
高知の友人から紹介されてご一緒した、中土佐町の塩職人?からのいただきもの「天日塩」で、焼き肉を食べたいと思い、焚き火で肉を焼くことにした。天日塩とは海水をお日様に当てて乾燥させるものだそうで、大鍋に入れた塩水を火を使い水分を蒸発させて作るのではないため、塩の結晶の粒が大きい。
その塩の結晶をそのまま齧ってみると、塩以外の成分が微妙な味付けをしていて、旨味や甘みを感じる。まさに自然の恵みという言葉がぴったりくる。細かいサラサラした塩化ナトリウム粒ではなく、旨みを感じる「旨塩」というべきだろう。
その天日塩は3種類があり、赤い袋は肉用だと聞かされた。肉用塩の違いは説明を受けて、その時は納得していたのだが、今では思い出せないのが残念だ。それでも、肉と合わせて食べて美味ければそれで良いだろうと開き直って試食開始だ。
単純に塩だけで食べるのであれば、安い輸入牛肉で赤身肉が良いなと思った。いつもであればオーストラリア産牛肉にするところだが、今回はちょっとお高いカナダ産牛肉にしてみた。

焚き火を始めてしばらく時間が経ち、薪が熾火に変わった頃、網焼きで肉を焼いた。そこにバラバラと赤い袋の天日塩をかけた。肉を大きめに切って頬ばる。いや、とてつもなく美味い。焼いた肉と塩だけでこんなにうまいものができるとはと感激した。
確かに、焚き火の効果もあるだろう。肉に軽く煙の匂いがついている。オキになって安定した火だから遠赤外線による効果もあるだろう。何より、肉の上で半分溶けかかった塩の結晶が、ガリっとくる歯触りが良い。
肉を切っては焼きながら、噛み締める。切って、焼いて、喰らう。その繰り返しだ。おそらくこれこそが、文明が始まる前から人類が楽しんで来た、先祖返りに近い原始のグルメだなと思う。火と塩と肉と、それがあれば荒野で人類は生き延びることができたのだ、などと軽く酔いの回った頭で感動していた。
キャンプ向けに色々な塩入スパイスが発売されているが、スパイスなしの塩だけで楽しむのも良いものだ。次は、天日塩標準版である「白い袋」の塩で焼き魚を楽しんでみようと思った。

もう一つの塩も試してみた。これは東京都目黒区にある会社が発売している「燻製塩」で、その粒度は実に細かい。いわゆるサラサラの塩だ。そのサラサラした塩に煙の匂いがついている。その燻製塩を、まだ凍っている冷凍枝豆にかける。しばし放置して、半解凍くらいになったかなというタイミングで食す。
枝豆の皮が燻製香に覆われて、実に美味なのだ。これぞお手軽クッキング(調理していないが)の至高レベルだと自負している。こだわるのであれば、冷凍枝豆は多少値段を張るものにして、「茶豆」にするのが良い。枝豆はスーパー各チェーンでNB・PB 色々発売されている。その冷凍枝豆を散々に食べ比べた結果を独断と偏見でのべると、一番のおすすめはCGCの茶豆だ。(個人的な感想です)
そして、茶豆を食べながら晩飯の用意をした。塩で肉を食らう時の必需品、米を炊く。

一人用の飯を炊くには、メスティンが便利だ。熱伝導が良いせいなのか、米を炊いてもおこげにならない。コメにこだわりはないが、無洗米にするのが便利だ。無洗米は事前に水につけておく時間を長めにとればふっくらと炊き上がる。パエリアのような炒めた後に茹で上げるコメ料理にも向いているのでキャンプ向き食材だ。
火にかけてしばらくすると、蓋の隙間から米汁がぶくぶくと沸騰して溢れてきたら火を弱めぶくぶくが止まったらメスティンに耳を近づける。パチパチ音がしたら火を止める。そのまま15分ほど放置する。以上でメスティン飯の炊き方だ。これも、ほぼ究極の手抜きメニューだと思うが、うまいものは美味い。

ちなみに、今回は白飯ではなく炊き込み飯風にアレンジした。金沢で買った能登のエビ塩をスプーン一杯ほど炊く前の米に投入する。フライパンで塩胡椒で炒めた鶏肉をその上に適当に乗せる。以上で仕込み完了。
炊き上がったら、上から白胡麻をたっぷりかける。エビの出汁が効いた白飯に鶏肉の旨みが混じる。いわば魚介と肉のWスープ状態で、米が抜群に上手くなる。炊き上がった米の上に乗っかっている鶏肉をつまみ、スパイスを追いがけして食べれば、これは絶好の酒の肴だ。名古屋が誇る味噌ソース「つけてみそ、かけてみそ」をかけて鳥味噌仕立てにするのも「あり」だろう。
焚き火飯のうまさは、こんなふうにシンプルかつ手抜きで美味いものを食べられることにある…………と思うのです。