食べ物レポート, 旅をする

地域特化型チェーン居酒屋in弘前

弘前で晩飯がてら居酒屋に行きたいのだが、とホテルの方におすすめの店を聞いた。そうしたら、全国チェーンだが地元料理を食べさせるので面白いと言われたのがこの店だった。看板だけ見ると、あのチェーン店なのかと言いたくなる。たまたま店名が同じだけではないのか?
どうやら、そう思わせる改装をしたようだ。個人経営の居酒屋に見せかける「ワタミ忍法」らしい。全国チェーンがブランドロゴを捨ててしまうというのは、すごい時代だと改めて思い知らされる。それでも焼肉屋になるよりは、生存確率が高いという経営判断なのだろう。

店の入り口も、随分と賑やかだ。どうみても全国チェーン店には見えない。手作り感を全面に押し出している。コレはこれで、店長が大変だろうに。

店内で席に着くと接客係のお兄ちゃんが登場し、まずは型通りのご挨拶。おすすめは刺身の階段盛りだと言われた。一人で来ている客に刺し盛りをすすめるのか、とちょっと気になるが、言われるままにそれを注文してみた。シャムロックも気になるのだが、量的に一人では両方は頼めないような気がする。

サバ、イカ、ヒラメ、マグロなど地物のようだ

ドーンと出てきた「階段盛り」は、ビジュアル的にインパクト十分だ。刺身のクオリティーも全国チェーンのものとは思えない。やればできるじゃないか、と思わせる。なぜコレを全国でやらないのだろうか。個店の学びを全国に広げられるのが全国チェーンの強みではないか?
東京発の強いコンセプトを金太郎飴的に全国に広げる手法・チェーン理論は、既に崩壊したと言って良い。おそらく東京発の情報が伝播する速度が早まりすぎて、出店速度がそれに追いつかないからだ。
そもそも東京で流行も終わりにかかり陳腐化しているが、地方では伝達速度が遅れているので繁盛しているという形こそが、全国チェーンの強みのはずだった。地方の店が元気なうちに、東京の足元を立て直すべく、次のコンセプトを生み出せば、情報伝達のタイムラグを活かしてブランドと企業の安定を保てる。
ところが、今ではその情報速度が速くなりすぎ、東京のコンセプト衰退、陳腐化したという情報の方が出店より先になる。地方出店が、今までとは逆にお荷物になりやすい。
だとすると、地方を含めた個店の戦闘力を色々な実験で上げてみて、それを一気に全国化する戦略転換が必要な時期のはずだ。が、なぜか居酒屋をコンセプトごと放棄して焼肉や唐揚げに走る。それではブランド再生などできないだろうに。
刺し盛りを楽しみながら、そんな衰亡業界の失策を考えていた。東京での業態転換した店を見てモヤモヤとした疑問に思っていたことだった。それを弘前に来て解凍を見つけるとは………
確かに、首都圏にいては気がつかないことだろう。旅は時に学びをもたらすのだなあ。

小難しいことを考えているうちに、本日の大本命である「イガメンチ」が登場した。弘前に来る楽しみの一つがコレだ。ネットで見るレシピーで自作してみようかと思うのだが、なかなかやる気にならない。津軽では家庭料理らしいので、自作してみても失敗することもなさそうだが………
こちらのイガメンチ(イカではなく、イガ)は小ぶりの一口サイズだった。味付けはいつも食べているものよりも濃い味で、酒の肴向きということらしい。生姜醤油で食べよと言われ素直に試してみたら、まさに大正解だった。イガメンチ、うまし。
これは全国に広まってほしい。イカの名産地は日本全国あちこちにたくさんあるが、イカ料理サミットでも開催して、各地の名物イカ料理を普及してほしい。鳴子のイカメンチとか函館のイガメンチとか、鳥取のイカメンチとか、シュリの違うイカの料理が食べてみたい。

日本酒も青森推しだった。特に地元の豊盃をふんだんに置いてあるのが素晴らしい。蔵元がある弘前でも豊盃は手に入れるのがなかなか難しい名酒だ。個人的には、青森の豊盃、岩手のあさ開き、福井の黒龍が絶賛したい日本酒だが、どの酒も地元に行ってすら手に入りにくい。
ネットで転売される酒を買うのも腹立たしいので、ネットで酒には手を出さない。現地で2000円で買える酒を5000円で売るようなネット酒屋には全く興味がない。
だから豊盃を手に入れるには弘前に行った時に百貨店の酒売り場に行くか(一部青森市の酒屋でも入手可能)、東京飯田橋にある青森県アンテナショップに行った時くらいしかない。それが、この店では飲み比べができるという。素晴らしい。本当に全国チェーンの店なのか?

