駅弁

わすれていた駅弁大会

毎年一月恒例の京王百貨店「駅弁大会」をすっかり忘れていた。FBに乗っている駅弁ニュース?で初めて気がついた。慌てて日程を確かめてみたら、なんと週末で終了ではないか。慌てて出かけてみたのだが、実はこの駅弁大会は販売される駅弁が二通りある。
一つは会場で製造販売する実演型で、こちらは行列に並べば必ず買える。朝イチに行けば、待たされる時間も少ない。それを狙って、同じ客が何個も駅弁を買っているので、同じ行列に並ぶこともある。年によって出展する駅弁業者が変わることはある。毎年必ず出てくる強者もいるので、その年によって買いたい駅弁が2個3個……………と増えることもあるが、朝イチから並べば必ず買える。
もう一つは輸送駅弁と言われるもので、こちらは現地から送られてくる駅弁を販売している。ただし、輸送時間の差があったり、交通事業の問題もあるようで、朝イチに全商品が並ぶわけでもない。だから、御目当ての商品の入荷が昼過ぎになっていたりすると、かなり悩ましいことになる。昼にまた買いに来るか、今回は諦めるか。
そして、輸送駅弁は昼過ぎに急速に売り切れが始まる。やはり着実に手に入れるには、11時前後を狙うべきなのだ。当たり前だが、駅弁ファンは大体この時間に集中して現れるので、長い行列ができたりする。

今回はすっかり出遅れていたので、お目当ての駅弁はほとんど売り切れていた。チラシを見ても、今年は有名どころでもある、賞取り駅弁の販売者があまり参加していないこともあり、少々甘く見てしまったのが敗因だ。
去年がコロナ騒ぎの中でのおっかなびっくり開催だったこともあり、なかなかしょぼい開催だったのだが、今年はほとんどコロナ前に戻った感じだった。会場内の混雑度も昔のような押し合いへし合いまでは行かないまでも、歩くのが大変なレベルには戻っていた。
そんな中、おそらく到着が遅れたため残っていた名品を手に入れることができた。新潟の駅弁ではワン・ツーの地位を占めると思うホテルハイマートの駅弁「にしんめし」だ。
この駅弁は姉妹版として「たらめし」「さけめし」がある。たらめしはすっきりした甘さで煮た棒たらが入っている。ニシン飯は身欠き鰊を甘辛く煮たもので、こちらは独特の濃厚味に仕上がっている。タラとニシンのどちらが好みかによるが、個人的にはクセのあるニシンが好きだ。

身欠ニシンを煮たものが3枚、ニシンの昆布締め。そして数の子とニシンだらけの弁当だ。甘い煮汁が下にご飯に染みていて、これがまたうまい。見た目通り、弁当というより丼系の仕上がりだが、まさしく冷めた米を美味しく食べるための駅弁だ。うましだ。一度は現地の直江津駅で買ってみたい。
実演会場の方も見て回ったが、今年は全体的に牛肉と海鮮丼(カニ中心)のラインナップで、駅弁のバリエーションが少ない気がする。確かにコロナの間に観光客が激減していたせいか、駅弁界も事業者の統廃合が進んだ。メニューの絞り込みも起きている。この先、観光客に頼らない需要創造が生存条件になるかもしれない。ただその過程で、従来の駅弁はきちんと保存して欲しいのだがなあ・

帰りの電車で旅情を味わいつつ駅弁を食べようと特急列車を予約していたのだが、なんと満席状態に近い混雑ぶりで駅弁試食会は諦めた。この3年間は、特急列車のガラガラ状態が続いていたが、どうやらそれも終わったらしい。さすがに酔っ払ったサラリーマンの姿は昔ほどは見かけないが、特急電車内で酒盛りするおっちゃんもちらほらいた。
ゆっくりと世界はアフターコロナに向かっているようだ。

街を歩く, 駅弁

金沢駅の駅弁 本物?

