街を歩く, 食べ物レポート

銀座の風景 11月の晴れた日

銀座にはぶらぶらしに行くことが多い。用事がある時も、時間に余裕を持ってぶらぶらしてみる。

銀座にあるアンテナショップに買い物に行ったついでに、久しぶりの「路面スパ」を食べに行こうと思った。コロナの間は、銀座もおとなしい街になっていて、この店も暇そうな時もあった。それが、今や完全復活というべきか、30分以上待つ行列が戻ってきていた。行列に並ぶのがありがたいと思うわけではないが、銀座で商売していくためにはこれくらいの人気がなければなあ、などと思ってしまった。とりあえず、めでたいかな。

いつもの通りで、和風にするかナポリタンにするか迷ってしまったが、やはり定番ナポリになってしまう。一つ、昔と変わったことは、大盛りには見向きもしなくなったこと。両隣の客がどちらも大盛りを注文していた。その隣は大盛りの上を行く横綱級だった。その麺量を見て、やはり普通盛りで正解だったと安心した。
ナポリの味付けは極端に濃いわけではない。太めの麺に絡むので、適当に濃い味付けではあるが、やたら喉が渇くということもない。某スパゲッティ専門店の油ギトギト系とも違う。この店も大盛りで有名とは言え、銀座の風格?みたいなものはあるのだろう。久々のナポリに満足した。うましだ。

以前と変わっていたことが、テイクアウトの注文が多くなっていることで、メニューチラシももらえるようになっていた。行列に並んでいる間も、頻繁にテイクアウト注文を取りに来る客がいた。炒めスパは麺料理として考えると、テイクアウトをしても劣化しにくいので、意外と利用しやすいだろう。2個3個と持って帰る人も多い。お使い当番がいれば出前より便利だしなあ。

その後、銀座の裏通りをぶらぶらしていたら、どうもスケートリンクらしきスペースができていた。おそらく季節限定だろうが、銀座の真ん中でこんな遊び場ができるというのも、これまた不思議な光景だ。
コロナのもたらしたあれこれの被害?の中で、銀座にできた空き地を有効活用する人たちもいるということだ。商売というより、銀座の心意気みたいなものか。ちょっと嬉しくなった。
さて、正月を過ぎたら銀座はどんな具合になっているのか、また確かめに行こう。

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孤食の喜び 今年も増えそうだ

立ち飲み、立ち食いの店には一人で入るものだろう。そこには、小さな満足と幸せがあると思っている。札幌の地下を歩いて見つけた一軒に入ってみた。

立ち飲みの良さは、チャチャっと飲んでさっさと帰る気楽さにあると思う。ただ、コロナのせいなのか、それとも時代の変わり目のせいか、立ち飲みの店がどんどん減っているというのが実感だ。だから、立ち飲みの店を見つけたらとりあえず試してみる。
はずだったが、この店は昼は立ち食い蕎麦、夜は立ち飲みの二毛作らしく、午後早くに入ってしまい、飲み始めるには中途半端な時間だったので、とりあえず蕎麦を食べることにした。

蕎麦が来るまで「夜のメニュー」を眺めていた。ホウと感心したくなる充実したメニューだ。立ち飲みというから、そばの上に乗る「トッピング」をつまみにいっぱいやるみたいな感じだと思っていたが、これは「立って飲む」居酒屋だ。蕎麦屋の二毛作とは言えないハイレベルだ。
蕎麦味噌に焼きのり、板わさで熱燗をキュッと的な、蕎麦屋の飲み方を考えていたが、これは本格的に座って飲むタイプではないか。
などと考えていたが、立ち飲みではありながらカウンター椅子席が半分くらいあるので座り飲みもできそうだ。飲み過ぎるとちょっと不安なカウンター椅子だが、飲み過ぎる前に退散することにすれば良い。

