食べ物レポート

日本酒居酒屋 アゲイン

日本酒好きの友人が久しぶりに東京に来た。一杯やろうということで、最近知った西新宿の日本酒専門?居酒屋に行くことにした。前回行った時は酒の種類の多さに喜んでいたが、料理も気に入ったので、今回は料理をあれこれ頼んでみようと考えていた。
前回は居酒屋定番の刺身盛り合わせが見当たらないなと思っていたのだが、メニューの裏側に載っていた。なぜ裏なんだろう、刺身が売り物ではないということか?などと疑問を感じつつ、注文してみたのは三人前の盛り合わせだった。無理を言って、その一つを好物のしめ鯖にしてもらった。自家製とのことだが、程よい酸味で身も柔らかい。どこかの工場で作った酢のきついものとは違うな、とありがたく頂戴した。うましだ。

鶏肉を塩麹に漬けたものは、やはり絶品だと思う。シンプルな焼き鳥が、一段グレードアップした感じになる。これは真似をして自分でも作れそうだなと思い模したが、やってみると大抵は失敗する。塩味のバランスが難しいことは予測できる。漬け込み時間で味が激変しそうだし………
プロの料理というのはそういうものだろう。自分で作ると、味の評価がプラスにバイアスがかかるので(つまり自作品には甘い評価をしてしまう)、ついついうまいと感じてしまうが、実際には大したことない平凡な料理にしか仕上がらないものだ。料理の評価は、自分以外の誰かに味を確かめて貰うべきだ。料理の世界で自己満足は自己中でしかない。
それでも、これはやはり挑戦してみたいぞ、と思ってしまった。キモになるのは塩味の染み込み具合だろうとはわかるのだが。その加減が難しいと思う。何度か試行錯誤する必要はある。
あとは、この絶妙な焼き加減が実現できるかだ。自分で焼けば、きっと黒焦げにしてしまう気がする。火加減は難しいのだ

塩でいただくあさりのかき揚げが絶品だった。これは、うまい。熱々もうまいが冷めてもうまい。なんというか、酒飲みの気持ちをよくわかった料理だなと思う。量と味付けの計算がすごい。かき揚げだから、味を濃くしないと衣が抱き込んだ油に負ける。ただ味が濃すぎると、やたら喉が渇く、油っぽく感じるなどあれやこれやの問題点が出る。その辺りを計算した一人前の量だろう。ただ、一人でこれを食べ切ると、かなり腹に応える。甘口の日本酒とは相性が良いと思った。

最後に注文したのは、特別の期待もなくなんとなく惰性で頼んだピザだ。締めにするのであれば蕎麦も注文できるのだが、なんとなくピザを頼んだ。味噌と山菜のピザという、ちょっと変わったものだったから、興味本位で注文したのだが。
実は、これが「今日一番なお料理」だった。味噌味がチーズによく合う、というかチーズと味噌が混じりあって何か別のものに感じてしまう。その味噌チーズと具材とのバランスが絶妙に良い。
冷めたピザはまずいというのは、チーズが溶けて固まると味が一気に落ちてしまうためだが、この味噌とチーズ混合体は冷めてもうまい。チーズの油が味噌に溶け込むせいだろうか。これを計算して作ったものだとすれば、全国のピザ屋はもう少しお勉強しなければいけない。
たまたま出来上がったのだとしたら、料理の達人の技というしかない。最後の一切れを食べながら、10年前にこの味を(味の方程式を)気がついていればなあ、と泣きたくなった。なぜか居酒屋で、人生は後悔の連続なのだという悲しい真実を思い知らされた。Good Jobな居酒屋の夜でありました。まだ試していない名作品を食べに、また行かねば。