満員で入れなかったお目当ての店

実は、地元の人気居酒屋にも行ってみたのだが、予約なしでは満員で入れなかった。次回は、こちらの店に行き(予約して)、炙ったイカで熱燗をちびり、みたいな飲み方をしたいものだ。居酒屋で仕事の話を考えると、ちょっと疲れてしまうしなあ。

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八戸の夜

八戸で夜の名所といえば、観光案内にも乗る「みろく横丁」ということになるだろう。屋台村の元祖的存在だ。帯広の屋台村は、北海道内では有名だと思うが、この八戸みろく横丁はもう少し広域で知られているような気がする。
東京恵比寿の屋台村や松本にあるつなぐ横丁が、インドアの代表屋台村だとすると、こちらはアウトドア系の筆頭だろう。八戸は青森県内でみると雪の少ない地域だということなので、冬の時期でも営業できるようだ。
同じ青森県でも弘前の屋台村はインドアだし、北海道では札幌を含め降雪地域でアウトドア系屋台村は見当たらない。(ススキノの飲み屋ビルは立体的な屋台村だとも言えるか)

こちらは飲み屋街に向いた入り口

みろく横丁の中は比較的広い通路が通っている。お店は大小の差があるが、基本的にカウンターだけで十人も入れば満員になる規模だった。小体な店で店主との距離が近いのが屋台の特徴だろう。店主との会話が魅力という店も多いはずだ。

夏の終わりでどの屋台も扉は全開放だったが、不思議と虫が飛んでいない。蚊取り線香の匂いもしない。何か屋外営業の秘密があるのだろうか? 衛生管理は長年のノウハウがあるのかもしれない。 
満席に近い店もあれば、店主が新聞を読んでいる店もあった。コレも屋台村ではお決まりの光景だ。

やはり雪が降ると滑りそうな道路だなと、北国育ちとしては気になるポイントがちょっと違う。冬になり除雪をしても薄く氷は張っているだろうし、飲んだ後に扉を開けて無造作に踏み出した一歩は、「危険が危ない」レベルだと心配になる。それともロードヒーティングが入っているのだろうか。

こちらは広い通り側の入り口

みろく横丁入り口にある世界遺産認定のお話が、ちょっと微妙な気がする。北東北で世界遺産統一キャンペーンでもやらないと、地場の遺跡だけ宣伝してもわかりにくい。観光客にとって知名度が上がらないという危惧がある。
それとも、どこかに北海道と北東北3県の統合オフィスでもあるのだろうか。Jリーグ発足後から、日本もイベントマーケティングが上手くなったと思っていたが、地方自治体の壁が立ちはだかっているのだろうか。旅から戻ったら調べてみるかな、などとちょっとだけ真面目なことを考えた。

名物料理の一覧表

地元料理の店先で便利なものを発見した。八戸名物の一覧表になっている。この中から何を食べようかとあれこれ考えていた。一番気になったのは「どん肝刺」で、メニューの並び具合からすると魚介類らしい。「どん」という魚が八戸にいるのだろうか。
二つ目に気になったのが「塩辛やきめし」で、コレは料理が想像できる。多分、理解も間違っていないと思う。ただ、実食してみないと、想像が正しいかどうかはわからない。謎メニューは大好物だ。

とあれこれ店先で考えた後、実はそことは違う店に入った。店の入り口周りを見て直感で勝負というやつだ。この店頭観察で当たりの店を引く確率はおおよそ6割くらいだろうか。逆にいうと5回に2回は失敗したと思うことになる。
どちらかというと負けと感じる時は、ダメージ回復のため二軒目に挑戦する。しかし、深刻なダメージを負った時は、スゴスゴとホテルに引き上げる。旅先で夜のギャンブルはあまりお勧めできないし、2連続KOを喰らうと、その街のことが嫌いになってしまう。だから、名誉ある撤退にする。
かと言って、ネットで調べた高得点店舗が良い店かというと、意外とハズレが多いのが実感だ。居酒屋と町中華は自分の間を信じる方が勝率は高いと思っている。