注文したラー油蕎麦は、いつも食べているラー油そばとはちょっと違うタイプで、蕎麦つゆがサッパリ系だった。次に来る時には、蕎麦屋の王道、もりそばとかけそばを頼んでみなければ。もりそばでちびちび酒を飲むことにすれば、蕎麦も酒も楽しめるし、立ち飲みも達成できる。
やたら明るいビル地下の飲食街にあるので、飲み屋感はあまりないが、立ち飲みは薄暗い店より明るい店の方が良いと思うので、そこは問題なしだ。小洒落まくった薄暗い店内でスポット照明が当たったテーブルで食べる蕎麦など、歓迎したくもない。
地下通路直結なので、雪や寒さの影響もなく、夏冬とも快適そうだ。これは重要な孤食ポイントだな。

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札幌シリーズ 焼き鳥屋完全復活

名称が変わった「岩下の新生姜 豚肉巻き」 コラボなのですねえ

札幌の焼き鳥は、鳥と豚ともつが混在する。正確にいうなら串焼き屋というべきだろう。そして、焼き鳥屋の一番人気は、実は鳥ではなく豚であることが多い。だから、札幌では東京からやってきた全国チェーン焼き鳥屋が定着しにくい、というかほとんど存在しない。
だから札幌の高級焼き鳥屋として繁盛している店でも、鳥だけにこだわっているわけではない。やはり豚人気も強く、おまけに高級店では海鮮串が人気だったりする。その札幌焼き鳥事情に文句があるわけではなく、ファーストオーダーはいつも生姜の豚肉巻きにしている「豚肉」ファンだ。その後は、つくね数種、ささみを頼むくらいで注文メニューの鳥率は限りなく低い。

ただの水 大ぶりのグラスがうれしい 

そして最初の飲み物の注文は水になる。誤解を避けるために弁明すると、水だけを頼むわけではない。酒も頼む。が、酒と一緒に水を頼むと、水だけ忘れられることが多いので(おそらく注文表に水は出力されないせいだろう)、その予防策として最初に水を頼むと便利だと気がついた。水が出てきたらすかさず酒を注文する。生活の知恵というか居酒屋ライフハックというか。ただ、面倒な客だと思われるかもしれない………

道民の醤油復活 これを大根おろしに垂らして食べるのが楽しみだ

コロナの間は、感染防止のためと称して卓上から調味料などが消えていた。必要な方は従業員にお声がけください、という表示も控えめで、唐辛子なしの焼き鳥を食べてしまったこともある。米国CDCの発表を信じるのであれば、コロナの主因は空気感染(エアロゾル感染)、飛沫感染で、接触感染はほとんどないようだ。だから、手指のアルコール消毒の意義というか意味についてはもう少し科学的な検証をしてほしいとずっと思っていた。(あくまでコロナ対策として)
相変わらず入口での儀式的消毒は続いているが、卓上に戻ってきた唐辛子と醤油を見ると社会常識として「接触感染」を訴える政府厚労省、及び政府関係下の医療従事者の発言は、誰も信じていないのだなという気がする。
ただ、コロナ対策としてではなく、他の感染症対策として日本全体で安全安心運動が実施されたと考えれば、これは意味あることだ。飲食店の衛生意識も、これまで以上に鋭敏化し向上したのは間違いない。コロナが増えたらノロウイルス食中毒が減った。これは逆相関と言えそうだ。
コロナ対策としてではなく衛生環境改善と考えれば、入り口の消毒が続くことには同意できる。面倒臭いと言われればそれまでだが、少なくとも食事をするたびに消毒する羽目になるのは、偉大な啓蒙活動だ。手洗いの頻度も増えるだろう。日本人の健康な生活、というテーマで考えれば継続するのが大正解だ。
まあ、そんな志のある政治屋はこの国に存在しないので、安全安心大運動は実現はしないだろう。現代の政治屋の特徴は、増税に対して実に簡単に決断するということだけだ。自分対tの経費削減には与野党連合で反対するくせに。大増税は、歴史が証明する「革命」の前兆なのだがなあ。

