食べ物レポート

チェーンラーメン店の華 丸源

黄色に黒字の看板は、日中でもよく目立つ。ライトアップすれば夜でもよく目立つ。郊外の幹線道を走っていると分かることだが、看板の配色や形状は、実はなかなか重要なことだ。Mのマークとか、アメリカ人爺さんの顔でブランドが思い浮かぶまでには、いったい何年かかることか。そうなるまでには、5年や10年では済まない時間と、どこを走っていても見かける店舗数が必要なのだ。これがブランドという物の強さにつながっている。

ラーメン屋の看板でございます という見え方

看板のブランド論を語るつもりはないが、大きい黄色の看板はブランドが有名でなくてもよく通じるメッセージで、大体において、この黄色と黒の配色はラーメン屋が使うことが多い。赤字に白抜きの看板もラーメン屋がよく使う配色だが。ラーメン屋以外では大人向けDVD店も黄色に黒が多いような気がする。この看板でよく目立っているのは屋号の「丸源」ではなく、ラーメンという文字であるのも、ブランドの考え方が現れている。屋号よりも商品、これを有名店に当てはめてみるとよく分かる。マクドナルドというブランドではなくハンバーガーと大きく書かれているマクドナルドの店、昭和の頃にはそんな店がかなりあった。マクドナルド=ハンバーガーという認知がまだ形成途上だったからだ。

フラッグシップ商品 肉そば

そしてその丸源ラーメンに入ろうとして、初めて「熟成醤油ラーメン 肉そば」が看板商品だということが、「店の看板」で分かる。手の込んだ演出というべきか、商品に自信がないのかなと疑ったりもするが。

醤油ラーメン

その熟成醤油ラーメン 肉そばは、実は相当にレベルの高い食べ物だ。チャーシューがわりに大量に入っている豚肉の薄切りと濃いめのスープ。麺は普通の弾力でモチっととかスルッととかという形容詞とは無縁の普通さだ。ただ、麺とスープと薄肉のバランスが良い。このラーメンはトッピング全部乗せには向かない、シンプルに何も追加しないのが正解。

もう一つの名物 鉄板チャーハン

追加で注文すべきは鉄板チャーハンで、これは名古屋の鉄板ナポリタンのパクリだとは思うが、熱々の鉄板に乗ったチャーハンを持ってきて、目の前で溶き卵を鉄板の上にかけていく。ジュウジュウと卵が焼けていく。半熟具合を見計らい、一気にチャーハンと混ぜていく。自家製卵チャーハン完成だ。これはうまいやり方だ。
シズル感あるし、チャーハンは熱々になるし。

丸源ラーメンの本部は愛知にある。尾張ではなく三河であり、名古屋飯的なアイデアを良い意味で泥臭く仕立て上げる「名人芸」の会社だと思う。個人的に名古屋飯各種の熱烈ファンであるから、この会社にはぜひ頑張って良いレストランを作って欲しい。

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肉そば NAMIKIでチャレンジ

ネットで流れてくる情報は、玉石混交と言うか、ずいぶん大げさな書き方になっているレストランレビューなども多く、話半分にしても盛りすぎだななどと思うことが多い。ただし、それはいわゆるお値段の高い方の店に多い話で、立ち食いそばとかラーメンとか定食系の情報は意外と信頼性が高いと思っている。だから、たまに紹介されている情報を片手に、所用のついで行ってみることもあるのだが。

今回は中野に用事があった時にふらりと立ち寄った駅前の立ち食い蕎麦屋、肉そばNAMIKIが予想を超えるユニークな店だった。

メニューは肉そば¥550のみといって良い。スープは日本蕎麦のつゆとは全く違う。きつねそばや天ぷらそばのような蕎麦つゆとは異なり、どっちかというとラーメンのスープに近い。強さのある肉系濃厚だし汁とでもいうべきだろう。