食べ物レポート

カツカレー うまし

新宿 はやしや

カレーを食べるのならば、カレー専門店ではなく洋食屋の方が良い、と個人的には思っている。専門店のカレーがまずいというつもりはない。スパイスの効いた高級カレーは、たまに食べると虜にされる旨さだと思う。ただ、家のカレーの延長線にある洋食屋のカレー、それもルーがドロドロしている感じのものが好物だ。店のアレンジでウスターソース系の酸味がするものであったり、出汁っぽい濃厚さがあったりその店独自のバリエーションを楽しむ。それなりに手間暇がかかった料理なのに比較的低価格なのも嬉しい。そして普段はほとんど食べることのなくなったトンカツだが、それが乗ったカツカレーを食べるときは至福のひとときだ。
去年の年末から思い詰めていた、お気に入りの洋食屋でカレーを食べたい。それをようやく達成した。新宿のはやしや、自宅近くの洋食屋 キッチン サン、秩父のパリー食堂、どれも個性的なカレーだった。そして食べ比べた結果、自分の好みに一番あっていたのは、はやしやだった。キッチン サンは自宅近くなので普段使いには最高だし、この三店の中では値段がお手軽だ。週に一度食べても飽きがこない。パリー食堂はカツのカリッと仕上がった感じが特徴だ。カツカレーというものはカレーのルーをソースがわりにしてトンカツを食べる料理と考えれば、ルーとカツのバランスは重要だ。その点、パリー食堂はカレーというよりカレーソースっぽいのが良い。
そして、はやしやのカツカレーは、このカレーを肴に酒を飲むタイプというか、ご馳走的な旨さだと思う。仙台の居酒屋でよく頼んでいた、カツカレーライスなしの考え方に近い料理だ。

どの店もカツは薄めで衣はカリッとしている。カツカレーはカツを楽しむというより、カツの衣を楽しむという感じもするので、肉厚ではない方が好みだ。その点、三店とも素晴らしい肉と衣のバランスだった。
カツを順番にカレールーで食べて行って、下から出てくる白飯をチェイサーがわりに口の中の辛さを抑えるために食べる。最後に残った一切れのカツには、カレールーではなくウスターソースをかけて食べる。これが満足度100%のカツカレーの食べ方だが、できれば最後に白飯を一口分だけ残しておくと、口の中のカレーの余韻が楽しめる。
最後にコップに入った冷えた水なり、カレーの前に頼んでいたビールなりをぐいっと飲み干せば、人生至福の時間の終了になる。
洋食屋のカツカレー三番勝負が終わったので、次は蕎麦屋のカツカレー三番勝負でもしてみようかな。それとも町中華のカツカレー十番?勝負もありそうだ。蕎麦屋のカレーも美味いが、カレー丼もうまいし、どこの店ににするか悩むのは間違いない。

食べ物レポート

家から2分のラーメンストリート

去年の後半、家の近くにある県道沿いにバタバタとラーメン屋が開いた。コロナによる外食不況が終わりつつあるんだなと、素直に喜んでいた。ただし、他の外食店が撤退した跡地への出店なので、世代交代というか淘汰が進んだという側面が目立つ。
その新規開店の店で家から一番近いのが、この双子店舗だ。入り口は一つで中の客席をシェアするのかなと思っていたが、実際には入り口が二つあり、店内は壁で完全に分離される構造だった。そこで、まずは右側の店を試してみた。ラーメン界では有名な東京発チェーン店だが、すでに中堅から老舗の域に達している。
ちなみにラーメン屋の開店2年後の生存率は5割程度と聞いたことがある。開店から2年経つと、半分の店が閉店するということだ。だから10年生き残っていれば、ラーメン界では老舗になる。20年続けはレジェンドだろう。このブランドも20年ものでレジェンド級だ。

メニューはシンプルだが、やはりレジェンドになる店は定番品が圧倒的に支持されるから長生きできるのだという証明だ。この店の絶対定番は「つけ麺」だと思うのだが、とりあえずというか捻くれて「中華そば」を注文することにした。ちょっと気温が低かったこともあり、温かいものを欲していたという単純な理由だった。これが炎天下の夏だったら、迷わずつけ麺にしただろう。当然、次回はつけ麺にするつもりだ。ただし、腹ペコにしていないと、つけ麺のボリュームに負けてしまう。