店に入りメニューをあれこれ物色する前に熱燗を頼む。このときに出てくるお燗の温度とお通しが最初の認定課題だ。最近のお燗酒は機械式が主流のせいもあり温度設定が高すぎる。お茶より熱い酒を出してはいけないと思うのだが。そしてお通しが冷たいもやしのおひたしみたいなガッカリ系手抜き料理が出てくると、それだけで店を出たくなる。
こちらのお店では、お燗がちょっと熱めだったが、お通しはイカとさつま揚げの煮物。ああ、コレは美味いぞ。思わずおかわりを頼みそうになった。イカの味がよく出た濃いめの味付けは、熱燗の肴にぴったりだ。どこからか演歌が聞こえてきそうな組み合わせだ

鯖旨し イカ旨しだった 満足

自家製しめ鯖とイカの刺身を頼んだ。刺し盛りもうまそうだったがひとりで食べるには量が多いようで、好きなものを好きなだけ原則を貫くことにした。正解だったと思う。ちょっとだけ期待していた「どん刺し」は見当たらなかった。いや、そもそも「どん」が魚の名前ではないのかもしれない。
焼き鳥屋で鶏のくびを「せせり」と呼ぶように、何か当たり前の魚のどこかの特定部分なのかもしれない。謎は謎のまま置いておく方が、次に来る時の楽しみになる……と思うことにした。まあ、痩せ我慢というか意地を張っているだけのような気もするが。

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マルカン食堂 アゲイン

花巻に廃業した百貨店がある。耐震対応の改築費が捻出できない(改築すると儲からなくなる)ので廃業するというのは、ここしばらく全国で続いている。百貨店という設備産業はもはや儲からない「レガシー」でしかなくなったということだろう。
人口が30万人程度の地方都市、県庁所在地でも百貨店の存続は「無理事業」になっている。その廃業した百貨店の最上階にあった食堂が、百貨店廃業後に有志の手によって再建された。ありし日のデパート大食堂の復活だ。これが最近では人気の名店になっている。わざわざ行きたい店になっている。

営業時間はほぼランチのみだが、昼時には食券を買うための行列ができる。コロナの間は「密」対策もあり大変だったようだ。それでもなんとかビジネスを続け、夏休み期間中は大混雑だったらしい。良いことだ。コロナ不況に喘ぐファミリーレストラン業界は、この大食堂を再学習すべきだろうなあ。昔は流行っていて今は無くなっているものを、現代風に再生するというのは立派なビジネス戦略だ。

箸立てが、圧倒的なレトロ感 今ではここ以外で見ることも少なくなった

テーブルの上の調味料群がたまらなく懐かしさを感じさせる。醤油とソースに加えてタバスコと粉チーズがあるのは、この店最大の人気商品のせいだろう。周りを見渡すと四人に一人くらいは、そのスパゲッティ料理を注文している。パスタではなく、スパゲッティだ。
ただ、今回はスパゲッティは注文するのを諦めた。コレまで何度か訪れて、積み残しの宿題になっていたメニュー、普通のラーメンを頼むつもりだったからだ。

世の中のラーメン屋では濃厚豚骨系スープが主流となって久しいが、それでも昔懐かしあっさり系ラーメンを売りにする店もある。ただ、その平成風あっさり中華そばも昭和のラーメンと比べると、それなりに濃い味付けになっている。
このマルカン大食堂では、「濃い」ラーメンではなく、実に本当にあっさりしたラーメンが出てくる。麺も細めで、ツルッと食べるとはこういうことだろうと実感できる。トッピングも海苔になるとにチャーシューとメンマ(シナチクといいたい懐かしさがある)の組み合わせだ。The昭和と言って良い。完食するまで3分もかからない。

本当はラーメンだけにするつもりだったが、食券を買うときにどうしても誘惑に勝てなかったオムライス。コレはまさに食の造形美と言いたい黄色と赤のフォルム。料理としては完成形だ。銀座あたりの洒落た洋食屋で出てくるものとは異なる。中身のチキンライスはケチャップ味でチキンも少なめなのが良い。オムライスはご飯料理だし卵料理だ。
たっぷりかかったケチャップを楽しむ料理でもあるので、コレを肴に酒を飲むことができるくらいだ。その時は、黒ビールの小瓶がよろしい、などとこだわるのが昭和生まれのいじらしさだ。