金沢の駅弁で、個人的にはこれが一番ではないかと思うのが、「金沢三昧」だ。これは豪華な駅弁だが、幕の内弁当系の絢爛な煌びやかさではない。よその土地であれば、このうちのどれかを主役にして一本勝負に出そうな役者を、贅沢に三人使いするのが百万石金沢らしさなのかもしれない。いや、実に贅沢。

中身は北陸名物を使い、カニとノドクロと和牛の3本建だった。比較的濃いめの味付けだが、これは冷めてから食べる駅弁特有の味付けなので文句はない。カニや牛の弁当はあちこちで見かけるが、両方が一つの弁当箱に入っているのは見たことがない。
その2トップに加えて、スーパーサブ的なラインが、「ノドクロ」だろう。最近メキメキと力をつけてきた日本海における魚の王者だ。従来のキング、ブリを押し除け、今や帝王級に上り詰めたノドグロを駅弁の上に乗せてくるとは、さすが金沢というしかない。
まあ、うちが本気出せば、こんなものよ………という金沢さん(誰だそれ?)の声が聞こえてきそうだ。おそらく京都を凌ぐ勢いの観光都市金沢では、熾烈な観光業界の競争が繰り広げられているのだな。駅弁も進化するはずだ。

駅弁

金沢駅の駅弁 観光戦争の引き金

金沢駅の駅弁の中で、頭一つ飛び抜けて高額なものが「越前朝倉物語」弁当だ。そもそも金沢は加賀国なので、なぜ隣国、隣の県の駅弁が売られているのか微妙な感じもする。東京駅で横浜名物のシウマイ弁当が売られているようなものか。その違和感はあるが、見るからにうまそうな弁当で、これは挑戦しなくてはならない、マストバイだと意気込んで購入した。
しかし、食べてみると越前朝倉氏と弁当の中身は、あまり関係がないような気もする。だが、福井県が誇る歴史的遺物としては、滅亡した朝倉氏根拠の一乗谷と現存する永平寺が二大巨頭だろう。福井県が誇る永遠の2トップだから、朝倉氏の投入は仕方がない。そもそも現存する永平寺は「刊行物名称」として使いにくい。「永平寺〇〇弁当」などとネーミングして駅弁を作れば、お寺の法務部?からクレームがつけられ知財訴訟に巻き込まれそうだ。少なくとも、お偉いお坊さんからやんわり説教されるのは間違いない。

弁当のふた?を開けると下から出てくるのが、九つに分かれた「ちまちま系」の松花堂弁当的な品々だった。その一つ一つにメニューの解説付きという、いたせりつくせりの心配りがある。これは、全国でもあちこちに見られる、少わけにした幕内、松花堂弁当系を販売する駅弁屋は、みんな見習ってほしい。素晴らしいアイデアだ。
青森の駅弁にもこれと似た、少区分の説明書きがついたちまちま弁当があった。ただ、青森版はメニュー名が印刷された別添のものだったので、わかりやすさから言えば福井版の方が上手にできていると思う。

お品書きを取り払うと下から出てくる、小料理の数々。ああ、これは絶対うまいやつだと見ただけで思う。ビジュアル的にも優れている。駅弁は見た目が茶色っぽくなりがちだ。煮物と揚げ物では色が出しにくいこともある。生物が使えないせいもあるだろう。だから、にんじんや卵焼きが色付け要員として多用されるのだが、この朝倉氏弁当は、色使いにも果敢に挑戦している。お値段以上の価値がある。(笑)
個々の料理の完成度も高いが、全体で構成した時の味の満足、量の満足、など駅弁界の至宝のようなものだ。肉だけ乗せた、蟹だけ乗せた、豪速球一本勝負的な駅弁が主流になりつつある駅弁業界で、製造効率も悪い幕の内弁当系で勝負しようという、越前福井県の意気込みには惚れ込んでしまう。
ただ、一乗谷に行っても、朝倉氏ゆかりの名物食べ物があるとは気が付かなかった。福井名物といえば、カニとサバ(へしこ)と油揚げくらいしか思い出せないのだが(勉強不足だな)、それが弁当の主力になっている感じもしない。
とても美味いが、浅倉氏との連携が今ひとつピンと来ない。まあ、それでもこの弁当の旨さに変わりはないのだが。ということで、この駅弁はマイベスト駅弁でトップ5認定とした。ちなみにトップ5は秋田県大館のとりめし、山形県米沢の牛肉ど真ん中、横浜の崎陽軒シウマイ弁当、長野県横川の釜飯。惜しくも次点が、青森の「ひとくちだらけ」になる。

