食べ物レポート

金曜夜の喧騒が復活していた

友人たちとの定例飲み会に今回は懐かしのゲストが一人ということで、新宿の夜、それも金曜に出張ってきた。街をすれ違う人の半分は外国人と言いたくなるくらいの訪日観光客がJR新宿駅から歌舞伎町に向かっていたが、その流れに逆らって新宿駅南口を目指す。
店名を見てずっと疑問に思っていたのだが、「のだり半」なのか「だり半」なのか、それをお店で尋ねようと思ってすっかり忘れてしまった。確か鮨屋の符牒で「だり」という言葉はあったはずだが。

店の前に黒板が置いてあるのはよく見かける。日替わり定食だったり、本日のおすすめだったりが描かれている。だが、なんとホワイトボード(それも会議室によくあるやつ)が置かれていると、サラリーマンの方達はそれなりに身が引き締まる思いがするのでは……………
本日の議題は、「天ぷら」と「酒蒸し」です、ということらしい。全員謹聴。

宴会コースなので飲み放題付きで7品(同行者が教えてくれた)とのことだった。まず最初に前菜としてあん肝が出てきたが、この登場の仕方はすごいな。従業員から言われてみるまで、何が出てきたのかわからなかった。あん肝ってメインアントレ風にもなるのだな。フォアグラのソテーならぬあん肝のソテーが存在する気がしてきた。ちょっと食べてみたいかもしれないな。

鮨屋でサラダももはや当たり前の時代だとはわかっているが、こうしてドカンと野菜が出てくるとやはりなんと言いますか、抵抗感というか違和感みたいなものも感じなくはないが。でも、食事のバランスとして野菜は食べた方が良い。それが鮨屋であっても野菜は大事と言い聞かせる。
お味は酸味が強めでさっぱりした味わいだし、わかめは美味しいので文句はない。

ぽんぽんと良いテンポで魚が出てきた。2時間のコースなので料理の出方が良いペースだった。魚料理でのフルコースもなかなか楽しい。ただし、食べ方に手こずるものもあり、さっさと片付けるためにはさっさと食べ終わらなければならないから、なかなか忙しい。出てくる料理はボリューム感もあるので、周りの客層を見ても比較的若めだった。というか、自分たちが最長老的な感じがした。
店内はかなり密着した座席配列で、コロナ前と同じ程度の詰め方だ。それが満席になっているのだから、周りの会話は丸聞こえで、アルコールが入っているせいか誰もが大声で話している。懐かしい光景だと言えばそれまでだが、他人様のあれこれを聞くに都合が良い(笑)ついつい隣のグループの話を聞き込んでしまった。また時代は変わっているのだね。
最後に出てきた鮨の盛り付けを見て、これまたちょっとびっくりだった。ネタが全部「赤」系統で色目の変化がなし。卵の黄色もなければ、イカやタコの白もない。ましてやタイやヒラメの白身魚もない。(厳密に言えば金目鯛は白身扱いだと思うが、皮目が真っ赤だしなあ)
これは、個人的には大革命に近い盛り付けで、目でも楽しむ握り鮨という伝統感は全く考慮されていないようだ。おそらく濃い「味」優先ということなのだろう。一番人気のサーモンが入っていないのは不思議だが、嗜好の変化に合わせて変わっていくのは大事なことだ。そもそも江戸前の握りとは生魚は乗せない食べ物だったのだから、変化がダメだと言うつもりもない。多少はショックを受けながら、それでも美味しく完食した。

2時間ほど食べて飲んで満足したのだが、きっちり時間で終了して次々と時間ですと言われて退出していく客を見ていると、なんとなく昭和バブル期の飲み屋を思い出した。バブルの頃は需給バランスが崩れていて、行きたい店の予約も取れない「店強し」の時代だった。
それがバブルの後は店に客が来なくなり、あの手この手の安売りを含めたサービスが横行した。「客強し」の時代だ。どうやらコロナの後は、「店強し」に戻りつつあるらしい。
戻りといっても、そのバブルを知る人も少ない時代になってしまったし、昔は良かった的なことを言うつもりでもない。ただ、バブルの後に負けた原因を分析して生き残った企業と退場した企業がある。今の時代に合わせすぎると、次の時代に生き残れない。コロナが終わり客が戻ってきたから、多少は損を取り返すと言うのは当然だろうが、儲け方の匙加減が難しい。驕れるもの久しからず、昔の人の警句が耳の中で繰り返しになっていた。

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