薄めに切られたチャーシュー  スープによく絡むのが好みなのだ

魚介出汁の濃厚スープは、ゴワゴワの太麺とよくあう。太麺は啜るというよりもぐもぐ食べる、噛み締めるものだ。相変わらずの面食い向けうまさだ。線路を挟んで反対側には、池袋大勝軒の暖簾分けした店もあるが、やはり人気のつけ麺店はもぐもぐ系なのだと思う。その大勝軒分店は、創業者の味を一番忠実に再現しているとネットの記事で読んだことがある。コロナの間は多少空いていたが、今では前にもましてランチの行列ができている。行列が空いてから行くと、スープ切れで閉店してしまう。人気店はやはり行列を覚悟しなければいけない。家の近くにあるから我慢できるが、うまいレー麺を食べる代償として諦めるしかない。名店特有の「玉に瑕」というやつだ。
この大勝軒分店とこの新鋭つけ麺レジェンド(?)が、どちらも徒歩圏にあり食べ比べできるのはかなりラッキーなことだと思う。おまけに、ぎょうざの満洲本店も徒歩圏にあるから、実はラーメン天国に住んでいるのかもしれない。

カウンターの壁に貼ってあった「商品説明」は、簡素にして十分な情報だ。この店の中華そばは年配の客が慣れ親しんでいる「昔風ラーメン」と、北極と赤道くらい離れているので、こういう説明書きは意味がある。
都心部のラーメンフリークが行列するような繁盛店では、客が行列する前からその店の商品特徴を事前に下調べしているから、この手の情報は不要だ。しかし、埼玉県のハズレにある高齢者多数在住のベッドタウンでは、この手の注意書きは必須だろう。高齢者のクレーマー対策は、今や飲食店では「無銭飲食」よりもタチが悪い、絶対必要な営業テクニックになっている。
タチが悪いクレームの典型だが、味のうまいまずいではなく、自分の体験し損なった「楽しい時間を返せ」などと言いだす。超能力者でなければ、時間は戻せない、返せない。無理難題というしかない人類では対応不可能な要求だ。そもそもそんな時間を巻き戻せるサイキックな能力があれば、飲食店などやらないと言いたくなる。ただ、一言そういうと、まさにヒートアップする「やから」が多い。そのクレーマー対応を見てしまうと、周りにいる客が引くのは間違いない。明らかに営業的にはマイナスだろう。
商品説明は、今や、店舗常備のマストアイテムだな、うまいラーメンを食べた後で真剣に考えていた。飲食店をやるには、教科書には載っていない裏ノウハウが重要な時代なのだよ、と呟いておりました。

食べ物レポート

埼玉の誇る名品 秩父編

埼玉名物は数多くある(はずだ)が、自信を持ってお勧めするのが「シャクシ菜」で、説明は写真に書いてある通り。(だと思います)


いわゆる古漬けになった発酵食品としてのしゃくし菜漬けが大好物だが、しばらく見ない間にシャクシ菜スピンアウト諸品が大量にできていた。おそらく、コロナによる観光産業壊滅に危機感を覚えた関連業種の方々が、頑張って新商品投入をされたのではないかと推測している。自宅近くの元・百貨店でも食料品売り場に秩父産品コーナーがあるので、そこに行けば買えるかと思ったが、残念ながらこのスピンアウト商品群はまだ新興勢力らしく、秩父に行かなければ買えないらしい。
とりあえずまた秩父に遊びにいく口実にはなるので、それはそれで良しとしよう。

すでに全国区になった感のある「高菜漬け」製品では、和歌山のめはり寿司が好物だ。それと共に熊本のごま油炒めが漬物加工品として秀逸だと思っている。その高菜漬け油炒めの変形(コピー?)がしゃくし菜油炒めだが、個人の好みを言うとこちらの方がうまいと思う。埼玉・秩父贔屓ということではなく、発酵食品として、漬物としての完成度もあるが、加工品としての仕上げ方が上手いのだと思う。あれこれ調味料が入っているせいでもあるが………加工食品だしなあ。
ただし、高菜の油炒めもスーパーで並んでいるものではなく、九州に行って現地生産(ローカル品)を買えば、また違う味わいがあるのも間違いない。近いうちに銀座のアンテナショップに行って仕入れたものと食べ比べをしてみようか。