ちなみに、以前購入した加賀「百万石弁当」も、九つに分かれたちまちま系駅弁だったが、どうもこちらが先行していたのではないかと思われるのだ。加賀百万石に対抗するべく、後発の朝倉氏弁当が開発され、おまけに値付けも百円高く設定するというにくい戦略をとったと推測できる。現代の越前国対加賀国、駅弁戦争勃発というストーリーが思い浮かんでしまった。

観光大国である加賀国が、越前国が仕掛けた駅弁戦争、そしてこの先の全面的観光侵略にどう対応するのかについての考察は、また別稿で考えてみることにしよう。北陸観光戦線勃発だな。

駅弁

米原で駅弁の本社を見つけた

城巡りでうろうろしていたらナビと違う道に進んでしまい、あれっと思う間もなく米原駅前に出てしまった。東海道新幹線は散々使ったので米原駅を知らないわけではないが、そこで降りたことはない。各駅停車の旅でも、米原は西行き列車の乗り継ぎポイントだが、やはり乗り換え時間が短いため駅改札を出たこともない。
ただ、駅前に駅弁屋がある珍しい場所だという知識はあり、迷い込んだついでに駅弁屋さんを探してみるかと思ったら、目の前の駐車場の向こうがその会社だった。
ここの駅弁「湖北のおはなし」は、実に素晴らしい幕の内弁当だ。駅弁大会でも、機会があれば手に入れる。秋田の鶏めしに並ぶマイベスト駅弁のひとつだ。

ただ、今回はその名作ではなくオーソドックスな駅弁を買ってみようと思い「近江の味」を選んだ。駅弁は包装紙で包まれて中身が見えないことが多い。パッケージが素通しで中身を見せる駅弁というのは、なかなかありそうでないものだ。食べてみて気がついたのだが、幕内系駅弁としてはちょっと変わっているような気がする。ただ、メニューで駅弁を選ぶ時に、中身の写った写真が乗っていたから中身に驚くことはない。変わっているなと思ったのは、あの名作と比べると地方色が見当たらないことだった。

蓋を開けて食べ始めてみると、実にオーソドックスな幕の内弁当だった。おかずは煮物中心で甘めの味付けだが、これが駅弁では重要なポイントだ。冷めた白飯をうまく食べるには、甘味が強めの煮物が一番よく合う。その甘味の強いおかずの合間、箸休めに卵焼きや蒲鉾などのあっさり系おかずを食べる。自分なりの味ローテションを考えられるのが、幕内駅弁の良いところだろう。トンカツとか海老ぐらいなどの揚げ物駅弁は、その点で多少ハンディがあるように思う。ご飯を美味しく食べたければ幕内系と勝手に決めつけている。
こちらでの会社では「おかかごはん」という一芸突破型の駅弁もある。どうやらこれも白飯のうまさ重視型のようだ。次回はそれにしてみたい。ただ、この駅前のお店には食堂というか蕎麦が食べられるイートインが併設なので、蕎麦も食べてみたい。各駅停車の旅の休憩ポイントして、しっかり記憶しておこう。ちなみに、米原からは西行きの快速が頻繁い運行しているので、待ち時間を気にすることのないありがたい駅だ。駅前探検をするには良い場所だ。

