街を歩く, 食べ物レポート

タイムスリップ感をあじわう

札幌の副都心と言われる新札幌地区にあるラーメン店を贔屓にしている。そのあたりに行く機会があれば、だいたい立ち寄ることにしている。昔っぽい味のラーメンが売り物だ。店内は昭和中期のおもちゃや看板などが陳列掲示されていて、いわゆる昭和レトロ推しな店だ。
今では消失した炭鉱町の名物食堂で提供されていたラーメンを復刻しているから、まさにThe 昭和 で間違いない。
ただ、今回も懐かしラーメンを食べにいったら、店頭看板の上に貼られた「昭和の良き時代の店です」という文言にちょっと引っかかってしまった。別に文句をつけるつもりはないのだが、昭和の最終期や平成生まれの人にとって、昭和とは自分の記憶にない未体験時代だろうから、江戸時代とか鎌倉時代と同じ程度の「想像の世界、時代」でしかないはずだ。そうなると昭和が良き時代だったと思えるのだろうか。
知らない時代=良い時代にはならないだろうし、そうなると自分たちの親や祖父母が生きていた時代の話を聞いた結果、昭和は良い時代だったのねということになるのだろうか。
リアルに昭和を生きてきた世代、昭和初期生まれ、昭和中期生まれの世代は、今やすっかり高齢者層であり、ましてやその大半は後期高齢者、要介護高齢者ではないか。その世代にとって昭和が良い世代かどうかはそれぞれの思いがあるだろうが、少なくとも自力で外出が難しい世代であり、昭和を懐かしむために外出するのは難しい人が多いことは推測できる。
そうなるとリアル昭和を知っていて、それにノスタルジーを感じる世代は客層として極めて少数になるのではないか。
とすれば、経営上の課題として考えるべき主たる客層は、やはりリアルな昭和を知らない世代になるであろう。かれらが昭和に感じるものはノスタルジーではなく、タイムスリップ感、自分の知らない日本を体験してみたいという気分ではないだろうか。加えて言うと、昭和リアル体験のない世代にとって、昭和世界とはハリポタ的なファンタジー世界、ドラクエ的なRPGゲームの中に登場する仮想世界みたいなものではないのかと思う。
そんなことを看板の前で立ち止まり考え始めてしまった。まったく「いかん、いかん」だ。我は時代の考察をしに来たのではなく、ラーメンを食べにきたのだぞ、とセルフツッコミをした上で自己反省をする。

今回は3種類ある昭和の醤油ラーメンのうち、初代が作っていた元祖なラーメンにしてみた。当然、リアル昭和体験があるから、「そうそう、この味だよね、なつかしー」と感動しながら食べてしまう。メンマではなく支那竹が乗っていると言いたい。赤い渦巻きのナルトが乗っているが、昔より厚切りだと感心した。昔は輪切りのゆで卵が一切れだけ乗っていたが、今では丸々一個乗っているのが嬉しいと言いたい。チャーシューは明らかに昔のものよりうまい。しっかりと肉々しい味がする。そして、北海道ラーメンの絶対的トッピング「お麩」が乗っているのが実に懐かしい。などなどノスタルジー的な感激どころが満載なラーメンなのだ。
ただ、やはりこういう楽しみ方はリアル昭和体験世代の特権というか、罠のようなもので、昭和を知らない世代には楽しみようがない。今後滅びゆく種族を相手にしたノスタルジー商売はどうにもお勧めできないなと思う。
だからこの店はノスタルジーではなく「タイムスリップ感」を売り物にして、長く営業を続けていて欲しい。滅びゆく世代の一員としてそんなことを思うのだが、美味しいラーメンを食べるには余計な情報でもあるようだ。
次に来る時には、2代目が作ったというラーメンと給食セット(アルミの弁当箱に入ったライス+おかずセット)にしよう。

ちなみにセルロイドやブリキのおもちゃというのは、もはやどこにいったら売っているのだろうか。全国チェーンの駄菓子屋でも見かけないなあ。Amazonあたりで売っているのかな………

コメントを残す

以下に詳細を記入するか、アイコンをクリックしてログインしてください。

WordPress.com ロゴ

WordPress.com アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト /  変更 )

Facebook の写真

Facebook アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト /  変更 )

%s と連携中