菜葉の漬物としてシャクシ菜・高菜漬け以外に思い浮かぶのは、超有名な長野の野沢菜だ。ただ、これもさまざまなアレンジ品が売られているが、ごく普通の家庭で作られているもの食べた時が一番うまかったような気がする。諏訪の蕎麦屋で出てきた自家製野沢菜漬けもうまかった。だから、秩父のシャクシ菜も秩父の家庭でつけられたものを食してみたいものだなあ、などと思うのでありますよ。

食べ物レポート, 小売外食業の理論

一人中華三昧を楽しむ

辛い肉野菜炒めとでも言えば良いのか 「爆弾炒め」は野菜たっぷり

中華料理屋に行って一人飯を食べようとすると、基本的な一品に小皿がついたセットを注文することになる。麺や丼は当然一人前だが、あれは食事としての完成度が低いというか簡素すぎるのが寂しい。そう感じる時には、定食・セットのお世話になるしかない。回鍋肉セットとか、酢豚セットとか、エビチリ定食みたいなものだ。サラリーマンのランチで考えれば全然リーズナブルで当たり前だろう。高級中華料理店であれば、小皿が2・3品ついてきて相当にゴージャスなものも選べる。町中華であれば餃子定食とかレバニラ?定食とか「がつん系絶対定番」も存在する。
ただ、色々な料理をちまちま食べたいという中華の食べ方となると、これは一人飯では難しい。絶望的に難しい。だから、中華をしっかり食べる時には5ー6人のパーティーが必要になる。それが世の常識というものだとは理解している。それでも、一人で「中華ちまちま喰い」をした時はある。そんな時には、日高屋に行く。居酒屋使いする夜パターンを、すこし変形して使ってみるのが良いと思う。
まずはメインの一品を決めてそれを頼む。それに追加するのは全て「小皿」シリーズにする。日高屋の優しいところは、餃子も3個で頼めることだ。今回は頼んでいないが、サイドで餃子を選ぶのは一人中華のお決まりと言える。

日高屋の小皿メニューは中華というより居酒屋のつまみに近い。が、そこはちょっと妥協して、イカゲソ唐揚げと焼き鳥(という名の鶏肉甘辛煮?)にした。これにラー油をかけたり、酢と胡椒で味変したりすると、気分はそれなりに中華感が出る。そして白飯の代わりに半チャーハンを頼む。よくあるラーメンを頼むと半チャーハンセットにできるという限定しばりメニューではなく、単独で半チャーハンが頼める。これも日高屋は偉いなあと思うところだ。ちなみに、半ラーメンも単独メニューとして存在するから、半チャー半ラーメンという掟破りな組み合わせも注文できる。日高屋、偉いぞと本気で褒めてしまう。

手間をどう考えるかで値段設定は変わるだろうが、世の中の町中華経営者は本気で日高屋的少量・半量メニュー対応を考えるべきだろうと思う。いや、中華に限らず全ての飲食コンセプトに適応できる考え方だ。アフターコロナの時代に、原材料価格上昇と人手不足から値上げやむなしという雰囲気が広がっている。特に大手チェーンは値上げにためらいなしの対応だ。しかし、賃上げが後回しになっている社会構造では、この値上げが受け入れられるとは思えない。すぐに価格競争が再開する。その時に、中小規模の経営者はどう対応するかの回答が、「定番の少量化」ではないかと思っている。
ちなみに、同じ町中華大手の満洲餃子では、日高屋とは別の考え方があるようで、それはまた別の機会に考えてみたい。
昼のピークを過ぎた頃に楽しむ一人中華三昧は、なかなか真面目なビジネsyテーマを考えさせてくれるものなのだ。

食べ物レポート

つまみのピザとはこうでなきゃ

お気に入りのピザ 新宿にある洋食店 はやしや

ピザはすでに国民食に近い一般化された食べ物だと思う。家庭向けには冷蔵・冷凍両方が販売されている。ピザが変形した食べ物でピザトーストなるMade in Japanな食べ物も存在する。ここ数年は宅配ピザの需要が爆発していて、それと合わせて宅配専門店ではテイクアウト品を低価格で売り出すことが当たり前になり、ピザ1000円時代になった。1000円のピザ(Mサイズ)は、ほぼ2ー3人前なので、ハンバーガー3個を買ったとすれば、一人前換算をするとほぼ同価格の商品になる。
宅配ピザを注文してレンタルビデオを見るというのは昭和後期、平成初期のそれなりにトレンドに載ったライフスタイルだったが、いまでは宅配ピザも手抜き消費の代表として、カップ麺の代用品くらいの位置付けではないか。
売り手にはそれなりの思い入れがあるだろうが、昔のピザが持っていた「ご馳走感」はすでに遠い過去の話だろう。ただ、一部のレストラン(イタリアンではない一般洋食系)や洋風居酒屋では独自の進化を遂げたピザがある。