ラーメンとオムライスに餃子を追加するという無謀な注文をした。花巻の名物餃子店「夜来香」が廃業することになり、マルカン大食堂でレシピーを受け継いだそうだ。この餃子はは満腹であっても挑戦すべき食べ物と思い、あえて注文した。
腹はきついが餃子は美味い、という困った状態で泣きながら(笑)完食した。皮の焼き目が強く、カリッと仕上がっている。具材はシンプルで肉餃子というより野菜餃子に近い。最初は浜松式に酢と胡椒で、途中から酢醤油とラー油に切り替えて食べた。まさに名店の味というものだった。

そして、マルカン大食堂マストバイアイテム、ソフトクリーム。甘いものは別腹という人がいるが、個人的にそれは嘘だと思う。満腹でデザートは、やはり御辞退申し上げる。ただ、今回はそこを曲げて食べてしまった。
ソフトクリーム自体はあっさり系で、昨今の主流である乳脂肪たっぷりの濃厚ソフトではない。コレが救いだったなと今更ながらに思う。
このソフトクリームの特徴は、味というより高さにある。そして、固形分が少なめなのですぐ溶ける。さっさと食べなければ上からドロドロと流れ落ちる。
そこで?、箸で摘んで食べるという「花巻式」の食べ方になる。周りでソフトを箸で食べる客が大半だ。迷わず箸で食べる。
相変わらずの「旨し」だった。このソフトの高い盛り付けは、ほとんど職人芸だなと味とは別のところにも感心した。

お約束の記念写真撮影用の穴あき看板も、箸を持ったソフトクリームなのだから、この店のソフトクリームがどれだけ人気者なのかよくわかる。

しかし、花巻に来てソフトクリームを食べて、それで帰るというのも、いささか寂しいものがある。次回は、温泉と宮沢賢治ゆかりの場所に行かなければなあと反省しつつ、花巻市の滞在は3時間だった。

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仙台でぶらり

仙台に新幹線以外で来たのは初めてだった。各駅停車の長時間移動でお尻が相当ダメージを受けている。各停の旅をすると、毎回初日にこの手厚い歓迎を受けて思い出す。軽量の座布団を持ってくるべきだと…普通列車のシートは長距離移動向けには設計されていないことを、すぐに忘れてしまう。
ホームを登ってコンコースに出たら特急の看板があった。この列車だったら、尻ダメージは少ないのかもなあ。

仙台の晩飯は、昔よく通った居酒屋にした。本店は閉店したようなのでホテル近くにある支店に行く。その途中で街見物をしたのだが、あちこちでランドマークにしていたお店がなくなっていたのは残念なことだ。

お目当てにしていたマグロ刺身盛りは休日のためかおやすみ。当てが外れてしまった。そこで、第二の選択として楽しみにしていた「カツカレーのライス抜き」だが、これはメニューごと消えていた。実に悲しい。
とりあえず時間稼ぎにガリ鯖を注文した。これでちびちびやりながら、メニューを確認しようという作戦だ。チビチビ飲むうちに気がついたのだが、メニューが半分くらい変わっている。

自分のお気に入りメニューがほぼ全滅していた。時間が経つのは早いものだなどと感慨に浸ってしまう。自分にとってのコロナ禍とは、まさにこういうことだ。気を取り直して新メニューに挑戦した。
「酢豚のうまいところだけ」というものだ。ネーミングはセンスあるぞと思いつつ実食した。要するに酢豚から野菜を抜いて肉だけにしたようなものだ。これはこれでうまい。串カツから串を抜いたようなものだと思った。一口カツの変形とも言えそうだ。
ただ、酢豚は中に入っている玉ねぎが好きなので、これではちょっと物足りない。できれば「玉ねぎたっぷりの酢豚」が食べたいものだ。久しぶりにあれこれと楽しませてもらった。次回来るときはカツカレーのライス抜きが復活していますように。

食べ物レポート

寿司食べ放題に行ってしまった

最近すっかりご無沙汰の寿司食べ放題に誘われた。やはり歳と共に食べ放題で元を取るのは難しいと感じるようになり、思い出せる限りで最後に寿司の食べ放題新田の葉5年以上昔のことだ。
だから、なぜかワクワクしながら(無謀なことに挑む冒険気分で)暖簾をくぐった。