駅弁

加賀百万石で駅弁

駅弁とコンビニ弁当を同列に語ってはいけない、といつも思う。駅弁、特に幕内系のおかずいろいろ盛りだくさん弁当を、コンビニ幕内弁当と比べるのは失礼だという気がする。幕内駅弁に近しいものとは、やはり歌舞伎観劇の時に幕間で楽しむ真正・幕の内弁当ではないか。
あるいは和食惣菜店のちょっとお高い幕の内弁当(松花堂弁当などという懐石系の弁当も含む)でも良い。ただ、最近の駅弁の傾向として、ヒット商品は「一芸達成型」が多い。牛肉が一面に載っている焼き肉系や、イクラとサーモンが全面に敷き詰められている海鮮系が駅弁ランキングにトップを占めている。幕の内弁当は旗色が悪い。しかしだ、自分の好きなのはゴージャスな幕内であるのも間違いない。米沢の「牛肉ど真ん中」も好きだが、弘前の「津軽のうまいもん」とか、京都駅で買った「近畿味巡り」みたいなちまちまおかずたっぷり弁当が好物なのだ。
確かに、駅弁とは冷めた時にうまく食べる工夫がされている弁当だ。コンビニ弁当のようなレンジアップを前提とした弁当とは、そもそも料理法や味付けからして異なる。別の種類の食べ物と言って良い。
冷めた白飯をおいしく食べるには、濃い味付けの肉や魚を白飯と一緒にかき込むスタイルが正しい。それはわかる。ただ、駅弁の楽しみ方として(最近はちょっと難しい感もあるが)、車窓の光景を眺めながら、幕内弁当のような「ちまちましたおかず」を肴に一杯やる、という古典的な旅のお作法があるではないか。それが肉だけ弁当だと、あるいはいくらだけ弁当だと、ちょっと辛い。

駅弁で美の極み

そういう旅を満喫する名脇役として、この加賀「百万石弁当」はパーフェクトだ。上段中段にならぶ6種のおかずは、ほぼ完全に酒のつまみだった。右上段に入っているあんころ餅がデザート的に見えるが、酒の肴の箸休めとしては秀逸すぎる。
崎陽軒のシウマイ弁当に入っている杏のようなものだ。駅弁に入っている甘いものは、小ぶりで一口サイズだ。どの駅弁でも似たようなものになっている。駅弁界の並行進化というか収斂進化というか。「駅弁甘味の法則」と言いたいくらいだ。このあんころ餅もサイズ、味共に実に納得できる。
下段には三種類の飯グループがそれぞれ独自な主張をしている。炊き込みご飯、押し寿司、そして梅干白飯と米ですらバラエティーを楽しませる。作り手の哲学、味のエンタテイメント性重視がよくわかる。
まさに美食の国、加賀の駅弁だ。感服した。と思っていたら、これより売り上げランキングが上の幕内系駅弁を発見してしまった。なんと「朝倉氏」にちなんだもので、これは金沢駅弁ではなく福井駅弁では?とも思ったので、今回はパスした。が、次回は是非にも金沢駅ナンバーワン駅弁に挑戦してみたい。

駅弁

各停の旅 駅弁【大館と弘前】

秋田駅で買った鶏めし

各駅停車の旅では、タイミングよく昼飯を食べることはなかなか難しい。乗り継ぎ駅での最優先事項は、まずトイレに行くことだ。トイレ付きの車両もあるので、そこは乗る前によく確かめると安心だ。
その後で、おもむろに食べ物の調達に取り掛かる。コロナ前であれば、車内で適当に食べたり飲んだりしていた。それが最近ではちょっと憚られるところもある。車内がほとんど無人状態にでもなれば、駅弁を食べカップ酒を楽しむこともできそうだが。