ささみにかかった梅ソースが好物だ

最後にささみの梅ダレを頼んだ。これは、うまい。砂肝の塩焼きも旨いが、やはりお店独自の調味料開発をした「かわり焼き鳥」はその店の看板商品だから、あれこれ注文したくなる。ただ、この庶民の味方と言いたい焼き鳥屋もコロナの影響に耐えきれなくなったのか値上げをした。それでもまだまだリーズナブルなお値段なのだが、何かちょっとほろ苦いものもある。でもまあ、店が閉まっているより値上げしても良いから開けてくれた方が何倍マシなことか。焼き鳥を食べる楽しみは、不滅であってほしい。
ようやく焼き鳥屋が繁盛する社会に戻ったのは実に嬉しい。

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いつものご近所中華で思うこと

初めて食べたソース焼きそば

いつもの満州で昼飯を食べようと出かけたのだが、今月のおすすめメニューがなぜか「冬のラーメン」特集になっていて、どうにも食指が動かない。そこで、今まで食べたことのないメニューに挑戦しようと思い、メニューを端からずっと眺めてみた。
まじまじと何度も見返してみたが、食べたことのないメニューはたったひとつしかない。ソース焼きそばだった。
頼んでみたものの、ソース焼きそばを食堂で頼むのはいかがなものかという疑念というか不安が残る。ソース焼きそばとは、お好み焼きやで頼むもの。あるいは、縁日で頼むものという刷り込みがあるせいだ。家でも作れるソース焼きそばだけに、中華料理屋の正規メニューとしてはお手軽すぎないかという気もする。あれこれかんがえていたが、食べた結論としていうと、これは酒のつまみだな、というものだった。
やはり、食事としての麺料理というには頼りない。味付けも、好みに差が出そうだ。個人的にはソースじゃぶじゃぶかけて食べたいので、ソース瓶を一緒に出してほしい。
ただ、この横にレモンサワーでも置いてあれば、絶好のつまみになりそうな気がする。冷めても、つまみとして食べる分には十分満足できる。蕎麦屋でもりそばをちびちびつまみながら日本酒を飲むという感覚に近いかもしれない。紅しょうが別添というのも嬉しい。おまけに付いてくる中華スープが最高だ。満州のベスト商品の一つは、この定食についてくる中華スープで、できればおかわりしたい。この店のメニュー絞り込みは、もはやファストフードというべきだろうか。酢豚の導入をお願いします、と言いたい。

㐂伝ラーメンにメンマ追加

幸楽苑に何ヶ月ぶりかで行った。あれこれ、特設メニューは出ているのだが、どれもなんだか気がのらない。結局、いつものラーメンになってしまった。
この店に来ると恒例で思うことだが、ラーメンというフォーマットを横に広げるのか、縦に広げるのか、このブランドは迷走している。横に広げるとは、スープ、麺、トッピングを追加してラーメン・麺メニューを増やすことで、一時期の日高屋がやっていたことだ。ローカルで有名な麺料理を、全国チェーンが取り込むというのは戦略としてありだろう。
このブランドの地盤である東北に限っても、青森の煮干しラーメン、秋田の濃厚豚骨、山形の辛味噌ラーメンなどなど取り込める要素は多いはずなのだが。西日本に目を広げれば、関東圏には未到達な独自のラーメン文化がある。
縦に伸ばすというのは、ライスメニューの拡充や唐揚げ、餃子などサイド系肉料理を増やして「中華料理屋」化することだ。日高屋はこの路線を走って成功したが、居酒屋化しすぎてコロナで厳しい打撃を受けた。
ファミレス業界では中華コンセプトが難関ビジネスモデルになっているが、肝はチャーハンと餃子とラーメンなので、そのベースをこのブランドは持っているのだから、伸び代はあると思うのだが。課題は商品の磨き上げと省人化をどう並行して進めるかだろう。今は、省人化だけにしか目がいってないような気がする。
少なくとも、自分の好みである豚骨醤油ラーメンはもう少し磨き上げてほしいなあ。メンマとチャーシューも、行列のできるラーメン店に通って研究してほしい。せめて、追加トッピングで良いから極太メンマ導入してくれないかなあ。