テーブルの上には戦闘準備がすまされている。箸と小皿と飲み物受けの3点セットがお出迎えだ。食べ放題だから余計なものはいらない。テーブルの上にあるのは醤油だけで良い。

食べ放題開始前に色々とルール説明がある。まあ、注文しすぎて食べ残さないことが最大のマナーだろう。そのためには一回の注文貫数に制限がある。二人で一度に20貫まで。ただし、注文が届いたら追加20貫が可能になるとのこと。
おそらく最初の20貫を食べ切る前におかわりが届きそうだ。納得の注文システムだろう。
そして、開始と共に提供されるのが「大トロ」と茶碗蒸しで、これがお通しみたいなものだろうか。「大トロ」のおかわりは出来ないそうで、大トロファンにはちょっと寂しいかもしれないが、こちらにとっては支障なしのルールだった。茶碗蒸しはあっさり目の味付けで難なくクリアした。

食べ放題の良いところは、好きなネタを好きなだけという注文ができることで、同行者はいきなりの中トロと赤身を5貫ずつというマグロオンパレード。こちらは軟体動物系で攻めてみた。合わせて見ると、なんだかそれなりに寿司の持ち合わせのように見えてくる。食べ放題でシャリ玉の大きい握りが出てくると、ちょっとがっかりするが、こちらでは適正サイズで美味しく食べられた。流石に、2度おかわりすると胃袋も限界近くなる。米を肴に酒を飲むと、満足度が上がるといつも思うのだが、食べ放題の時は米を程々にしないと絶望的な満腹感に襲われる。これもいつも反省することだが、学習効果に乏しいためか、今回も立ち上がるのが嫌になるほどの満腹感だった。お腹いっぱいになって、罪悪を感感じるようになるとは、嫌な歳になってしまったものだ。次に寿司食べ放題に行くのは、3年くらい先のことになりそうだ。

街を歩く, 食べ物レポート

帯広の食堂がうらやましい

これぞ、街の誇り と言いたくなる

帯広駅から徒歩3分ほどの場所に、由緒正しい食堂がある。まさにThe 食堂と言いたくなるルックスだ。ファミレスの台頭ですっかり少なくなってしまった、街中にある大食堂だ。昔はデパートの最上階といえば、大食堂で決まりだったが、今では消滅したコンセプトでしかない。それが、街中の路面店として残っているのだから、奇跡に近い。
街中にある食堂の特徴といえば、店名の入った暖簾だろう。これがなくなると、その店の価値は半減すると言いたいくらいの重要パーツだ。

街の食堂のシンボルはこれだ

二つ目の重要パーツは店頭にあるワックス・サンプルで、これが退色して干からびている食堂は二線級という判定をすることにしている。二線級がダメな食堂かというと断定はできないが、店主のやる気が失せていて(店の表に関心がなくなっている)、看板メニューはなくなっていることが多い。まずくて困るというほどではないが、「推し」たくなるほどのうまさはない、という感じが二線級の特徴だろうか。
ワックス・サンプルを作るのはそれなりの費用がかかるから、店に対する投資を怠っていないという証明でもあると思う。何より、美味しそうなワックス・サンプルを見ながら、今日は何を食べようかとあれこれ迷うのが、食堂での最初の楽しみだろう。ファミレスのメニューブックとは楽しみの「威力」が違う。

店内はファミレス風

店内がファミリーレストランっぽくなるのは仕方がない。ファミレスのテーブルや椅子は、ある意味で人間工学的に研究されているので居心地がよい。現代人が慣れている暮らしの延長線にある。食堂だからといって、客の要望に合わせて変化しないはずがない。客席が物理的に変化するのは当たり前だ。昔ながらの小上がりや座敷を居心地が良いと思う世代は、もはやすっかり減少しているので、畳に座布団という席が無くなってしまうのは仕方がない。
ちなみにテーブルの上にあれこれ邪魔なものを置いていないのも、良い食堂の条件だ。全国展開するチェーン店、特に居酒屋やファミレスでは、テーブル上の見苦しさ、邪魔くささが限界を超えている。そこに気がついていないのは、チェーン本部の担当者と経営者だけで、企業として愚鈍さの表れと言いたい。自分がそうした店で最初にやることは、資格の邪魔になる販促物その他、全部まとめて使わない座席によけてしまうことだ。テーブルの上には調味料以外何もない状態にする。これで居心地がすっかり良くなる。販促物の中身は、99%見ることはない。たまに、内容を覗き見するが、時間の無駄使いをしてしまったと後悔する羽目になる。
センスの良い食堂では、壁にベタベタとポスターを貼ったりPOPをつけたりしない。見た目を簡素にする方が、居心地の良さにつながるとわかっているのだろう。