その特徴は、たっぷりチーズにある。今や宅配ピザではお目にかかることがないほどのチーズの量で、まさにチーズに溺れているトッピングたちという感じがするチーズの多さだ。ただ、このチーズはあまり匂いが強くない。ブルーチーズのピザのような強烈な臭気(香りとは言い難い)が好きなチーズ好きには物足りないかもしれない。ただ、食べた時のボリューム感であったり、咀嚼した時のかみごたえは、「酒の肴」向きに定向進化したおつまみメニューとして高い完成度がある。進化の方向が明確だった結果という気がする。料理は、薄ぼんやりと美味いものを作ろうとしてもうまくいかない。「こういう食べ物にしたい」という明確なビジョンが必要という証明だろう。
具材はミックスピザであってもシンプルなものが多い。基本はソーセージ、ベーコン、サラミなど塩味の強い乾燥肉製品で、たまに変わり者としてシーフード(イカ・エビ・タコなど)が使われるくらいだ。ファミレスで人気の「変わりピザ」、マヨコーンなどは居酒屋系、酒のつまみ系ピザではあまり見ない。
この酒の肴ピザの良い点は、冷めてしまってチーズが固まって、酒のつまみとしては機能することだ。脂分が多い、タンパク質が多い、味が濃いなど料理としてのバランスはどうかと思うが、冷めてもうまい。
鶏の唐揚げやフライドポテトと同じで手づかみでも食べられる。重量型のスナックという位置付けにあたる。どの店でもピザ専門店のこだわりみたいなものはないのだが、それが逆に酒のつまみとして完成度が上がる原因にもなっている。
当然ながら、「生地が手作り」だの「ソースが自家製」などとうるさいことは言わないのがお約束だ。ピザと似たような商品のはずだが、ハンバーガーやフライドチキンになると途端にうるさいことを言い出す(店と客のどちらも)連中が多い。あれはなんとかならないものか。ジャンクな食べ物にはジャンクな旨さがあるのだ。もったいをつけて語りたいのであれば、せめて正統フレンチくらいにしてほしい。
が、不思議とピザに関してはうるさく言う人間が少ない。ひょっとするとピザに関しては知見や知識が足りないだけなのかもしれない。ピザはイタリア発祥の食べ物だが、そもそもイタリアンはグッとカジュアルな料理で、ピザはその中でも軽量級になるから、語るのは自分の感想だけで良いと思う。

イタリアンレストランに行ってピッツアにタバスコを使おうとすると、あれこれ問題が出ることもあるが、飲み屋のピザは一面が赤く染まるほどタバスコをかけて食べれば良い。飲み屋のピザはお気楽に、あくまでお気楽に楽しむワン・ハンド商品だ。お値段も安めだし、ぜひ酒のお供としてご検討ください。ちなみに、焼いたチーズは想像以上に日本酒によく合うので、酒の種類は選ばないはずであります。