といつものご近所中華、定点観測でした。

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札幌シリーズ冬の札幌で食べた鮨

12月初旬の札幌はこんな感じで雪がなかった。東京に戻ってきた後にドカンと雪が降り、今や路面は完全に真っ白で凍結しているらしい。毎年、クリスマス直前には街が雪で埋もれる。ここ何年間は、空港閉鎖されるほどの大雪も何度かあったので、今年は雪が少なめだと良いのになとは思う。
寒いのは平気だが雪は嫌だ、と最近よく思うようになってきた。北海道で生まれ育った記憶が薄れてしまったせいだろう。
もっとも、東京の大雪ほど最悪なものはない。札幌の雪の100倍きらいだ。東京に大雪が降ると3-4日は外出しないことにしている。除雪のノウハウが足りないので、凍結路面を含め、実に危険な状況になるからだ。

そんな雪のない札幌で、これまた恒例の鮨を食べに行った。都心部にはあるがちょっと町はずれという場所にある。一時期は外国人観光客に占拠されてしまって、1時間まちが当たり前だったが、最近はほぼ日本人客のみで、待ち時間もすっかり短くなった。
まず最初に鮭のユッケを頼む。正しくいうと「ユッケ風」なのだろう。甘く仕立てた濃厚醤油たれに絡めた鮭に、卵の黄身をグチャグチャに混ぜ、ねっとりとした食感を味わう。これを発明した職人さんは偉い、といつも思う。
料理は創意工夫とはいえ8割はどこかに存在する旨いもののアレンジだ。コピーやアレンジはどんどんやってほしい。失敗した作品は誰も注文しなくなるから自然淘汰される。勝ち残ったものが、次の世代の模範になる。そのためにも、職人さんはあちこちで食べ歩きしてほしいものだ。

蝦夷アワビは本当に美味い

年末なのでと自分に言い訳をして、まず「アワビ」を頼む。一度でいいからアワビ10貫という注文をしてみたいものだ、と思っている。ただ、実際に目の前にアワビが10個並んだら、意外と食べきれないのかもしれないと恐れてもいて……………注文する勇気が湧いてこない。
食べ放題の鮨屋で知人がウニ20貫という注文をした時のことを思い出した。目の前に出てきたウニ20貫は、相当な迫力だったが、結局最後の6貫は知人の食べ残しを、こちらが処理することになった。ウニ6貫でも、当分ウニは食べなくて良いかなと思う量だった。なにごとも食べ過ぎは良くないようだ。ただ、アワビも4貫くらいならいけそうな気がする

最近、イカの値上がりのせいですっかり見かけなくなったゲソが二番目の注文だった。この海苔で巻いたゲソというのは、本当に何か鮨とは別物の世界にいるようだ。店によっては甘だれを塗ってくれる。今回は、醤油なしでそのまま食べた。うましだ。

最後は、マイカとしめ鯖だ。これもいつもの定番で、マイカは漁獲量が激減したため今や高いネタのレギュラー選手になってしまった。イカそうめんなどステーキ並みの値段となり、おいそれと楽しめるものでは無くなってしまったのが残念だ。
この店のしめ鯖は自家製で、締め具合が絶妙なものだ。しめ鯖は酢で締めるのではなく塩で締める。その技が徹底されているのがすごいところだ。札幌では、自家製しめ鯖を出すところが主流なので、全国チェーンの回転寿司屋に行くとその落差がよくわかるし、激しすぎる。札幌で百円回転寿司は、魚を食べに行くところではなく、肉乗せ軍艦を食べる場所だという話を聞いた。確かに、札幌の鮨屋で炙りカルビ軍艦は出てこないなあ。
などと馬鹿なことを考えながら、今年の冬のルーティンを終了した。東京で鮨を食おうという気にならないのは、このの好き勝手な鮨食い習慣があるせいだろうか。

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札幌シリーズ ジビエと野菜

コープ札幌は時々びっくりするような企画をしている。コープというと真面目でおとなしいイメージがあるが、札幌と仙台の生協は何やらローカル・スーパーマーケットよりはるかに進化しているような気がすることが度々だ。戦闘力が高いというべきか。
この「ぶこつ野菜」というのも、なかなかチャレンジ精神があふれている。POPが手作り感(多分パソコンで担当者が作った)がまんまんだ。

