食べ物レポート

旭川でも串鳥

旭川に所用で一泊することになった。コロナ制限解除前なので、夜8時を過ぎると飯も食えない。ホテルに着いたのが6時半過ぎで、慌てて店を探しに行ったが、どうも酒が飲める店のほとんが開店休業状態で悲しい雰囲気だ。入り口を開けて中に入ってみても誰も出てこない。そんな店に2軒連続して当たってしまい、3軒目は席まで案内されたまま放置された。従業員不足らしい。これでは8時までに食べ終えられるか心配になった。結局、何も頼まずにその店も出ることにした。あまりの長きにわたる休業のため従業員の手配がつかないか、接客のあれこれをすっかり忘れてしまったか。どちらにしても、客に金を払っていただくレベルに戻るにはずいぶん時間がかかりそうだ。さすがに4軒目を探し見つける気力をなくし(時間も残り僅かになり)、ようやく見つけた串鳥 旭川店に逃げ込んだら、何と満席で5分ほど待たされた。それでも普通の居酒屋の活気ある雰囲気がありがたい。

旭川店限定のミックス肝串があったので、早速それを注文した。どうも、これは美唄焼き鳥インスパイア系というやつだろう。ただ美唄焼き鳥は串に刺さっている肝が気まぐれというか串ごとに違う。それに対して串鳥旭川店限定品ではどの串も同じ配列になっているようだ。それでも玉子の黄身の元がついているのは嬉しい。

つくねも定番の梅だれを注文したが、追加で青南蛮入りを頼むことにした。北海道では唐辛子のことを南蛮ということが多い。確か仙台の辺りでも同じように南蛮といっていた気がするので、これも東北からの移入語だろう。その青南蛮、つまり青唐辛子を練り込んだつくねは、間違い無く大人の味だった。一口目はあまり感じないが時間が経つと舌がビリビリと痺れてくる。これは味変焼き鳥として傑作だ。ただし相当に辛いのでラス前くらいで頼むのが良さそうだ。
ふと気がついたら8時を過ぎていて、店内は賑やかだったがホテルに帰ることにした。30分一人飲みのはずがちょっと長居をしてしまったのは、久しぶりの元気な居酒屋感が楽しかったせいだと思う。
次はどこの串鳥に行ってみようか、などと考えながら店を出た。個人的な希望としてミックス肝串は全店に導入して欲しいです。

街を歩く

串鳥で一人飲みは哲学的になる?

普段から当たり前に使っているものが使えなくなると、何やら、ものすごい喪失感に襲われる。この外出自粛の時期で、一番こたえているのは焼き鳥屋に行けないことかもしれない。ファミリーレストランもハンバーガ屋も仕方がないと諦められる。鮨屋や居酒屋も同じだ。ボディブローのように効いているのがラーメン屋とか蕎麦屋とかの麺麺グループだが、これは内食でもなんとかなる。決定的にダメなのが、安くて旨い焼き鳥屋だろう。

北海道スタイルのもっきりで千歳鶴を飲みながら、焼き鳥が出てくるのを待つ時間というのは、なかなか一人酒をする時のお作法というか、決まりごとというか、ルーティンというか。なんともありがたさを感じる時間だ。

もっきり 常温よりちょっと冷たい千歳鶴

串鳥のメニューを見るたびに、いや、おっしゃる通りと思う。焼き鳥は安価で安直な食べ物だ。高級焼き鳥屋に行き、一本500円もする高級焼き鳥をたのめば、それは確かに旨い。銘柄地鶏の歯応えや旨味は価格に見合った満足感はある。ただ、なんとなく違うという気がする。例えていえば全国チェーンのハンバーガー店でグルメバーが1500円みたいな感じだろうか。一杯2000円の超絶美味い黒毛和牛100%の牛丼を頼んだみたいなものだろうか。うまさは実感できるが、支払った金額を考えると目がくらむみたいな話だ。

まさしくその通りと言いたいメニューに勇気づけられる

串鳥の焼き鳥は1本120−150円くらい。リーズナブルな価格帯だ。東京ではひと串50円の廉価焼鳥屋はあちこちにある。それでも串鳥のほうが良さそうに思えるのは、品質と量のバランスが良いからだろう。
一気に五百店近くまで拡大した鳥貴族が、北海道に侵攻しがたいのは、明らかに串鳥の存在があるからだ。すでに札幌市内を中心に厚い店舗網を築いている上に、それぞれの地域で良い場所を抑えている。そこに戦争を仕掛けるとしたら、焼き鳥屋としてはずいぶん良い立地に出さなければならない。おそらく繁華街の中でマクドナルド の隣みたいな場所だ。二級立地で、おまけに二階や地下でも戦闘できる、勝ち残れるというのが鳥貴族の出店力だが、串鳥の横でそれができるかというと、かなり疑問だ。これまでなれ親しんできた「鳥貴族的立地」では、串鳥に完敗するだろう。
味で圧倒的に相手を上回れなければ、場所が劣る時、競合ブランドとは勝負できない。
メニューも価格帯も差がないのだから、最初っから戦争をしようとしないのは正解だ。
などと1人で焼き鳥を食べながら考えていた。