やはり大衆食堂で最初に注文するのは熱燗に限る、と勝手に思い込んでいる。強いて挙げれば第二選択としてビールもある。が、それも「生」ではなく熱処理済みラガーの小瓶が良い。黒ビールがあればもっと良い。だから、まずは熱燗を頼んだ。
酒が届くまで何を注文するかを考えているのが食堂での最大の楽しみだ。街の食堂では、つまみを頼んで、酒もおかわりして・・・というように本格的に飲み始めて長居をしてはいけないと思っている。酒はお銚子一本まで。あとは、サクッと何か食べて帰るのが、自分なりのお作法というものだ。注文を決めたら、お手隙の従業員を探し、手を上げて合図する。決して「すいませーん」などと大声で呼んでは行けない。注文が終われば、ちびりと酒を飲みながら店内のあちこちを見ているのも楽しい。周りの客の会話が聞こえてきたりする。お手軽な街の噂話であることが多い。あとは上司の悪口、自分の家族や友人のあれこれ。いかにも街の食堂の話題らしいが、生々しいこともある。
たまたま箸袋を見ていて気がついた。電話番号はあるが住所は書かれていない。帯広駅前としか書いていない。確かに、帯広地元民にとってはそれで十分だろう。思わずニヤリとしてしまった。うちのことは、みんなが知っているという、強いプライドが見え隠れしている。良いなあ、こういう気位の高さ。

何と言ってもラーメンが素敵だ

食堂で「おすすめは何?」と聞くのは無粋なものだと思う。誰もが好きなものをラインナップしているのが「街の食堂」なので、居酒屋や定食屋のように本日のおすすめを聞くというのは、どうにも自分の思考に合わない。
だから、腹具合で食べたいものを選ぶ。時間がなければカレー、時間に余裕があればラーメンかオムライス。ゆっくり食べたければカツ丼、軽く食べたい時はかしわ蕎麦かざるそば。そんな自分の中の定番から選ぶので十分だろう。
結局、いつもの通りに定番な味噌ラーメンを注文した。昭和的なシンプルラーメンが出てくると思い込んでいたら、しっかり豚骨スープの現代風味噌ラーメンだったのにはちょっと驚いた。街の食堂も日々進化しているのだと、逆に嬉しくもなった。
街に残る食堂は、まさにその街のレガシーだ。政治家の皆さん、オリンピックをやるより、自分の街の食堂を残すことから、仕事を始めると人気者になれると思います。

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帯広の真打は

帯広で何を食べると聞かれたら、迷わずカレーと答える。ほぼ全国区になった名物「豚丼」を差し置いて食べたいものが、カレーというのもなんだかさみしいものがあるが・・・・。この店のカレーは実に好物なので仕方がない。カレーは日本全国どこにでも有名店があるが、その名店を探し回ってあるくほどのカレー好きではない。
やはり、この帯広のカレー店が特別に好きなのだと思う。

帯広では郊外型の店がほとんどのようだが、街の中にも一店だけある。飲み屋が固まっている一角に近いので、おそらく締めの一品として人気があるのだろう。しかし、飲んだ後の締めにカレーというのは、締めラーメンよりヘビーな感じもする。

いわゆるどろっと系のルーカレーで、味は濃厚。辛味は後からじんわりと効いてくるタイプで、具材ゴロゴロ系ではない。どちらかというと全てが煮溶けている。ルーを楽しむカレーだから、ご飯は普通盛りを注文しても多めに感じる。いや、実際に盛りの量は多いはずだ。薬味はセルフで好きなだけ乗せる。いつも思うのだが、カレー屋で食べる福神漬けはどうしてこんなに美味いのだろう。