ぶこつ野菜とは、あまり見た目にこだわらず、中身で勝負ということらしい。根菜中心に日持ちのする野菜が並んでいる。これであれば少人数家庭でも何日間に分けて使うことができるだろう。農作物は収穫の手間より、選別の手間がはるかにかかる。その手間にかかる人件費を抑えるには、大小や傷の有無、見た目などで選別しないのが一番だ。
野菜を箱買いしても思ったほど安くならないのは、箱の中身も選別されているせいだ。そうした流通業の掟をどう打破していけるか。昭和生まれの高齢者は、見た目や大きさにこだわる習慣をつけているので(つけられたので)、この「綺麗な品物大好き病」の呪縛から逃れられない。おそらく平成後半生まれの世代が消費の中心になる時期に、転換点が生まれるような気がする。この「ぶこつ野菜」が、その時代の先駆けかもしれない。ということで、ぶこつ野菜をいくつか買ってきて、料理をすることにした。

最初は「野菜中心」のすき焼きにしようと思った。北海道ですき焼きといえば、ほぼ豚肉になる。牛肉ですき焼きという家庭は、ルーツが間違いなく道外、それも西日本に近いところだろう。札幌圏であれば関東・関西からの転勤族は牛肉のすき焼き、地元民は豚肉ですき焼き。だから、すき焼きの会話になると、いきなり紛糾する。おまけに、牛肉すき焼きには流派があり、関東風と関西風の調理法の差が、揉め事を大きくする。(笑)
少なくとも、これから結婚しようとする北海道のカップルは、すき焼きと雑煮とジンギスカンのお作法を確認しておいた方が良い。料理の恨みは一生祟る可能性もある。ルーツが全国の流れ者で構成される北海道特有の問題だろう。
そもそも、人口200万人近い大都市札幌でも、牛肉のすき焼き屋を探すのは難しい。今でも、存在を確認できない。平成初期に最後のすき焼き店が無くなったような記憶がある。
牛丼屋ですら人口と比較すると明らかに少ない。日本最大の外食企業、マクドナルドですら人口比で言えば東京の半分以下の密度なので店舗網がスカスカだと感じる。北海道は、それくらい「牛肉」の人気がない地域だ。
話を戻す。すき焼きも豚肉が主流になるが、すき焼きではなく「肉鍋」と呼ぶこともある。個人的には、こちらの方がしっくりくる。調理法は「焼き」ではなく「煮る」鍋で、野菜が多めであることが正統すき焼き?とは違う。
が、今回は貰い物の鹿肉があったので、鹿肉すき焼きにしようと思った。これはちょっとレアものだ。鹿肉は、当然ながら野生なので季節によって味が違う。冬手前であれば、餌の少ない冬に備えて丸々と太っているはずで、脂が乗っているらしい。春先になると、冬越えをして痩せている、つまり肉も脂身が少なくなる。発情期の肉は匂いが強い。だから、時期によって食べ方は変えた方が良いと聞いた。もらった鹿肉を切っているうちに、意外と脂身が少ないことに気が付き、食べ方を変えることにした。これは焼き肉にすべきだ。焼き肉にすれば、なにやらワイルド感もある。
いそいそとホットプレートを出してきて焼き肉を始めたが、意外とクセのある肉だった。そこで、焼肉のタレをジンギスカンのタレに変えた。ということは、これは焼き肉というより鹿肉ジンギスカンではないか。だいぶすき焼きから遠ざかった。
羊の肉より煙が出ないのは脂身の違いらしい。ジンギスカンの焼ける匂いは独特で、羊を食べているなという気がするが、鹿肉は煙に特徴的な匂いは感じなかった。少しもっさりとした食感がするにくで、豚肉よりも鉄分の味を感じる。
これが冬の北海道名物になるとは思えないが、冬にしか食べることのできない食べ物であることに間違いない。自宅でジビエ料理とは、なんとも不思議な気分がするが。ぶこつ野菜とは相性が良いので、冬の焼き肉は鹿に限ると言いてみたいが、鹿肉はどこでも手に入るわけでもないからなあ。普通に肉屋では売っていないし………
やはり猟師を友達にするしかない、という途方もない結論でした。

