
大変世間を賑わせた回転寿司チェーンの店に行ってきた。あの後は何か変わったのだろうかという単純な興味だった。肝心の鮨はずいぶん値上がりしていたので、この業態はもう一波乱起きそうな気がする。単純値上げを受け入れてもらえるほど、客が満足しているかどうかがチェーン間の勝負になるのだろう。
さて、まず入り口付近で「交換できますよ」と書いてある。やはり気になる人はいるだろうから、当然の話かなとも思うが、そもそも「気になる人」は店に来ないのではないか、自分の中ではセルフボケツッコミ的なテーマになってしまった。多分、こないよなあ。

お店の中での禁止事項で、明らかに今回の一件で追加されたと思うのが、イラストの右側2コマだただ、これも事件前にはあったのかもしれない。なかったかどうかは記憶にない。禁止事項のあれこれに関して説明文があるが、文章の表現が「お断りします」と「禁止します」など揺れがあるので、いかにも急いで対応した感があるが、どうも文言のこなれが悪いかなあと感ずる。「付け焼き刃」的な感が否定できない。

回転レーンの上から寿司の皿は消えていた。注文すると流れてくるのだが、他チェーンにある特急レーンのような造り込みにはなっていないので、物理的に事故再発を防ぐ(他人の注文した皿に悪さをするのを物理的に防ぐ)仕組みにはまだなっていないようだ。
間仕切りのアクリル板が設置されていて、自分の前の空間が狭くなっているから、皿にいたずらをしにくくわなっている。とりあえず対策してみました感を醸し出す。
これまでは客の善意に頼ってきたから仕方がないとはいえ、再発予防という点ではまだまだ発展途上というレベルだ。法的措置による「脅し効果」で再発防止が図れるというのなら、まさにこの世に警察はいらないという古典的な皮肉が帰ってきそうだ。
従業員の悪質投稿に対しては勤務時間中のスマホを取り上げる?(事務所に保管させるなど)で、業務的に対応ができた。しかし、客(を装っている犯罪者)に対しては、有効な対抗策は現時点で見つけられていないということだろう。

調味料は従来通り卓上に置かれているが、入り口の文言を信じれば、希望するとこれを全取り換えしてくれるということだ。醤油を舐めたやつもいるし、箸を舐めた、生姜を直喰いしたなどありとあらゆる悪戯、悪さが動画で上がっているから、それに対応するとしたら全部を取替えするしかない。
客席内の従業員数は、それに対応できるほどの人数配置ではないから、全客に対して対応は難しいというのは見ればわかる。この辺りも、見る人から見ると「なんちゃって対応」という感じがするのではと思う。

ガリもお茶も昔の通りで、個包装などの対応もしていないようだ。ただ、全店対応が遅れているだけで、順番に新しい仕組みを導入しているのかもしれない。たまたまなのか、この店では他チェーンで見たような変化は感じられなかった。
一番変わったなと思うのは、皿の色で価格が変わっていることだ。120円、180円、360円になっていた。これは昔の回転寿司スタイル(全皿均一価格ではない)に戻った訳で、「全皿100円均一」が持っていた、強いそキュ力はかけらもない。業態のコア・コンピタンスを捨てたということた。この値付けだったりプライスラインの持ち方が今後の回転寿司チェーンの差別化、マーケティングでの騒乱要因になる。均一価格に変わる戦闘力をどこに求めるかだが、普通であれば味の高品質化、つまりもっとおいしくなりましたにある。しかし、このチェーンは昨年、公取の指導を受ける「おとり販売」で信用力を低下させているのだから、味の強化作戦は取りにくい。どうするのだろうか。

悪意ある犯罪者(客とは言えない営業妨害者)により、店内オペレーションの転換を迫られるチェーン本部としては物理的な改装も必要で、ある意味無駄な?設備投資になりかねない。ただ、悪意ある犯罪者、無自覚な犯罪者が撲滅されるはずもないから、普通の客に対する「安全安心」の担保は必要で、それに加えて値上げをするというのは、難度Cを超える離れ業と同情する。
数ヶ月ぶりに行ってみたが、原材料値上がりを転嫁する値上げ策はうまく行っているのだろうか。それに伴うオペレーションの変化、メニュー改変、マーチャンダイジングの変化などは、もう少し時間をかけて観察してみようかなと思った。現時点では、まだ現場がこなれていない、混乱状態が継続しているような感触がある。
コロナの覇者になるはずだった回転寿司業界が、予想外の事態にジタバタしているのを見ると「盛者必衰」とか「諸行無常」という言葉が思い浮かぶ。たかが回転寿司の話ですが、あれこれ考えさせらるものなのであります。