首都圏では鳥貴族の侵攻が一段落したようだが、迎撃に失敗した焼き鳥ブランドはたくさんある。業績悪化に苦しむ居酒屋が新業態として焼き鳥屋に挑戦したが、死屍累々というお粗末な結果になった。鳥貴族は自家中毒的に出店が止まっているが、潜在的な戦闘力は強いので、首都圏外にもじわじわ出店するだろう。
串鳥との最初のバトルは仙台になるのだと思うが、そこで勝負をかけないと北海道上陸は夢のまた夢になる。

鶏皮ポン酢は、絶品だ

カウンターで千歳鶴をちびちび飲みながら、鶏皮ポン酢と串3本も食べると、これは実にちょうど良い腹具合で。おまけにもう一杯お代わりをしたら本日は終了。
焼き鳥屋のカウンターであれこれ妄想するのは、オヤジの特権ではないかと思いつつ撤収するのだ。

食べ物レポート

串鳥 地元の駅前で開店から飲む

北海道の札幌近郊に実家があり、仕事で出張するときにはふらりと里帰りをする。元々オイルショックあたりに開発された大規模団地なので、東京でいえば多摩ニュータウン、大阪で言えば千里あたりのイメージに近い。つまり住民が高齢化し、町の新陳代謝が進まないまま人口減少しているという場所だ。

だから、駅前とは言え飲み屋街があるわけでもなく、仕事帰りに一杯やろうという場所も少ないのだが。どうやら高齢化した住民が、ススキノまで飲みに行くほどでもないかという気分で、手近な飲み場所として大盛況している焼き鳥屋がある。その「串鳥」はスーパーの入り口という全く居酒屋には似合わない場所にある。

串鳥」は、北海道では有名焼き鳥チェーンで札幌市内のあちこちに店舗があるが、ここの串鳥ほどローカルニーズに支えられている店はないだろう。メニュー自体はススキノの真ん中や市内繁華街にある繁盛店と同じ。当然焼き鳥もフルラインで揃っている。
4時開店で、5時にはほぼ満席になるのだから立派なものだ。ちなみにこの街にはファミリーレストランはない。マクドナルドが幹線沿いにあった。(今はない)ケンタッキーもない。
だから、週末には焼き鳥屋がファミリーレストラン化する。おそらく祖父母のいる実家に子・孫が遊びにきたので、三世代でハンバーグを食べる代わりに焼き鳥屋に出動するということだろう。

お値段は札幌価格でリーズナブルだし、メニューも多い。飲み物も手頃に揃っている。まさしくファミリーレストランの要件は満たしているからの人気店ぶりだ。その結果、すごくうるさい。串鳥の店で会話をすると喉が枯れるというのも、これまた常識だ。

オススメのメニューはというと鳥串と(北海道的に言うと鳥精肉、東京風にねぎまと言われることはあまりないようだ)つくねだろうか。鶏団子を3個刺したものをつくねと言っていた時代もあったが、いまわ串鳥のせいで棒状つくねがデフォルト形態になったようだ。

串鳥のおもてなしは(?)は、注文前に鳥スープを持ってくるところだが、スープをすすりながらビールを頼み焼き鳥を適当に注文する。(個人的には胃に優しいので鳥スープはありがたい)焼き物を頼むと多少時間はかかるので、小鉢というか小皿料理を頼むのだが、絶品は鶏皮の酢の物。皮は湯引きしているのであまり油っぽくはない。これをつまみにちびちび酒を飲み焼き鳥が来るのを待つというのが「正しい串鳥の作法」と言いたい。