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成田で博多ラーメン

LCCを使って旅をしようとすると、成田空港に行くことになる。羽田空港に行くのと比べ、地上の移動時間は1時間ほど増える。ただ、飛行機に乗った後の移動時間は変わらないので、長距離旅行であれば経済性は良くなる。手荷物の重量制限があるので、結果的にスリムな荷物選びを迫られる。軽装な旅になるのもメリットだ。
その成田空港LCCターミナルに、しばらくぶりに行くと改装完了していた。フードコートもお店が増えていて、一時期の閑散とした雰囲気もどこにいったやら。ほぼ全席満席の盛況ぶりだった。そこで新しく開店した店の一軒をお試ししてみた。

店名は記憶にないが、とんこつラーメン推しらしい。ところが、一番おすすめは「博多らーめん」ではなく、「和風とんこつ」のようだ。それではと、和風とんこつを試すことにしたのだが。

確か博多ラーメンは、高菜、明太子、紅生姜の三将軍が脇に控えているはずだ。そう記憶している。しかし、それが全く存在しない。ひょっとして「和風」に転換するときに、置き去りにされたのかもしれない。紅一点である紅生姜の色気がないのは実に残念だ。
スープは最近周流のマイルド系とんこつ醤油らしい。麺は細麺なので、九州系ラーメンの特徴は残っている。最近は博多に行っていないので、令和の博多ラーメンはこういう展開になったのかもしれないが。

LCCでの国際線も続々再開しているので、外国人観光客向けということなのだろう。フードコート内には全国チェーンの店が並ぶ中、ちょっとユニークなヌードルショップということで人気が出るのかもしれない。
店内は明るくて、最近の気取ったラーメン屋(店内が薄暗く黒基調の内装、ゴミが落ちていてもよく見えないという利点がある)とは違い、掃除も行き届いていた。
券売機がクレジットカード対応でないあたりが、外国人向けにはどうだろうという気もするが、アフターコロナの時期に開店するという大冒険を決行したのだから、そこは優しい目で見てあげたい。
やはり、空港での人気筋は鮨ではなくラーメンなのだろうなあ。

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金沢駅の回転寿司

金沢駅の駅ビルには、たくさんのレストランや居酒屋が入っている。大体が観光客目当ての店に見える。地元客の日常使いという感じはあまりしない。駅ビル飲食店の中で、ここは地元民が使っている店だと思ったのはラーメン屋くらいだ。そこは、正しい意味の行列ができている。
ただ、観光客目当ての店がダメだといっているのではない。おそらく、ランチのセットなどは地元民向けに作られている。特に、一番安いものは、間違いなく地元民向けだ。観光客の大多数は値段をケチって、地元ネタを食べないというのは考えにくい。売る方も、観光客向けには高いネタをどう仕立てるかが腕の見せ所だろう。
そんなことを考えながら、金沢駅ビルで「回らない回転寿司」の二軒目に挑戦した。

注文したのは、ランチセットの中で二番目に安いものだ。いわゆる1.5人前という代物で、数が多い。ネタは北陸限定、地元ネタという感じではなく、ごくごく一般的というか「普通」のネタ構成だ。唯一金沢っぽいのが、カニ足が乗っていたことくらいだ。ランチセットだから、いわゆるシャリ玉も大きめに設定している。10貫も食べるとお腹いっぱいになる大盛りセットだ。
今や滅亡寸前の百円均一回転寿司と比べると(というか比べてはいけないのだろうが)、明らかに鮨として完成度が高い。100均寿司はシャリ玉も小さくなり、ネタも小さくなり、今や手毬寿司程度に小型化されている。小ぶりの寿司は食の細い人にはありがたいかもしれないが、絶対的な課題を抱えている。シャリ玉とネタのバランスが悪いのだ。
コスト削減を目的とした小型化、矮小化が限界にきているから、カニや本鮪などを使った限定ネタでの高価格化を狙う。その上で定番品の値上げに踏み切るしかなかったのが、この一年の回転寿司業界の流れではなかったか。「安い」を捨てて、結果的にたどり着いたのが「高くても旨くない」という評価だったのは、迷走の極みということだろう。おまけに最後は公取の指導まで入った。
そんな業界大手のスランプを尻目に、北陸の回らない回転寿司はコスパの良さをますます磨き上げている。そんな感じがする。低価格チェーンも囮広告で捕まるようでは、外食として滅亡の道を歩んでいるとしか思えないが、オーナーであるファンドは売り逃げて仕舞えばいいだけだから、この問題の根は深い。
うまい寿司を食べながら考えることではないのだが………