そばは日本蕎麦でラー油蕎麦のような腰の強い物ではなく、感覚的にうどんに近い柔らかくて太めの麺だった。上に載っているのはたっぷりの長ネギともやしと豚肉のみでシンプル。つゆは薄口に感じるが出汁は効いている。

そして店内の解説書を読むと、食べながら味変をしていくのが流儀らしい。最初はそのまま食べ、次に生姜を投入し、最後の方では辛味噌を溶かす。まずは肉トッピングを平らげながら、生姜を大量に放り込んだ。生姜の味でぴりっと締まる気がする。口の中で、大量に食べた豚の油が溢れている感じがあるので、生姜を溶かしたつゆを啜ると、これはなかなか調子が良い。麺を半分ほど平らげたところで辛味噌を多めに入れて、よくかき混ぜる。つゆを啜るとそれなりの辛味がついて、明らかに味変した。蕎麦を完食し、つゆも飲み干してしまった。まさしくボトムズアップ、ラーメン漫画に出てきそうな光景だが、不思議と塩辛く感じない。

わずか5分で食べ終わるグルメといえば良いのだろうか、世の中こんな不思議な物を考えだす人がいるのだなと、店主の顔を見ながら御馳走さまの挨拶をして撤収。

個人的な要望としてはもう少しかための麺にして欲しいが・・・。次回も中野に行ったら寄ってみようと思う名店だった。

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米沢で蕎麦を食らう

ホームで駅弁売店は、もはや文化遺産

米沢の駅前で新幹線を降りると目の前が駅弁の売店だった。山形方面に向かうホームなので、山形や新庄に行く人が米沢で駅弁買うかなと思ったが、それは勘違いだった。米沢駅1番線ホームは、新幹線が上下線とも止まるので、東京行き上りの乗り込みもある。ということで2軒並んでいる弁当屋の競合体制も納得できる。奥の売店は、駅弁市場では超がつくほど有名な「牛肉どまんなか」を販売中。

駅を出てコンコースを歩くといきなり登場した前田慶次殿、なぜ米沢でと再び疑問符が三つくらい出てきた。どうやら前田慶次はこの地に最後は居ついていたらしい。戦国バサラの勇姿が最後は米沢まで来ていたとは。

さて、山形のそばといえば、板そばと冷たい肉そばになる。蕎麦の名産地だから、どちらもうまい山形名物と言えるだろう。「冷たい肉そば」は、山形県北部河北町あたりが発祥・本場で、山形県南部の米沢では見当たらないと思っていたが、しっかりと田んぼの真ん中の一軒家そばで登場してきた。さすが、そば王国山形。

実は、そばではなく「龍上海」の辛味噌の乗ったラーメンを食べようと車を走らせていて、途中で見かけた蕎麦屋にフラフラ入ってしまったというのが本当のところだった。しかし、旅の途中の直感はたまには良い仕事をしてくれる。昼時を過ぎていたが、店内はほぼ満席だった。

メニューの写真を撮る気になったのは、見ての通りのシンプルさだからだ。肉そばと肉中華とは、スープが鳥の出汁の強い透明感のある山形独特のものをつかい、麺が中華麺か日本蕎麦かの違い。あとはスープが冷たいか暖かいかは選択できる。冷たい肉そばか温かい肉そばかということだ。普通のざるそばもあるが、周りを見てもみんな食べているのは丼に入った蕎麦のようで、圧倒的な肉そば推しだった。

山形のそばは太めでもちっと歯応えがある。もう一つの山形名物「板そば」なども、スルッとすするのではなく、もぐもぐ噛み締める蕎麦だ。肉蕎麦も同様で、濃い出汁の効いたスープが絡んだ硬めの麺を噛み飲み込む。トッピングで乗っているのが親鳥の肉で、これも日頃食べ慣れたブロイラーの柔らかさとは違う。ガッチリ噛み締めて、歯応えと肉の味を確かめるように食べる。麺を大盛りにする客が多い、というかデフォルトは大盛りなのだそうだ。しかし、ここでは鳥中華のために胃袋のスペース確保をしなければならない。