ルーの違いとトッピングのあるなしで多少変化するが、基本的にはカレー専業店だから注文するのに迷うことはないはずだが。これもいつものことで、まずはルーの選択には迷ってしまう。トッピングは、その日のお腹の減り具合で決めれば良いが、ルーの選択が悩ましい。たまたま今回はチキンカレーが売り切れていたので、迷いの選択肢が減っていてホッとした。それでも、結局は悩んでしまい無駄に時間がかかる。注文したのは、定番のインデアンルーだった。全く進歩がない。

チェーンのカレー店といえば愛知県出身のブランドが有名だが、どうも今ひとつ自分の好みとしっくりこない。カレーは家庭の数だけバリエーションがある食べ物なので、専門店のカレーだからと言って、必ず気にいるかというとそうでもない。うまいまずいというより、合う合わないの相性が大切な食べ物だ。
その点からして、このインデアンのカレーは相性ぴったりなので、できればお江戸周辺に出店してもらいたい。それが無理であれば、少なくとも同じ北海道内ということで札幌にお店を出してもらえませんかねえ、社長さん。
豚丼は札幌でも食べられるが、このカレーはわざわざ帯広に行かないと食べられない。それがちょっと悲しい。

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いちごと生姜の甘いもの

今年の夏旅は、3年ぶりの高知だった。あれこれ考える前にとりあえず飛行機に乗って旅してみるのが良いなとつくづく思った。そんな高知の旅で、一番印象に残ったのはいちごのケーキというのも、これまた珍しい体験だと思う。

風工房のジンジャーエールといちごショートケーキ

久礼港の横にある道の駅が開いたのは5年ほど前だった。そこにおしゃれなカフェがある。イチゴを使った洋菓子のお店に併設されている。町の人ばかりではなく、わざわざ遠くからケーキを買いに来るファンもいるそうだ。
元々はイチゴ農家のおばちゃんたちが手探りで始めたお店だと聞いている。道の駅が開設された時に引っ越してきた。いまでは道の駅以外でも販売するほどの成功を収めているそうだ。
生姜農家と提携した商品も開発されていて、ジンジャーエールがおすすめらしいので試してみた。名前の通り、生姜がしっかりと感じられる飲み物で、まさにこれがジンジャーエールというものであるという感じがする。瓶詰めにされているジンジャーエルとは全く別物だった。
定番のイチゴ・ロールケーキと合わせれば、まさに至福の時間だ。隣の席では家族連れが、大盛りのパフェを楽しんでいた。美味しいお菓子は人を幸せにする力がある。地元でとれる夏イチゴはそろそろ終わりになるらしく、色々と新商品も開発中とのことだった。

試作品として「炭入り」ケーキをご馳走になった。見た目は真っ黒だが、舌触りは滑らかであっさりとした仕上がりという感じだった。甘さも控えめで、炭粉の効用もあるらしい。濃い茶色のチョコレートケーキはよくみるが、真っ黒のケーキはインパクトがある。この試作品も既に新商品として発売されているはずだ。
漁師町のイチゴ・デザートというのは、なかなか微妙な感じもする。が、実食してみると、ケーキは繊細な味であり、かつ素朴な雰囲気を持つという素晴らしい仕上がりだ。鰹のたたきを楽しんだ後の、お口直しには最適だと思う。
この町で暮らせる人は幸せだろうなあ。

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名店は凛々しい

駅前の一等地と思ったが、人通りは意外と少ないので行列は目立つ

帯広の街を久しぶりにのんびりと歩いた。というか、飽きるほど歩いた。仕事の出張できた時は、夕方ホテルに入って、その後食事をするときくらいしか街を歩いていない。薄暗い時間だから記憶も曖昧だし、コロナの後でランドマークも変わっていたりする。
時間があるので街を行ったり来たりしたが、記憶していたより随分コンパクトな街だった。おまけに飲食店は閉店が目立つ。地方都市の中心部は衰退する一方なのだが、帯広も例外ではなくなったようだ。そんな帯広中心部に今でも行列のできる名店がある。