鮨のついでに好物のタコ酢を注文してみた。よく考えれば、日本海沿岸でタコが有名なところはあっただろうか。北海道の水ダコくらいではないか。金沢というか能登半島界隈でタコは取れるのか。食べているうちに疑問が色々と湧き上がってきたが、普通にうまいタコだった。ひょっとするとアフリカ東海岸産のタコかもしれないが、うまいのでよろしい。
100均寿司のタコがあまりうまくないのは一体なぜだろう、という新たな疑問も浮かび上がった金沢の回らない回転寿司体験でありました。

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金沢駅でパン屋に感動

帰りの新幹線に乗ろうと、金沢駅を歩いていて見つけたポスターは、西国に暮らす人を羨ましいとおもわせる。ちょっとだけだが、西国に住みたい気分にさせる。西日本にはこんなに「ネームド特急」が走っていたのだなあ。生まれた場所が北海道で、いわば独立島国、青函海峡で本土とは分断されていたから、広さと鉄道網の充実した地であったにもかかわらず、特急列車は意外と少ない。おまけに学生当時は貧乏で、特急に乗る金などなかった。多少金が使えるようになった時には、特急どころか路線が廃止されてしまい、慌てて乗りに行ったりもした。
世間では「撮り鉄」の暴走を非難する声で溢れているが、「乗り鉄」はまだあまり迷惑をかけていないせいか、ひっそりと「乗り鉄魂」を刺激する企画がローカル鉄道を含めあちこちで出ている。その中でも、この入場券ゲットしようぜラリーはすごい。JR西日本限定の24駅であれば、達成できそうだ。来年の春・夏の青春18きっぷで完全制覇してみようか、とポスターの前に立ち止まって動けなくなった。
これは、金沢駅の魔力に巻き込まれてしまった。なぜ「帰り」に見つけてしまったのだ。

そのポスターを見つける前、以前にも利用した美味しそうなパンを売っているパン屋さんが、これまたすごいパンを売っていた。このパン屋さんが金沢駅の魔力その2だ。
まずは、このPOPでガツンとやられてしまった。メロンパンは全国あちこちで様々なバリエーションを見てきた。覚えているのは富士山型のメロンパンで、名前も富士山パンだった(確か……)
しかし、このかぼちゃパンのルックスは、富士山を越えると思う。これまでの人生で、パンのルックスにやられた気がするのは、福島駅で見たカメパン以来、人生2回目の快挙だ。
おまけに見た目だけでなく、中身もカボチャっぽい。これは、買わずに通り過ぎることはできない。POPというのは、こういうふうに通り過ぎてしまう通行人をゲットするのが至上目的なのだが、このPOP制作者は天才的だな。まんまと引っ掛かってしまった。

陳列代に並ぶ、イミテーションカボチャの数々。おまけにこだわりはカボチャの皮部分ではなく、ヘタの部分にあった。すごいぞ、金沢駅のパン屋さん。ただただ感心する。これがステージだったら、スタンディングオベーション間違いなしだ。パチパチパチ!!