鳥そばは冷たいのを注文したが、鳥中華は暖かいものにした。スープはちょっと違うような気がしたが、麺の違いが味の差としては大きい。鳥トッピングは同じようなものだが、なんと言っても蕎麦と小麦の差がはっきりわかる。山形県のラーメン消費が多いという原因は、この蕎麦屋で食べる中華そばのせいなのだろう。ただ、ラーメンはローカルルールの塊なのでなんとも言えないが、この鳥中華はラーメンとは似て非なる食べ物ではないか。あえて強弁するとすれば、豚骨ラーメンとちゃんぽんのような違いというか、限りなくラーメンに近い何か違うものという感じだ。蕎麦つゆにラーメンの麺を入れて食べる地域もあるのだから、この鳥中華くらいはラーメンの振れ幅のうちという考え方もあるが。ただし、これはこれで好みの食べ物で、また食べてみたいとは思う。

山形の麺文化は奥が深いなあ。

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山形で肉そば

東北6県で、それぞれ地域の売り物というか、その地域では絶対的な「主力食べ物」というのはいろいろある。宮城県ん仙台では牛タン、秋田県では横手やきそばとか稲庭うどんとか。岩手県の三大麺、冷麺、じゃじゃ麺、わんこそばなどなど。そして、意外と地味で知られていないのが山形県民のラーメン好き。そして、その大好きラーメンに匹敵する人気者が河北町発祥の「肉そば」だろうと思う。

ラーメンを食べるのは蕎麦屋なのだそうだ。そして、山形では有名な板そばもうまいが、蕎麦屋といえば肉そばだ。などと、張り切っって川北町の有名店に行ってきた。

冷たい肉そばのルックスはこれ、そばの上に鶏肉の厚切りが載っている。ネギ少々、以上。ビジュアル的には、かなり色彩感に乏しい。ツユも薄めの醤油っぽい感じ。東京あたりのしょぼい立ち食い蕎麦屋でカシワ蕎麦など頼むとこんな感じ?
しかし、いざ食べてみると全く違うものだとわかる。蕎麦は太めでコシが強い、モチモチと歯ごたえすらある。蕎麦はすするものなどと粋がっていう人がいるが、この蕎麦は噛みしめる、飲み込むのに段階が必要な力強さを要求する。つゆは鳥出汁で、日本蕎麦らしくない。塩ラーメンのスープと言われれば納得しそうな味の強さがある。鶏肉は、いわゆる親鳥なのだろう、歯ごたえがあるブロイラー的柔らかさはない。ああ、確かにこれは「肉蕎麦」というしかないな。好みだ、圧倒的に好みの味なのだ。

どうでしょう、この説得力のあるおすすめのお言葉。暖かいつゆの肉そばもあるから、冷たい肉そばなのだね。ただし、冷たいがデフォルト、標準らしいし、まずは冷たいのから挑戦すべきでしょう。

蕎麦屋なので、当然普通の日本蕎麦メニューもある。ザルやかけそばがあるし、山形名物板そばもしっかりありだ。すごいのが、ラーメン類というメニューで、ラーメンと冷たいラーメンは、肉そばの麺が中華麺になり、スープが多少強くなっているものらしく、これはうまそうだ。
それでは止まらないのが、山形プライドなのか、ラーメン愛なのか。天ぷらラーメンというメニューがある。想像はできる。問題はないと思いたい。天ぷらそばのラーメンバージョンだと思えば良いのだろう。ラーメンの上にチャーシューではなく、エビ天が載っているに違いない。見た目にギョッとするだろうか。いや、そんなことはないだろう、意外とあっさりエビ天うまいねってなことになるはずだ。でも蕎麦とうどんは「やさい天ぷら」になっているのに、ラーメンだけは「てんぷら」だからね。

山形の蕎麦は、哲学的で奥が深いと思うよ