黙食は、観光客には厳しいか

お江戸でも老舗と言われている店は、店内が明るく清掃が行き届いていることが多い。蕎麦屋や天ぷら屋に、そういうこざっぱりとした雰囲気の店が多い。残念ながら町中華では、雑然とした、あるいは油染みた店が多いので、老舗とはいえ2度と行く気にならない店もある。
清掃だけではなく接客、客あしらいにも同じような気配がある。従業員の背筋が伸びたような姿、立ち振る舞いなど厳しい指導がなければ出来上がるものではない。神田の老舗そばで接客を受けた後、自宅近くのファミレスに行くと、その差は歴然だ。
その老舗の「凜とした」雰囲気が好きなのだが、この店も店内をマネージする女ボスがいて、的確に指示を出している。白い制服に身を包んだ若い女性従業員は、なんとなく看護師を思わせるキビキビした動きだった。昭和っぽい「優秀なる職業婦人」みたいな言葉が脳裏をよぎる。けして「キレキレのキャリアウーマン」みたいなカタカナ言葉は思い浮かんでこない。老舗の凄さは料理だけではないという証明だった。

肉の枚数が一番少ないやつがこれ

丼飯の上に乗った豚肉四枚。濃い味付けで、米をうまく食べるために作られた料理だと思う。某お茶漬けのりの宣伝のように、一心不乱に米をかき込み最後の一粒まで完食して、腹をさすり満足する。そんな料理だが、完成度、満足度とも実に高いレベルにある。
どんぶりとしては決して安くはないが、価格に見合った価値、そして価格以上の満足感という意味で、やはり老舗の力は発揮されるのだろう。
「凛」としたお店はすっかり減ってしまい、代わりにフレンドリーでコンテンポラリーな店は増えた。それが悪いことだとは思わないが、寂しい気分であることも間違いない。

食べ物レポート

鳥せいの若鶏

帯広に行ったら(あるいは十勝のどこかに行ったら)寄りたい店がある。カレーのインデアンは絶対定番だが、もう一軒は「鳥せい」だ。初めて行ったのは鹿追町の支店だった。農協の方と実に楽しい酒を飲んで、その時、鳥のうまさに感動した。「鳥せいうまい」という、いわゆる刷り込みが起きた。以来、鳥せい=Must Go マスト・ゴーという連鎖記憶になっている。
その後、富良野の支店にも行った。同じように満足した記憶が残っている。ただし、どの店に行っても鳥を食べた記憶と旨かったという記憶が残っているだけで、何を食べたのかは覚えていない。これはほとんど鳥せいマジックとでもいうしかない。

今回はしっかり何を食べたか記憶に残そうと事前にサイトでメニュー確認をした。そうしたら、なんだかメニューの数が思っていたより少ないシンプルさだった。あれれ、という感じがした。やたらバラエティーがあると思い込んでいたようだ。

とりあえずビールではなく、熱燗を頼んだ。冷たいビールをぐびぐび飲むのも良いのだが、注文した鳥が仕上がるまでには時間がかかる。ビールを頼むと、鳥が来るまでに腹が膨れてしまいそうだ。

鳥半身の直火焼きが到着した。追加で注文したのはお漬物だけ。酒も最初に一口飲んだら、あとは黙々と鳥を食べる。まずはもも肉を食べる。仕事柄、鳥の骨の位置は熟知しているので、骨付鳥を食べる時には何の問題も感じない。どこをどういじれば骨が外れる、身がほぐれるとわかっている。元・鳥屋のとても稀に発揮されるライフハックだ。
もも肉を片づけたあとは、手羽をむしる。骨になるまでしゃぶり尽くす。そのあとは手羽元からその付け根の胸肉を食べる。実は、ここが鶏肉では一番うまいパートだ。個人的な意見かもしれないが、この胸のつけね根部分には、旨味成分を感じるアミノ酸の量が一番多いという科学的検証もされている。(・・・はずだ)
15分ほどかけて、皿の上には骨しか残らない。口の中の油を漬物でさっぱりさせて、鳥半身完食となる。しかし、次は何を食べようか、という気分にはならない。もはや満腹中枢が満足しきっている。ほぼ肉だけで腹が一杯になっているので、気分は肉食動物の食後に近い。要は、あとは何もしないで寝るだけという気分になっている。
ここでようやく気がついた。鳥せいでは鳥半身直火焼きを食べて、そこでエンドになっていたのだ。他にある串焼きなど食べるだけの余裕がない。胃袋の隙間がなくなっていたから、鳥せいのメニューには大満足と勝手に記憶が書き換えられていたのだろう。
疑問は解消できたし、満足度は高い。できれば自分のうちの近くに支店が出てくれないものだろうか。などと思いながら、ほとんど飲み残していた熱燗をちびちび飲んでおりました。