街を歩く

カツカレー行脚@池袋

池袋の南側、ジュンク堂の隣にある洋食店は、時々無性に行きたくなる。昔は東京東側に密集していたジロー系の洋食に似ていると思っているが、ジローはほぼ揚げ物専業店のようなところがあり、メニューバリエーションで言えば、こちらの方が数段優れているような気がする。
お気に入りの洋食屋の条件はシンプルに一つで、オムライスがうまいことだ。特に、オムライスの上に真っ赤なケチャップがかかっているのが必要条件だ。ケチャップの代わりにデミグラスソースがかかっていると残念というか、自分的には圏外扱いになる。
この店は、オムライス以外にもあれこれお気に入りの食べたいメニューが多いので、実にありがたい。大衆食堂的な洋食キッチンとしてイチオシだ。

日替わりメニューもなかなかボリュームがある構成だが、この店で日替わりを注文したことはない。定番メニューに食べたいものが多すぎて、日替わりまで注文が回っていかない。それもちょっと悲しい。オフィスがこの近くにあるサラリーマンが羨ましい。
この店の定番はオリエンタルライスという、野菜肉炒めが乗っかったライス(カレーライス的なオン・ザ・ライスなかけごはん)だが、これを頼むのも10回に一回ぐらいだろう。オムライスとカレーのヘビー・ローテーションで精一杯だ。空腹度が高い時には、追加で単品注文をすることもある。メンチカツは注文することが比較的多い。

どいつもこいつも絶対美味いに違いない 腹ペコキラーだ

カレーに限っていうと、選択肢は多くなり悩ましい。基本的にとんかつ、チキンカツ、メンチが定番のトッピングだ。たまにチキンカツ・カレーを頼むこともあるが、今日はトンカツ(ロースカツ)カレー一択だ。揚げたてのカツが、超絶的にカレールーと合う。
まずカレールーの黒さに嬉しさが込み上げる。蕎麦屋でよく出てくる黄色いカレーも、あれはあれでありだと思うが、やはりカレーは黒っぽくてドロドロしているものが美味いという気がする。ただ、これは、中学生の頃に刷り込まれた「外で食べるカレーは黒い」という呪縛から逃れられていないだけだ。
多分、黒いカレーは一人で外食した最初の経験だったはずだ。まだファストフードがおしゃれでファッションだった時代だったから、中学生にとってファストフード店は一人で入るには敷居が高く、カウンターだけのカレー屋に入ったのだと思う。もう少し時代が後であれば、ハンバーガーが一生かけて食べ続ける大好物になっていた可能性はあるが………
それ以来、ドロドロカレーは「類まれなるご馳走」として我が人生の中に記憶されているのだ。そのご馳走が、カツカレーという贅沢なものに進化するのは、その後数年が必要だったが。

この黒カレーにカツという組み合わせを改めて見てみると、何やら金沢カレーを思い出す。食器がステンレスの銀の皿に変われば、全く同じようなものではないか。金沢カレーも機会があればせっせと食べているが、このことには初めて気がついた。やはりこれは食の世界で起きた平行進化というものだろう。
似たようなものに「豆パン」とか「羊羹パン」の例がある。地理的に離れた場所で同時に生まれ進化したものらしい。それとは異なり、元祖があり、そこで修行したり、強い影響を受けて独自に開発されたメニューに「ソースカツ丼」がある。ソースカツ丼も全国各地で名物料理として名を馳せているが、どうもルーツは一箇所に同定されるようだ。
大阪でもご当地限定カレーチェーンはあり、そこもドロドロ系カレーを出すが、色味はあまり黒くない。これは、帝国海軍にルーツを持つジャパニーズ・カレーの系譜の中で、異形に進化した「なにわバージョン」らしい。カレーにソースをかけて食べるという食文化と相まって、同じ名前で違う食べ物的な楽しさがある。

この店の最大の「推しポイント」は、カレーを頼んでも豚汁がセットになっていることだ。洋食屋のはずだが、なぜか豚汁がうまいのも不思議と言えば不思議だが、これぞ大衆食堂としての洋食キッチンのプライドだと思う。一度、豚汁を大盛りにしてもらってライスだけで食べる、豚汁定食みたいな注文をしてみたいが、きっとその時はカレールー別添えにしてしまうのに違いないから、無駄な抵抗だな。

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