
原宿にあるオフィスで打ち合わせがあり、なんと20年ぶりくらいで原宿駅界隈を歩き回った。一時期、原宿から千駄ヶ谷に向かったところにある会社で仕事をしていたことがある。原宿駅で降りてから竹下通りを抜けるのが通行動線だった。その当時も竹下通りは若者(Teen’s)で賑わう元気な街だったが、仕事の途中で通り抜けて歩くのはしんどい感じがあり、竹下通りの途中から横に抜け出して東郷神社の境内を歩いていた。当時の東郷神社は都内にある割に静かな場所だなと思っていた。
その静謐エリアだった東郷神社が、なんとビジネスビル複合体に大変身していた。うっすらと覚えていた東郷会館(結婚式によく使われていたはずだが)は影も形もなくなり、巨大高層ビルに変化していた。それだけでもびっくりなのだが、なんと神社自体もお引越したようで、妙に現代的な造形の社殿に変わっていた。知らないうちに時代は変わるものなのだなあと感嘆した。遷宮という言葉は知っているが、神社が物理的に引っ越したのを見たのは初めての経験だった。

その東郷神社の前を明治通り沿いにしばらく行ったところに、おしゃれな外観のマンションがある。オフィスビルとしても使われているとは思うのだが、原宿で住むならこんな場所がいいなと、20年前から思っていた。真四角なオフィスビルが並ぶ明治通りだが、このお瀟洒なデザインは、まさにThe Harajukuという感じがする。
都会的な住居というのは、居住性も重要だが、それ以上にルックス、見栄えが大切だ。こんなところに住んでいる自分は、なんて都会的なんでしょうと自己陶酔できるかどうかが、都市居住民の虚栄を満たす重要な要素だ。
埼玉県の端っこに住む我が身を思い返せば、こんな都会的でセンスの良いところに住んだ記憶がない。北の街では高級住宅街の端っこの隅っこあたりでワンルームマンションに住んでいた。それが唯一の都会暮らしで、それ以降引っ越したところを順番に思い出すと、まず埼玉県辺境都市で茶畑の真ん中に住んだ。そのあとは、川崎の工場地帯で電機メーカーの大工場の近くに住んでいた。2年ほど、ほぼ年中出張中という自宅がなくても生きていけるホテル暮らしを経験して、また埼玉県の辺境に住むようになった。さすがに茶畑は家の周りから亡くなったが、それでも車で5分も走れば周り中がさと芋畑と茶畑になる。首都圏によくあるサラリーマン(都市下層民)と農民の混成地帯だ。
ちなみに、アッパーなサラリーマン(彼らは自分のことをビジネスマンというと思う)は23区内のオシャレ系地域に住んでいるはずだ。例えば、原宿にあるこんなオシャレなマンション(コンドミニアムと言いそうだな)に、夫婦に子供一人、犬一匹で住んでいますみたいなことを想像してしまう。みんなが憧れる都会暮らしだろう。
だから、都会暮らしとは本当に縁がない人生だったなあと我が身を振り返りつつ、大変貌した原宿を散歩しながら思っていた。

帰り際にJR原宿駅竹下通り口から改札を抜けて気がついたのが、何やら怪しげな立て看板というか、お姉さん?の描かれた看板だ。最近は観光地に行くとこういうキャラ看板があちこちに立っている。どれどれと見に行ってみたら、どうやら「鉄キャラ」で、おまけにどうやらお兄さんらしい。

気になったので調べてみたらJR東日本の協力で進行中のプロジェクトのメンバー・キャラのようだ。山手線30駅で働く駅員さん(架空の人)が構成するアイドルグループで、某私鉄の駅キャラ(女性)のように、「駅」が擬人化されたものではない。あくまで「駅員」さんだ。「駅」が擬人化されれば、それは神様や妖怪の系統に属するものだが、あくまで「駅員」さんだからヒト族、人類の一員、それも日本人ということだ。この違いは、キャラ展開をする上で重要だ。
ちょっと前に騒動になった「温泉むすめ」のように、ジェンダー問題が起きない(起こさない)のは、キャラ全員が男性であることが重要だろう。(全員を確かめてはいないが、多分男性オンリー)これはキャラ業界でもジェンダー問題が周知されてきているということだろうか。少なくとも「萌」を中心とした女性キャラは、フェミニズム対アンチフェミの対決構造になりやすい。が、「イケメン」を主軸にした男性ユニットの炎上騒ぎは耳にした記憶がない。
おそらくフェミニズムに対応する男性主義(適切な対応語が見つからない)は、存在し得ないのだろう。男を謳歌する思想体系(で多分あっていると思うが)は、一歩間違うと旧来の男性中心社会、男尊女卑的な思想とみなされるから、現代では存在し難い。
おそらく、男性「萌」キャラの支持層・ファン層を考えると、一部の生物学的男性を加えたとしても、生物学的女性の方がはるかに多い感じがする。韓国系男性ユニットの例を見ても、支持層は年齢の幅が圧倒的に広がった(10代から60代くらいまで)生物学的女性層であり、まさに「軍団」規模の勢力だ。その例を見ると男性キャラでしたてあげるほうが、ジェンダー問題とは関わらずに行けそうだと思える。そういえば女性の地下アイドルと対応する男性地下アイドルは存在しているのだろうか。これも微妙なジェンダー問題になりそうだが……………
通行人には圧倒的に女子高生が多い竹下通りという場所を考えると、この「竹下」君は人気がありそうだ。竹下口の通路に貼ってある意味がよくわかる。ちなみに、池袋や上野の担当駅員はもう少しワイルド系かなとサイトを覗いてみたら、メンバーにマッチョ系は皆無で(マッチョなアイドルは存在しないのか)、ちょい悪というか少々ヤバそうな雰囲気があるキャラは御徒町と田町のお二人だった。(個人的な感想です)
若者で溢れかえる原宿竹下通りと東郷神社のアンバランスを楽しみながら、最後には現代キャラ考察とジェンダー問題に思いを馳せる、大変有意義な原宿ぶらぶら歩きだった。
たまには、知らない街をぶらつくのも大事だと思う。コロナの間、家に篭りすぎていて世界の動きについていけていないのだなあ。
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