街を歩く

インフレの時代 あれれな結末

高級ネタの真イカ

またイカの握り寿司が食べたくなり、のこのこと行列のできる回転寿司(郊外型)に出かけてしまった。この店が人気の秘密はシャリとネタのアンバランスにある。つまりネタが大きすぎるところにあるのではないかと常々考えている。実食するとわかるのだが、握り鮨を口に放り込みもぐもぐしていると、コメから先になくなっていく。ネタが大きいので、口の中に残るという感じになる。
お江戸にいるうるさい鮨の評論家に言わせると、あれこれ難癖つけられそうな自分の分析だが、このネタ大きめ鮨はいつ食べても美味いと思う。理屈は抜きで旨いもん勝ちだ。
特にマイカは肉厚で、甘みがあり歯応えもガツンとくる優秀品だ。わざわざ食べにくる価値がある、並んで待つ価値があるといつも感心するのだが、ふと気がつくと一皿の値段がずいぶん、いや、驚くほど上がっている。マイカはすでに大衆ネタから高級ネタの仲間入りをしていた。ちょっと悲しい。いや、とても悲しい。

昔は、サバが5割くらい大きかったような(大袈裟な)記憶がある
(あくまで記憶です)

続いて我が絶対定番であるしめ鯖を注文する。出てきた品物を見ると鯖がちょっと小さくなった気がするが、その分身が厚みをましたようだ。この店のしめ鯖は自家製らしく(北海道のローカルすしチェーンは大体が自家製しめ鯖のようだ)、大手全国チェーンで提供される「しっかり工場で作りました」的なものとは歴然と違う。
日本海側の各地にあるローカル鮨チェーンでも、大概は自家製しめ鯖を出しているので、これは日本海沿岸圏特有のすし文化なのではないかと疑っている。(笑)
工場製の「シメサバ」は酢が効き過ぎている。単純に酸っぱすぎる。しめ鯖は塩で締めて酢で洗うのだから、酢の味は控えめであるべきだろう。お江戸で自家製しめ鯖を楽しむには、高級鮨屋に行くしかないが、北海道では回る寿司屋で大丈夫だ。この差も大きいなあ。

大好物なので、これだけを5皿くらい食べても良いと思うさばしそまき

そのあとは、サバの巻き寿司を注文する。いつもであれば最低2皿は注文する、これまた我が絶対定番ネタなのだが、今回は一皿だけにした。こちらも、大衆ネタだったはずの鯖系鮨が高級ネタに昇格して値上がりしていた。ちょっと悲しい。

鯖系巻物に新作が登場していた。なんと、サバのハラミを巻いたもの、それも裏巻きにしたものがデビューしていた。これはぜひ試食しなければと、通常版を一皿、新作を一皿頼んで比較調査をした。結論として言えるのは、どちらも美味い。ただ、ハラミ使用と言われても通常版との差はほとんどわからない。(自分がバカ舌の持ち主だというだけのことかもしれない)
そして、問題にしたいのは新作が5割程度お値段が高いことだ。明らかにインフレ時代に生まれる対応策、つまり新商品投入による値上げの典型例だろう。そこがちょっと残念だ。
値上げをするには中身の原料を変えるだけではなく、見栄えも変える必要があるので裏巻きにしたのは理解できる。ただ、味はもう少し定番から変化させた方が良いかなあ。
あとは、定番は醤油で新作は塩で食べようと提案して食べ比べ商品に変えてみるとか。もう一息、細かい芸が欲しいところだ。ただ、こんなことを言い出すのはよほどの鯖好きしかいないから、放置しておいて良い愚案だと思う。

最後に、これぞ北海道ローカルの極地、新香巻きを頼んだ。以前にも書いたことがあるが、北海道では中身が奈良漬の巻物を新香巻きという。お江戸あたりでは、新香巻きといえば中身が大根の漬物(黄色いたくあんもどき)が入っているものが多い。そもそも野菜入り巻物でポピュラーなのは新香巻きではなくかっば巻きだろう。
結局、この日は握り2皿、巻物3皿の注文だった。昔であれば全部百円皿の超低価格注文だったはずだが、今ではイカも鯖も高級魚扱いになり、お値段は倍くらいになっていた。もう2度ど来ないというほどの値上がりではないし、味が変わったわけでもないから、相変わらず満足度は高い。ただコスパがちょっと悪くなっただけだ。観光客であれば笑って見過ごす程度の値上がりだし、今やインフレの時代だからと諦めるしかない。できれば値上がりに合わせて接客要員なども調整してくれれば良いと思うことにしよう。
そういえば他の店でも鮑は5割近く値上がりしていたから、サバ系握りの値上がり額は順当なものかもしれない。ただ、インフレ時代には逆張りの成功者が出てくる時代とも考えられる。そのうちに値上げのなかった(できなかった)平成時代にノスタルジーを感じる世代を対象にした、新しい業態が開発されそうな気がする。キャッシュレスの時代に、ワンコイン、1000円札一枚ポッキリといった、これまでに使用されてきた安さのキーワードが変わるのも間違いない。新しいキャッチフレーズ、新しい販売方法がどうなるのか楽しみだ。外食産業の新しい息吹が生まれるかもしれない。と、インフレを肯定的に考えることにしましょう。

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