秋田駅から早朝に出発する羽越本線で移動を開始した。日程から考えると、酒田で待ち時間が長くあり、そこで駅前食堂を探すという手がある。ただ、秋田で売っている「鶏めし」は誘惑的で、万が一のために調達した。なんといっても個人的駅弁ランキングトップクラスの大館「鶏めし」だ。日内地鳥を使った高級版も売っていたが、やはり定番の鶏めしに愛着がある。
秋田駅は改札の外にお土産品と駅弁を扱うキオスクがあり、コレはとても素晴らしい。新幹線改札内に駅弁屋を作らない良識的な駅の作り方だ。
結局、鶏めしは酒田駅の待合室で食べることになった。酒田で駅前食堂は、存在が確認できなかった。

弘前駅でも青森を代表する駅弁が並んでいたが、今回は弘前産駅弁にこだわってみた。駅弁売り場のお姉さんが、やたら推しまくっているのに負けたという方が正しいかもしれない。推しの理由は、わかめで巻いたおにぎりとのことだった。見た目には黒いいなり寿司にも見えるが、コレはわかめでそれも「若いから柔らかい」そうだ。

わかめのおにぎりは目新しい。斬新な味だった。確かに自分の家では作れないかもしれない。おにぎりを巻けるほどのワカメというのは、手に入りにくいだろう。ただ、それ以上に感動的だったのが、赤いご飯のいなり寿司だった。おお、コレが噂に聞く青森の隠れ資産、超甘いいなり寿司か。実食してみてよく分かった。本当に甘い。日本の北と南の地方では砂糖が大量に投入された料理が多いそうだが、津軽も甘い物好きな人々らしい。イガメンチもうまかったが、これでは少なすぎるので、もう一個追加してほしい。

ちなみに、大館駅前の鶏めし製造元、花善で買おうとした弁当売り場だが、中には従業員が見当たらず、駅弁を買うことができなかった。コレはちょっと残念な体験だった。大館に行くことなど、2度とありそうな気がしないので。
珍しい駅弁体験だったと、諦めることにしよう。

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各停の旅 駅弁 【水戸】

水戸駅の駅弁はキオスクで売られている。それなりに種類も多い。まずイチオシは印籠弁当で間違いないが、これは既に食べたことがある。個人的に二番推しは奥久慈しゃもべんだが、この先の駅弁計画に被る可能性が高く、今回は避けた。
今回初見参したのは「釜揚げしらす弁当」だったので、とりあえずこれにしてみた。駅弁は幕内的なものより、一品豪華な変形丼みたいなものの方がうまいと思うので、ちょっと期待してしまった。

大洗名物とは言われれば、思い出す食べ物がない。薄ぼんやりとアンコウが名物だったような覚えもあるが定かではない。はっきりと思い出すのは、某戦車道女子学園のアニメだ。アニメを使った町おこしで、ごく初期の成功例だったような記憶がある。リアルな街中を戦車が走り回るというアイデアはじつに愉快なものだった。じつ風景をアニメに取り込む「聖地化」の成功事案だったはずだ。
ところが、この大洗名物釜揚げしらす弁当には戦車娘の影も形もない。豪速球だな。

蓋を開けて見るとちょっと嬉し苦なった。ご飯の上に白子が敷き詰められている。このタイプのふりかけ満載飯というかおかずがご飯を隠してますよ的弁当には当たりが多い。山形の牛肉ど真ん中が典型だ。真ん中の梅干しも良い趣味だ。ワシワシと飯を方張り、米を楽しむ弁当だろう。
あんこうの唐揚げは、普通にうまい。サカナの唐揚げといえば白身魚のフライが乗っていることが多いが、あれはほか弁だけが許される手抜き技だろう。駅弁世界では、やはり白身魚は避けてほしい。その点で、このあんこう唐揚げは大正解だ。ソースなどいらない、衣の味付けとのバランスが良い。ちなみに明太子が乗っているのは、大洗に明太子の視察型工場があるせいだろう。明太子は加工品たから大洗でタラが取れるわけではないと思う。
腹ペコの時に食べるにはうってつけの駅弁だった。今度は、大洗にあんこう食べに行きたいぞ。

駅弁

駅弁 伝統 美食?