このタイミングで釜飯を注文しておくのも串鳥通だが、釜飯の話は別の機会に。

食べ物レポート

居酒屋とちょい飲みと

居酒屋はチェーン店が大苦戦をしているが、若者が酒を飲まなくなったことが原因だと言われている。確かに、昔のように気がつけば終電というような深酒をすることは減ったと思う。首都圏では東日本震災以降、確かに電車が止まることへの恐怖からか、夜からの時間シフトが起こっているの現実だろう。
ただ外的要因だけではないと思う。居酒屋のメニュー開発が足りないというのも現実だ。そもそも居酒屋とは凝った料理を出す業態ではない。手軽にチャチャっと飲んで食べてが基本のコンセプトだから、ガツンと肉が食いたいとか、野菜たっぷりでヘルシーなどという概念からは程遠い業態だった。しかし、それをよしとする客層は今や50代以降しかいないだろう。
とりあえずノンガーボだ、糖質フリーだ、高タンパク低脂肪だなどと、メニューの良し悪しではなく、素材の(それも物性的な)機能を求める時代に、見合ったメニューを開発していない。少しは回転寿司チェーンの貪欲さを見習うべきだろう。今や、回転寿司では主力メニューがラーメンやうどんになり、寿司のシャリにカレーをかけたものがヒットする時代だ。回転レーンで回っているのはデザートが一番多いし、人気のネタは魚ではなくコーンだったり、カルビだったりする。

養老乃瀧でサーロインステーキ

さて、おそらく日本でいちばん古い居酒屋チェーン「養老乃瀧」は、経営者が変わった以降、相次いで低価格業態の一軒目酒場を急展開しつつ、従来型店舗のメニューを大胆にいじくり回している。その典型が鉄板サーロインステーキだろう。ただし、ステーキと言うには厚みが足りない肉、ステーキソースも照り焼き系の甘めという、本格ステーキと言うよりは厚目の焼肉といった方が良いと思うが、これが酒(決してワインではない)とよく合う。サワーやホッピー、ハイボールなどの炭酸割りもの系の酒とは相性が良いだろう。こうしたメニュ開発が大事だ。要は大人のファミリーレストラン的な要素を強めることで、居酒屋はメニューコンセプトを変えるべきなのだと思う。

日高屋で三種盛り

一方、ラーメン屋のちょい飲みの成功例として「日高屋」がある。もともと街の中華料理屋を居酒屋がわりに使う層はいたのだから、そこを正面突破すると言うのは正しい発想だ。昼に混み合うラーメン店や蕎麦屋も夜にはガラガラという例が多い。蕎麦屋が店主入魂の和食コースみたいな方へ進化するのはよく見る例だが、お手軽居酒屋を目指す方が確率は高そうだ。ラーメン屋では間違いなく、ビールと餃子とラーメンで1000円みたいなお手軽さがいちばん受け入れやすいだろう。今では、王将もその方向に向かっている。ストイックに昼でも夜でもラーメンというのは流行らない、というかビジネス的に柔軟性が足りないというものだ。
日高屋でおつまみ3点盛りとホッピーを頼むと1000円でお釣りが来る。ちょい飲み需要とはそういうものだ。
そういえば最近、日高屋でラーメン食べたことないな。

串鳥 新生姜の豚肉巻き

ちょい飲みを居酒屋サイドで実現したのが、「串鳥」で、メニューのバラエティーが立派だ。焼き鳥以外にも、モツまで手を広げ、串焼きやというのが正しい。焼き鳥屋の代表格、全国を席巻する鳥貴族だが、いまだに札幌に出現していないのは串鳥対策ができていないからだろう。鳥貴族はメニューを絞り込み店内加工率を上げている。串鳥は店内加工を排除してメニュー幅を広げている。まったく方向性の違う二つのチェーンだが、共通しているのはどちらも安い、ちょい飲み志向のコンセプトということだ。そこそこ飲んで食べて2000円でお釣りが来る。串鳥は仙台、そして東京一部にまで広げているが、首都圏出店を本格的に拡大すればあちこちで鳥貴族vs串鳥の戦争が見られそうだが。

男山直営 金富士でガツ

そして居酒屋本業でもちょい飲み対応の店は人気で、6時を過ぎると入れないのが当たり前の札幌ススキノの酒蔵直営店金富士。ススキノには札幌の酒造メーカーの盟主「千歳鶴」の直営店もあるが、そちらはちょっとお高い路線で居酒屋というより割烹的な店だ。料理もいわゆる海鮮を中心とした和食で接待づかいもできる。一方、金富士は串焼き、それももつ焼きを中心に実にお安い。確かにこれこそ1000円でベロベロ、千ベロの元祖みたいな店だ。安くても客数が多いので、串焼きの鮮度もよろしい。ガツのぐにゃぐにゃした串を噛みしめながら、熱燗徳利で男山をちびちびと飲むのは、これからの季節にはありがたい。


八代亜紀の世界だなあ。