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久しぶりの回転寿司

カツオの握りは、もはや季節感なしなのだなあ

去年後半で外食業界最大のニュースは回転寿司大手が公取にキツイご指導を受けたことだろう。そしてご指導を受けている最中にもかかわらず、似たような悪いことを再発していたこと。普通に考えれば、個店の問題ではなく経営の問題なのだが、さすがファンドの経営らしくその辺りははっきりさせないのが、今の外食産業の抱える宿痾だなと考えていた。
別に正義感に溢れているわけではないが、あのコンプライアンス無視な経営を見れば、食の衛生、安全安心といった「根本原理」すら守ろうとしていないかもしれないと思い、しばらく利用するのをやめていた。同じことを考える一般客も多かったようで、業績は急降下したようだ。
食べ物産業は、風評次第ですぐに業績が変わる。悪評がたてば売り上げは瞬間に急落し、回復には年単位の時間がかかるという教訓を再認識させてくれた。コロナの覇者だった回転寿司も、最近の事件と値上げラッシュでなかなか厳しい道を歩いているらしい。
外食企業は「他山の石」として欲しい。それも正しい意味で認識してね、と言いたい。某与党政党の元幹事長のような「誤認、誤解、自己都合の勝手な解釈と言い訳」はしない方が良いですね。またネットで叩かれる。

今回はトラブルを起こした方ではない大手の店に行った。オーソドックスに魚が乗った寿司を注文して、最後にチャンジャにぎり?で締めた。チャンジャも魚製品といえばそうなので、カルビやマヨコーンという最近人気のある新定番、変わり寿司とは違うが、やはり変わり寿司の一種なのかもしれない。しかし、今回のネタは全て「泳ぐもの」だから、珍しく正統派の注文をしたと自慢しても良い。エヘンエヘン。
ちなみに注文したのは全て一皿125円のものだが、全品100円均一だった価格が、いまでは一皿値段が何種類かに分かれている。複数価格帯の皿をどうやって会計するのだろうか不思議だ。今までは皿の枚数かける単価で計算していたはずなので不思議に思ったが、皿の返却口にICタグのセンサーがあるのだろう。回転寿司は業界を挙げて最先端のIT技術を導入しているから、皿勘定も人手ではないはずだ。最近では、事故対策としてイタズラ防止用のセンサー・カメラも回転レーンに備えているようだし。回転寿司は、もはや素人が始められる業態ではないし、簡単に儲かる商売でもないようだ。
随分と小ぶりになってしまった握りを食べながら、この業界の進化について考えていた。次の進化はテイクアウトの完全自動化だろう。そうなると店舗の従業員は、機械の補助要員に成り下がるのだね、きっと。機械が人を使う時代が、ついに到来するようだ。

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怖くて値段が聞けない海鮮丼

隣町の百貨店で北海道展があると家のものが出掛けて行った。そのお土産に、海鮮丼を買ってきてくれた。海鮮丼というより海鮮重と言いたいゴージャスな見栄えだ。どうやら普通サイズの海鮮丼は丸い容器に入っていて「普通の」丼に見えるらしい。この土産にもらったものは具材大盛りというか、贅沢版の海鮮丼のようだ。
ネタのノリ具合が半端ではない。このネタの下にご飯が隠れているのだが、ご飯の量はネタよりも少ない。海鮮丼とは美味しい魚で白い飯を食べるというコンセプトのはずだが、これは発想が逆転していて、美味しい魚を食べるためのおまけで白い飯がついているという感じだった。
鮨屋のお得なランチでよく見られるチラシでは、面積稼ぎで卵焼きやガリなどが非魚系トッピングがネタと同じように使われることがある。それはそれで格安に仕立てる工夫と言えば納得もするが、やはりちょっと見栄えが寂しい。
この贅沢版海鮮丼では、そんな見栄え改善策は何一つ取られていない。定番備品である緑のバランさえほぼ存在しない。ネタを重ねまくっているので、下敷きになったネタは半分しか見えていない。見栄え優先のメニューが多い中、質実剛健というか中身の量で勝負という贅沢な昼飯を食べてしまった。だが、これはランチというより、酒の肴ではないかとも思った。熱燗をちびちびやりながら魚をつまみ、その間に白い飯をちょっと口直しに一口放り込むみたいな食べ方だ。
食べ終わってから、値段を聞こうと思ったがやめた。おそらく自分では買う気が起きないほど高いものだという気がする。普通のランチで言えば二食分どころではすみそうもない。おそらく売り場の前に行っても、値段を見ただけで素通りしそうな豪華な代物に違いない。お高いものは誰かに買ってきてもらうのがいちばんで、値段を知らないからこそ純粋に味を楽しめる。
素直に美味しいものがたべららたことに感謝しよう。日頃の行いを考えると、こんな高額なお土産をもらえるなど、まさに感謝しかありません。