函館の駅弁が札幌で手に入る。なんとも不思議な感じがするが、札幌駅の大きな土産物屋で札幌の駅弁ではなく函館の駅弁を販売している。どうやら、朝一番で移送してくるらしい。昼前には売り場に何種類かの函館駅弁が並んでいる。
前々から気になっていた、「みがきニシン」の入った駅弁を今回は選んでみた。みがき弁当と書いてあるが、これは身欠き鰊(干したニシン)を甘辛く煮たものを指しているようだ。
二心を甘辛く似たものが乗っているニシン蕎麦は京都あたりでよく見かける。江戸期の日本海航路全盛時代に生まれた「ニシン物流」の落とし物だ。ところが、ニシンの物流発信地である北海道では、ニシン蕎麦をあまり見かけない。そもそもニシン料理が少ない。塩焼きと切り込み(ニシンの塩辛)、それに昆布巻きの中身くらいしか思い浮かばない。
北海道日本海側の地域では、ニシンは売るものであって食べるものではなかったのだろうか。だから、この弁当は原住民の土着食というより、観光客に対してのイメージ戦略メニューみたいなものなのかもしれない。

弁当の蓋を開けると、数の子と身欠きニシンが前面に敷き詰められている。駅弁らしいというか、シンプルというか。ただ、この全面におかずを敷き詰め、下の白飯が隠されて見えないタイプの駅弁には名品が多い。山形米沢の「牛肉どまんなか」や広島宮島の「あなごめし」など、この系統の絶品だ。どちらも、ただただ無言で飯をかきこむうまさ、究極の駅弁のひとつだ。
だからこの「みがき弁当」もルックスからすれば期待値は高い。最初の一口を数の子から行くかニシンから行くかちょっとだけ迷う。やはり、ここは「みがき弁当」なのだから、「みがきニシン」の煮物から始めたい。
実食すると、身欠き鰊の煮物は甘さは控えめで、身はほろほろと崩れる柔らかさだった。もう少し固いかなと思っていたが、現代的なアレンジでは柔らかさが重要だろう。味付けも昔食べていた「甘辛い濃厚味」ではなかった。上品というか薄味というか・・・・。個人的にはちょっと物足りないような気もするが、意外とこれが白飯とはバランスが良いような・・・。微妙なところだ。
続いて数の子を食べる。これもプチプチ感が命の数の子だが、しっかり歯応えがあり満足できる一品だった。ただ、これも予想外に塩味が控えめで物足りない気もする。強い塩味のおかずで白飯を大量に書き込むというスタイルは、もはや遠い昔ということらしい。
一番塩味が強かったのが大根の漬物だった。やはり、函館の漁師風な味つけはすっかりマイルドになってしまったらしい。港町の駅弁といえば、カニやイクラや鮭といった海鮮大スターに占拠されているが、この身欠き鰊のような渋い役で固めた古典作品は捨て難いよな、などと最後に取っておいた漬物を齧りつつ、感慨に耽るのでありました。身欠きニシン、うまし。

駅弁

大好きな駅弁大会 その3

今年の駅弁大会はなかなかか盛況だったと思うのだが、開催直後から一斉に感染拡大が始まり、なんだか後半は息切れした感じもある。それでも実演弁当はどれもこれもうまそうな気配を醸し出していた。出来立ての駅弁というのも不思議な話なのだが、そこが楽しみといいう人も多いのだろう。

今年の出店の中で、我がイチオシだったのが秋田県から登場した「鶏めし」で、これを買うために駅弁大会に来たといっても良いくらいだ。行列に並ぶと製造工程が見えるので、それがちょっと楽しみだった。鶏めしは将軍ランクにある有名弁当だが、それを超えるアップグレード鶏めしも販売していた。

