世界版の第二次世界大戦だった。「A君・・」の世界は魔族が戦うファンタジー世界だが、魔法を動力とした怪しい兵器体系があり、そこに転生したA君17歳が、現実世界で感じていたコンプレックスをバネにファンタジー世界でそれなりに尊敬を受け成長していくという話だ。そして、これも佐藤大輔諸作品と同じく途中でバッサリと話が止まる。中断してしまう。未完のまま10年以上放置される。(ちなみに佐藤大輔最後の作品は恒星間宇宙もので、第1巻で終わりになってしまった)

おそらく佐藤大輔は、多少考えるところがあり、「A君(17)の戦争」を書き直すつもりで「エルフと戦車と僕の毎日」に取り掛かり、おそらくは完結するつもりで書いていた。これが終わったら「皇国の守護者」も面倒を見る気だったのだと思う。それが、果たせないまま絶筆となった。そして、芝村裕吏がファンタジー世界という出版社からの注文に対して「やがて僕は大軍師と呼ばれるらしい」で、佐藤大輔の描ききれなかった転生高校生のファンタジー世界成功物語を、完結まで語り尽くそうとしているのではないかと個人的に想像しているのだ。

佐藤大輔ファン、そして芝村裕吏ファンとしての妄想だが、この三作品は共振を起こしているように似ているのだ。今度こそ完結編を読んでみたい・・・。

追記
「蜘蛛ですがなにか」は「転生したらスライムだった件」の影響から生まれた作品だそうだ。このジャンルの作家は、熱狂的なジャンル作品のファンでもあるから、佐藤大輔・芝村裕吏のリレーもありそうな気もするのだけれど。