家に帰ってきて写真を撮ろうとしたら、ヘタが怪しい状態になっていた。が、全体的には麗しいカボチャ風メロンパンだった。まずはヘタれたヘタを食べた。うましだ。そして、残りを一気に食べた。中身のカボチャクリーム?も、皮の甘さによくあっていた。また、買いたいと思ってもパンを買うために金沢に行くわけにもいかないだろう。いけないこともないが、そうなるとパンの値段が一つ1万円を超えてしまう。(笑)

ついでと思い買ってきたドライフルーツと胡桃の入ったパンも、超絶的に美味かった。このパン屋さんが全国チェーンであってくれれば、毎日とは言わないまでも週に2-3回は買いに行くと思うのだが、金沢付近にしかないみたいだ。
旅先でうまいものを発見するのは幸せとは限らない。簡単には行けないところの食べ物を、また食べたくなるとしたら、それは不幸の始まりなんだよね。
うーん、金沢は困った街だ。性悪な魔女的魅力に溢れている。今度はいつ行こうか。

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金沢の居酒屋 おでんとへしこ

金沢でおでんが有名だ、という記憶は全くない。金沢には何度も仕事で行っているし、それなりに金沢名物など食べてきたつもりだが、その中に「おでん」という単語はなかった。たまたまテレビ番組でやっていたおでん特集の中に金沢おでんがあったので、あーそうなんだと思ったくらいだ。
それが、今では冬の金沢を代表する料理扱いになっている。天むすは名古屋の伝統料理ではなく、創作料理だと聞かされた時もびっくりしたが、金沢おでんもその手の新造名物なのかもしれない。
まあ、とりあえず実食してみなければと駅のおでん屋に入ってみた。金沢駅の中で長年居酒屋をやっていて、駅が改築されたことで現在の場所に移ったとのことだが、やたらと長い行列ができている。居酒屋に入るのに30分以上も待つ事などあり得ないと思うのだが、今回はしっかり我慢することにした。繁華街のおでん屋に行っても、おそらく同じように待たされるに違いないと自分に言い聞かせて、ようやくゲットした金沢おでんだった。
結論を言えば、薄味のおでん。出汁が効いていると言えば、それはそうだと思う。関東風の「がつん」とした濃い味ではないから、全体的に優しい仕上がりになっている。金沢特有のおでんネタもあるので、それを中心に頼むという楽しみ方もある。

おでんよりもワンダー体験だったのが、この店の名物だという「どじょうのかばやき」だった。想像を超えるものだった。うなぎとどじょうのサイズを考えれば、この串に刺さったどじょうはうなぎの蒲焼きのミニチュア版として納得できる。ただ、よく手間をかけてどじょうを串に刺すものだと、そこが感心したところだ。
味は、今一つどじょうっぽさみたいなものがわからなかったのだが、おそらく3-4本注文して、一気に食べるとどじょう「らしさ」がわかるのではないか………浅草あたりのどじょう鍋と比べてみるのも良い。ともかく、珍しい食べ物としては挑戦する価値がある。

白味噌仕立ての「どて焼」は、ふんわりとした歯応えとあっさりとした味付けだった。これも、できれば10本くらい頼み、一気にワシワシ食べる方が良い食べ物だ。名古屋のどて煮が原型だと思うが、それと比べてみると食文化の変化というかご当地アレンジが楽しめる。

北陸の名物といえばこれでしょう、と言いたくなる鯖の「へしこ」は、日本酒に合わせると最高の肴だと思う。ただ、金沢アレンジというべきなのか、微妙に上品な仕上がりなのだ。へしことはサバなどの糠漬けのようなもので、極めて塩味が強いという印象があった。おまけに強い発酵臭がある。味は全く違うが、ほやの塩辛のような独特の匂いと塩味が特徴だと思っていた。
だが、この日食べたものは、塩味がだいぶ控えめで、おまけに身が柔らかい。まるで刺身を食べているかのような柔らかさ(ちょっと大袈裟か)だった。以前食べたものとは随分変わっている。「へしこ」概念が根底から変わってしまった。良い意味で、洗練された旨さだった。
次回は何軒か居酒屋を回って、「へしこ」の違いを試してみたくなった。そうしたら、マイベストへしこが見つけられるのではないか。次回、金沢のテーマは「へしこツアー」だな……