小売外食業の理論

養老乃瀧本店?ビルで

池袋に所用があり、そのついでにお勉強がてら「養老乃瀧」本店(本社ビル)にある、一軒め酒場に行ってみた。本社ビルだけあり、グループ内の別ブランド数店舗が同居している。韓国料理のレストラン(居酒屋?)があるのも初めて知った。後でネットでメニューを調べてみたが、何やら面白そうなコンセプトだったので、次回は「韓国飯」を挑戦してみよう。
これも初めて知ったのだが、この一軒目酒場は本店である?せいなのか、朝8時から営業となっている。ここに朝から酒を飲みにくるのは一体どういう職種の人なのか。深夜営業を終えた飲食店の従業員みたいな方たちだろうか。三交代勤務で稼働する工場の近くには、こうした朝から営業する飲み屋が存在しているようだ。都内で言えば王子や赤羽などで見かける。しかし、西池袋に24時間創業の大工場があったかどうか、全く記憶にない。おそらくだが、単純に朝から酒を飲むオヤジが多いだけかもしれない・・・

一軒め酒場は一号店からずっと観察してきた。自分の中では外食産業のいくつかある「ブランドの定点観測点」の一つで、平成不況が生み出した居酒屋第4世代みたいなものとして認識していた。チェーン店でせんべろ(1000円でベロベロに酔う?)を目指した面白い業態だと思っていた。
祖業である「養老乃瀧」がファミレス化というか、メニューの激増で一体何屋なのだと言いたくなるほど居酒屋から業態離れして行ったので、それを軌道修正したシンプルコンセプトという見立てをしていた。あとは平成の大トレンドである安い、早い、うまいという某牛丼チェーンみたいな三つのテーマを実践しているという理解だった。
平成期前半から中盤にかけて外食業界のトレンドは、「昭和レトロ」というテーマ性は重要ではなかった。バブルが崩壊した後の、この先何を目指せば良いのかという試行錯誤の時代だった。そもそも時代を象徴するようなテーマがないのが、平成前期の特徴だろう。
だから、一軒め酒場も最初のうちは「せんべろ」推しではあったが、「昭和ノスタルジー」的な部分はきわめて薄かったように思う。

ただ、このコロナの3年間は若干軌道修正した感があり、店頭に大きな暖簾がかかったり店内を改装して「昭和ムード」を強調している。本店には初めて入ったのだが、なぜか提灯が大量にぶら下がりお祭り的イメージがある。カウンターの前には大型テレビがかかっていて、確かにスポーツバーというより昭和の街頭テレビとまでは言わないが、大衆食堂でプロ野球中継を見るような昭和感がある。
この日は何も考えずに入ったのだが、まさに世界野球の決勝戦、それも最終回の攻防という一大イベントのタイミングだった。店内は野球観戦ジジイで、満席だったのには思わず笑ってしまった。なぜ、家で見ないのかと不思議だが、酒飲みながら観戦したいということなのだろう。
最後のバッターの時には「今からしばらく野球を見るのに忙しいので、注文受けません(笑)」みたいなノリの良い従業員さんだった。
しみじみ昭和の居酒屋感があったのだが、それは狙っているものでもないだろうという気もした。

日替わりメニューは紙に書かれたものだが、定番品はスマホからの注文になる。ただ、カウンターに座っていた野球観戦組(全員高齢者)に対しては口頭注文で対応していた。この辺りがアフターコロナの過渡期対応だろう。場所にもよるが、平成のせんべろコンセプトで捕まえていたシニア世代(?)も完全リタイア組になり、客層としては減少していく。そこに新しく取り込むべき客層として団塊ジュニアから平成生まれまでの世代が想定される。団塊ジュニアはデジタル世代の先駆けであり、平成生まれに至ってはデジタルネイティブなので、メニューの電子化、決済のスマホ対応などなんなく適応する。
時には情弱と呼ばれるデジタル・マイノリティは少ないはずで、特別な配慮も必要ないだろう。ただ、その新ターゲットに対しては「せんべろ」コンセプトに変わる新しいテーマが必要なる。それが「昭和のテーマ化」であり、これまではメニューの一部に過ぎなかった昭和感が、店内外装にまではみ出してきたというところだろうか。
メニューは少量安価が基本だから、酒のつまみ、それも一人飲みに向けた仕立てとなっているのは明らかだ。

梅味好き、冷麺好きとしてはうれしい一品

前々からちょっと不思議だなと思っていた締めのメニュー、冷麺を頼んでみた。昭和レトロ的なメニューとしては随分唐突だなと思ったのだが、この店が入っているビル(本社ビル)の前に立って看板を見てようやくわかった。新コンセプトである韓国レストラン・居酒屋とのメニュー・原材料を共有するという文脈で理解できる。つまり、一軒目酒場向けの昭和テイストメニューではなく、会社全体として懐ろの事情が重要ということだろう。
どちらにしても平成から令和にかけて、客層の変化を柔軟に対応していこうという意図はよく見えてくる。やはり、この店はしばらく定点観測対象としていこうと思う。居酒屋業界大手が、変質と迷走を続けている今、小回りのきく次世代チェーンから新たなトレンドが生み出されるのではないかと思う。
居酒屋冬の時代がテーマレストランの芽吹きになるのかもしれない。

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