比内地鶏の鶏めしは、鶏肉の代わりに比内地鶏が乗ったスペシャルバージョンだった。たまたま、この日は比内地鶏の方が人気だったようで、売り切れ中だった。30分ほど待てばできるというので、迷わず予約して店内をぶらついて時間潰しをし、ようやく調達できた。いつもの赤い包装紙ではなく、高級感のある地味目の包装がなぜか食欲を刺激する。高そうだから、うまそうというわけでもないが。

蓋を開ければ、普通版鶏めしと似たようなルックスだが、既に脳内には「比内地鶏=高級鳥」という情報がインプットされているので、情報バイアスかかりまくりで、何やらとてつもなく高級そうな魅力を感じ始めている。当然、一口食べると「うまい」と思う。ただ、頭の片隅で「普通の鳥飯と何が違う?」という悪魔の囁きも聞こえてくる。仕方がないので、普通版鶏めしの写真を引っ張り出してきて比べてみた。

ご飯の上に乗った卵と鶏そぼろはレイアウト違いだがほぼ同じだろう。鶏肉トッピングは明らかに見た目が違う。味も確かに違っていた。一番違うのは、付け合わせのおかずの品数だが、内容はほぼ同一でも、ちょっとしたアップグレード感はある。

鶏肉の好みで言えば、普通の鶏めしの方が気に入っているかも、とも思う。ただし、そこは個人の好みの範疇で、歴然とした味の差があるほどでもないとも思う。それでも、普段口にすることが難しい比内地鶏を食べたという、情報過多で情緒的な満足感はあるから、駅弁としては「比内地鶏の鶏めし」のほうが記憶に残るかもしれない。
どちらにしても、この駅弁「鶏めし」が駅弁自己ランキングでは最上位グループに入るのは決定なので、食べて残るものは満足感だけだ。
あとは、この鶏めしと比較するため、かの有名な「九州のかしわ飯」を食べねばいけないが、博多駅で売っていたかなあ。鶏めしは全国あちこちで販売されているので、鶏めし駅弁行脚でもしてみようか。たのしそうだなあ。

駅弁

大好きな駅弁大会 その2

また駅弁の話だ。今年の駅弁大会では、過去の駅弁大会優秀弁当「将軍」に認定された弁当が、復活販売されていた。将軍位に輝いた弁当は、地元に行けば定番として販売されたりすることもあるようだが、季節限定だったり、あるいは販売中止になっていたりすることもある。その過去の「将軍」認定された弁当で、新潟直江津の弁当がとても魅力的だった。これも、いつかは新潟に遠征して食べてみたいなと思っていたものだ。それが、特設カウンターで数量限定ではあるが販売されていた。素直に嬉しい。

製造元は、駅弁屋ではなく駅前にあるホテルというのが珍しい。パッケージは、これまた何やらそれっぽい。

日本海沿岸の文化圏ではよく食べられている棒鱈(干したマダラ)を甘辛く煮込んだものが乗っている。これの親戚みたいな感じで、身欠ニシンを甘辛く煮たものを乗せた弁当もある。そばに乗せれば、京都名物にしんそばだ。が、タラそばはみたことがない。ちょっと不思議な気もする。
たらこと、鱈の身の甘酢漬けものっている。鱈オンパレード状態の弁当だった。素朴といえば素朴だが、棒鱈の甘煮の完成度が高いせいで、現在主流の肉乗せ駅弁よりも、お気に入り度合いは高くなった。
この手の駅弁は新作であまり出てこないようだから、ぜひ定番として残しておいて欲しい。まさしく、食の文化遺産だと思うが、JR直江津の乗降客数を想像すると、定番販売をするのはとても大変なことのような気もする。
全国で駅弁大会がもっと開催されれば良いのだろうか。百貨店イベント関係者の方々、他人様の企画を「パクる」のも悪いことばかりではないですよ。なんせ、新宿では58回も続いているのです。第1回の時に生まれた子供が、アラカンになるほどの長寿人気企画ですし、ぜひ、全国各地での開催をご検討いただきたい。
札幌でもやって欲しいなあ。