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居酒屋の一品 お気に入り発見

生姜を揚げるという発想が、まず必要だ

大衆居酒屋の定点観測という名目で、いつもの低価格チェーン居酒屋に行ってきた。新メニューは何があるかと眺めていると、「新」マークはついていないが、どうやら最近導入されたらしいメニューに気がついた。生姜の天ぷらだ。
大阪南部では紅しょうがの串揚げや天ぷらがかなりポピュラーな品物のようだ。ただ、これは大阪全体というより大阪府南部限定のローカルフードらしい。昔、天ぷらのローカルメニューを研究した時に発見した。食文化では関西を共通圏として考えていたのだが、生姜の揚げ物については奈良や神戸では知られていないらしい。東京周りで置き換えると、埼玉の大宮限定だったり、神奈川県湘南地区限定みたいなものだろう。
研究を続けて天ぷらネタの多様性は面白いなと思った。社内にいた日本全国あちこちの出身者から天ぷらネタアンケートをして、アレアレとか、こんなのありとか、びっくりネタが多いことを知った。自分の食べているものは日本標準であるという誤謬というか誤認識を改めるには良い経験だった。食にも地方モンロー主義は存在するのだ。
話を戻すと、串カツでは平成中期に全国チェーンが広がったことで、紅生姜の串カツが広まった可能性がある。最近では、立ち食いそばで紅生姜のかき揚げが人気のようだ。
そして、この店の生姜の天ぷらだが、見た目は青のりが混じった衣のために、ちくわの磯辺揚げのようにも見える。一つ一つが小ぶりのサイズなので食べやすい。酒の肴としてはパーフェクトに近い仕上がりだ。量は少なめだが、この店のメニューは低単価低従量が標準なので文句はない。味は濃いめなので、このま何もつけずにつまむ。好みの味なので、次回もこれを頼むことになりそうだ。

郷土料理のアレンジの可能性は………

「りゅうきゅう」とは、大分県の名物で刺身をタレでまぶしたもの。タレはあれこれとアレンジがあるようだが、基本は醤油、味醂、胡麻生姜その他の香料、香草でちょっと甘めに仕立てる。福岡のごま鯖もこれと似た食べ物だから、タレに漬け込んだ刺身料理は九州北部の食文化基盤みたいなものだろうか。
その「りゅうきゅう」の鯖バージョンがメニューにあった。前回来た時もあったから、どうやら定番化したらしい。こういう一手間かけた料理をあれこれ導入するのは、低価格店では重要なことだろう。メニューの幅を広げるという観点では最善種の一つだ。プライスラインを一つ押し上げる役目も果たす。トッピング、フィリング、ソースの変更での味変やバラエティー化も可能だ。
アフターコロナの外食激戦区で、やはり重要なのは新メニュー開発だが、それには綿密な計算が必要なのだよと、大分名物(風)を食べながら考えていた。

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高級パン屋でクイニーアマン

渋谷の北西側に東急百貨店本店がある。その真向かいに、高級パン屋がある。都内には有名なパン屋、ベーカリー、ブーランジェリーなどパンの製造販売の店は多い。その中でも、おそらくいちばんの高級店(自己評価です)は、この店だと思っている。たまに、ハード系のパンを買いに来るのだが、その味と価格にはいつも唸らされる。高いから上手いのではなく、上手いから高いのだと納得させる「パン」だ。
ただ、たまに浮気をしてデザート系パンというかケーキっぽいものを買うこともある。今回は、流行り物のカヌレを買おうとしてきたのだが、結局はカヌレではなくクイニーアマンを買ってしまった。

食べ終わった時の満足感がすごい

自分のイメージにあるクイニーアマンは小ぶりな砂糖菓子というものだが、こちらは随分と大型で直径は10cm程度あり、手に持てばずっしりとした重量感がある。表面が砂糖でコーティングされているのでカリカリとした食感があるが、中身の生地はやはり重量級の密度の高いものだ。
甘い物好きであれば、これを朝食がわりに食べるかもしれないなと思う。朝食といえば………しばらく住んでいたアメリカでの朝食は、ドーナツだったりワッフル(メープルシロップを溺れるほどかけるのでほぼ甘味しかしないもの)など、朝から1日分の糖分補給が完了するものが多いことを思い出した。朝食=超甘いというイメージしかない。だから、それと比べるとこのクイニーアマンなど甘さレベルで言えば初級でしかないのだが。
個人的には日本の朝食は塩分食、アメリカの朝食は砂糖食、そして西ヨーロッパの朝食は簡素食だと思っている。簡素食とはクロワッサンとミルクコーヒーで朝食というパターンになる。目玉焼きにベーコンとトーストでは、簡素食にならない。この大ぶりのクイニーアマンを朝食にするとすれば、アメリカと西ヨーロッパの中間食くらいになるのかと思った。
表面の砂糖がキャラメル状になりパリパリしている食べ物が好みなので、このクイニーアマンはとても満足したが、やはり朝食にはちょっと甘すぎる。結局は、3時のおやつ的に食べてしまった。ただ、おやつとしてはやはりちょっと高額かと思うしボリュームも多い。だが、ケーキよりはお安い。自分へのご褒美的なおやつとして考えれば良さそうだ。ただし、これを一つ食べると夕食は軽めになる。というか、夕食を食べる気にならない。おやつで腹が膨れるというのも考えものだ。

テクニックを感じるハード系のパン

朝食には、ライ麦を使ったハード系のパン、それも中にクルミや干し葡萄の入ったものを買ってきた。このハード系パンとコーヒーの様な朝食を食べたのは、デンマークだったかドイツだったか記憶は曖昧だが、ライ麦のパンはやはりヨーロッパ北部に行くと出会うことが多い。もともと、小麦は地中海沿岸の様な気温の高い地域で栽培されている。北部になり気温が下がっていくと、小麦の代わりにライ麦が栽培されている。日本でいえば、米とヒエやアワなどの雑穀の関係に近い。
昨今の健康志向による雑穀礼賛は、やはり美味しいものを腹一杯食べられる時代の贅沢なのではと思っている。米が食えないからヒエアワを食うという生活では、やはり上手い米を食べたくなるものだろう。パンの世界も同じで、やはり小麦100%のパンはうまいし高いというのが西欧社会では常識の様だ。わざわざライ麦パンを特別視することもないらしい。
この店のライ麦パンは、ライ麦特有の香りが強い。スーパーで売っている普通の食パンと比べれば、その違いは歴然だ。おまけにずっしと重いし、買ったばかりでもそれなりに固い。手でちぎろうとしても難しい。ナイフを使って半分に切り、あとは食べやすい厚さで何枚かに切り分ける。
味が濃いので何もつけずに食べるが、歯応えが強く何度も噛み締める。パンの味というのはこういうものかなと感じる。口の中の水分を全部持っていかれるというか、吸い込まれてしまう。クルミや干し葡萄の味が良いアクセントになるのだが、食べ物を噛み締めるという「本能的な楽しさ」がある。
一つ食べ終わるととてつもない満腹感を感じるが、これは何も考えずに延々と固いパンを噛むという作業を続けたせいだろう。ものを噛むと満足感が湧くのは、人類が持つ最古の本能ではないだろうか。
日本の伝統的な食べ物であれば「するめ」、それも丸のまま一枚を噛み続けるみたいなイメージだ。

紙袋はオシャレ感というより品質維持のために重要だと思うのだが

自分なりの高級なパン屋のイメージなのだが、パンの個包装に紙袋を使う店というのがある。スーパーのレジ周りに置いてある水物を包むペラペラのビニール袋を包装に使う店は、残念ながらパンに対する愛情が足りないと思ってしまう。ビニールの匂いがパンに移るからで、それが嫌いなのだ。コストを考えるとビニール袋も仕方がないということになるのだろうが、5円10円高くても良いから、匂いがうつらない袋にしてほしい。
ブーランジェリーと名乗る高級店でも、ペラペラビニール包装の店がある。そういう店には、また行く気が起きないのも確かだ。パンを焼く技術だけが高級パン屋の売り物ではないだろう。美味しいパンを家に持って帰り、それを食べるまでが、パン屋のお仕事になるのではないかと思う。